加入を迷う車両保険
破損や盗難など、自分のクルマに損害があったときに補償を受けられる任意の保険「車両保険」。キャンピングカーに車両保険は必要でしょうか。
基本的に「自分の財産」に対する補償ですから考え方次第ですし、年間の保険料が倍以上に跳ね上がることもあります。「こすった」「ぶつけた」というような軽微な損傷なら保険に入らずとも自費で直したり、直さずに我慢したりという選択肢もありそうです。
私もそう考えていたのですが、一般的に「キャンピングカーは普通自動車に比べて修理費用が高額になりやすい」と言われます。
たいしたことのないように思えた傷から、車両保険の必要性を思い知ることになった過去の体験をご紹介したいと思います。
時間のかかるキャンピングカーの修理
ちょっとした出来事で、ドア部分に凹みができてしまった私の愛車。自分が気をつけていても道路上の飛び石や、知らないあいだのドアパンチなど、クルマに傷がつく原因はたくさんあります。
とりわけバンコンは、デイリーユースで混雑するショッピングセンターに出かけたり、家族と兼用で乗っていたりし、不慮のアクシデントが多いことと思います。
私は「クルマは消耗品」と考えているので、木の枝によるひっかき傷などは気にしませんが、このときは放置できない深さがあり修理することとしました。
最寄りのディーラーに相談したところ、当初見積金額は50万円超え!パーツ交換と板金修理、どちらがよいかはケースバイケースだそうですが、交換の場合は一般的に高額になります。
キャンピングカー仕様であることから、通常の修理工場で対応できない部分は外注になり、工数や日程がアップすることも予告されました。
とはいえ板金費用は、キャンピングカーでなくとも多かれ少なかれ必要な経費かと思います。本当に大変なのはここからでした。
修理工場で次々と発生する問題
一般的にキャンピングカーの内装には、家具、家電、照明、電気配線、デザイン性を高める内装材などが至るところに配置されています。
板金修理では内側から凹みを押し戻す工法がありますが、私のクルマは内張りが家具でがっしり固定される構造になっていたため、内張りのみの取り外しができませんでした。内装材を外せないことは、作業時の火災防止の観点からも困るそう。
作業のあいだだけ家具を取り外せば解決しそうですが、次々と問題が持ち上がります。
あくまで私のキャンピングカーの場合ですが、室内の仕切り壁と一体化し、クルマのフレームにぴったり合わせて設計された家具は、着脱が可能なものではありませんでした。
取り外すということは解体を意味し、家具の再利用はできないことが判明します。
解体した家具はビルダーで再架装してもらう必要がありますが、おそらくキャンピングカーの架装には順序があり、それを逆にたどることは大変な作業でしょう。
「ここを外すなら、こちらも一緒に外さないといけない」など、五月雨式(さみだれしき)に影響が波及していくことが予想されました。
また、家具は希望をもとに設計してもらったオーダーメイドで、同じものは2つとありません。どれくらいの工数の作業になるのか見当もつかない事態に。
さらに私の場合はビルダーが遠方だったため、陸送の費用、もしくは自分自身で車両を持ち込む旅費がかかってきます。車両購入時にかかった陸送費用は、人件費も込みですが片道およそ10万円。
もし自分でクルマを運ぶなら、現地までの交通費に、帰りの公共交通機関の手配、さらに受け取りに行くときは同じ金額が……。
これからかかってくるであろう日数、手間、そして途方もない金額に頭がクラクラしました。
板金修理のためにディーラーに支払う金額に加え、キャンピング設備を元通りにするためにビルダーに支払う金額など、すべてを合計すれば100万円近いかもしれません。
普通乗用車の板金修理では「□□サイズで一律○万円!」などと広告していますから、その感覚でいると「ちょっとした凹みの修理でこんなにかかるの!?」と驚愕します。
月々の保険料が惜しい……などとは言っていられない金額になるところでした。修理をあきらめてそのまま乗る、という選択肢が何度も脳裏をよぎりました。
結果的にどうなったか。
板金工さんの知恵と工夫により、家具を外さずに作業することに成功。ビルダーに持ち込む必要はなくなり、かつ当初よりずっと低い価格、短い工期に収めていただけたのでした。新車同様の姿となって戻ってきて感謝しきりです。
自損事故もカバーするなら一般型保険
多くの場合、車両保険にはクルマの損害を幅広くカバーする「一般型(フルカバー型)」と、原因事由を限定して保険料を抑えた「エコノミー型」があります。
どちらも相手自動車のある交通事故や、火災、盗難などによる損害を補償しますが、エコノミー型では自損事故は対象外です。
自損事故による多少の傷なら、保険に入らずとも、あるいはわざわざ保険等級を下げずとも自分で直したほうが安上がりのため、あえてエコノミー型を選択している人も多いのではないでしょうか。
しかし、少しの修理でも予想以上に高額となるのが今回の私の例でした。車内では壁一面に家具や電装品もありますから、衝撃でそれらが故障していたら、さらなる出費になったことでしょう。
なお、多くの車両保険では据え付けの車内設備も補償の対象となります。
一例として株式会社シェアティブの場合、車両に固定・定着されている物はクルマの装備とみなし、直接の追突やその衝撃によって破損した場合も保険の適用範囲となります。電子レンジ、ベンチレーター、カーナビ、冷蔵庫が例示されています。
経年劣化で冷蔵庫の電源が入らなくなった…といった単なる故障は対象外ですが、事故に起因する破損の場合は対象となります。
そのため契約時は車体本体+オプションの金額を基準に車両保険を組みます。とくにキャブコンなどでは車両購入価格が高額になりがちですから、年間の保険料も相応の金額になりますが、いざというときの出費を思うと一考の余地があります。
また、一般社団法人日本RV協会では「JRVA安心サービス」という保険商品を展開しており、サイドオーニング、ベンチレーター、ソーラーパネルといったキャンピングカー特有の装備の破損をカバーします。
キャンピングカー購入時にのみ加入できることや、JRVA登録店で購入した車両が対象であることなど制限はありますが、ユニークな取り組みです。
自分だけは大丈夫、そう思っていても、向こうからやってくることもあるアクシデント。もしもの備えの必要性を痛感したエピソードでした。