アメリカ西海岸・シアトルから南へ車で約2時間半の距離に位置するマウント・レーニア。「マウント・レーニア」と聞いて、日本のコーヒー飲料のブランド名を思い出す方もいることでしょう。
山を含め周辺はアメリカの国立公園となっており、かつて近くのタコマ・エリアに多く住んだ日系移民には、富士山に似た美しい姿から「タコマ富士」とも呼ばれていました。
あちこちにハイキングコースがそろい、2023年4月に発表された「ファミリー・デスティネーション・ガイド」において、ハワイ州のハレアカラ火山をおさえて米国内の登山先1位に選出されています。
そんなレーニア山で日本でも流行中の「ファミキャン」を体験してきました!
半年前の予約が必須の超人気キャンプ場へ
マウント・レーニアは、シアトルのあるワシントン州でも屈指の観光地で、高山植物が見頃となる7月からが登山のベスト・シーズン。
車を所有しない旅行者も、シアトル発のツアー・バスで日帰りハイキングを楽しめます。
とはいえ、シアトルの地元民にとっては何と言ってもオートキャンプが定番のアクティビティ。特に例年6月から10月初旬までオープンしているレーニア山麓のオアナペコッシュ・キャンプ場がよく知られています。
公営のため、このインフレ最高潮のご時世に1泊20ドル(約2800円)で利用できるのもうれしい限り。ただし、直近ではなかなか空きがなく、半年前からオンライン予約でサイトを確保しておく必要があります。
敷地内にはきれいな翡翠色に輝く川が流れ、針葉樹林の大自然が広がり、日本ではあまり見られないような巨木に囲まれながらリフレッシュできます。
オアナペコッシュでのキャンプの魅力
The Dyrt, Incの「2023年版キャンピング・レポート」によると、アメリカのキャンプ参加人口は8000万人以上。
そのうちの44.8%がキャンピングカー派で、テント派は38.2%とのことでした。
日本と違い、アメリカのキャンプ場の各サイトは大型キャンピングカーも駐車できる広々とした造りで、オアナペコッシュのキャンプ場もそれは同じ。サイトによっては、青々と生い茂る原生林が壮観なオアナペコッシュ川沿いの絶景も独り占めできます。
どのサイトにも、平らなテント設営スペース、ピクニックテーブル、ファイヤーピットが備わります。こうしたアメリカのキャンプ場での基本的な設備に加え、ここにはクマなどの動物や鳥対策に食品などを収納できるロッカーも設置されているのが特徴的。
クマが出ると聞くとちょっと怖いものの、寝る前にわざわざ車のトランクに荷物を戻さなくて済み、とても便利です。
共用のトイレ、水栓、ゴミ捨て場も完備。シャワー施設こそありませんが、長期間のロードトリップをしているという人でもない限り、そこまで不便には感じないでしょう。わが家も2、3泊のキャンプ中にシャワーを浴びることはめったにしません。
観光地だけに敷地内に立派なビジターセンターがオープンし、繁忙期の金・土曜夕方にはファイヤーピット用の薪の販売車もキャンプ場を巡回します。
ハイキング、キャンプ飯で大自然を満喫
キャンプ場や川の名となっている「オアナペコッシュ」は、当地の先住民にちなんだもの。2015年には、実際に3700年前から6400年前の間に先住民が生活していたと見られる遺跡が発見されています。
天に向かって高くそびえる樹齢数百年、千年とも言われるダグラスファー、ウエスタンレッドシダー、ウエスタンヘムロックの木々とその苔むした枝、地面を覆うシダ植物群の圧倒的な緑色、耳に心地良い川のせせらぎや鳥のさえずり……。
先住民がなぜ、この地を選んだのか、足を運べば誰もが納得するはず。
オアナペコッシュの自然の豊かさと奥深さには圧倒されるばかりです。ビジターセンターの裏手には、今もかろうじて水たまり程度に湧き出る温泉が見られ、1960年代に閉鎖・取り壊しとなるまで1920年代からの温泉ロッジの建物も存在していました。
また、実はキャンプ滞在中の6月の週末、シアトルもレーニア山周辺地域も激しい雨が降っていました。
ところが、「これはキャンプどころではないかも?」と心配していたのがうそのように、オアナペコッシュに到着する頃には雨雲が見えなくなっていました。
キャンプ場は地面も濡れることなくカラッとしていて、問題なくテントを設営し、薪火でキャンプ飯や焼きマシュマロのデザートを堪能できました。
レーニア山南東部に位置するオアナペコッシュは積雪もめったになく、レーニア山周辺では珍しく雨や霧が比較的少ない乾燥したキャンプ向きの土地だということです。
いつか訪れてほしい奇跡のようなキャンプ場
アメリカでも日本でもブームが止まらない自然の中のキャンプ体験。
アメリカでは日本と違い、比較的安価に、しかもたくさんのテントでギュウギュウになることなく、のんびりと過ごせるのがありがたいところ。
今回、オアナペコッシュという奇跡のようなキャンプ場にめぐりあい、アメリカでのキャンプ歴10年以上のわが家もますますハマってしまいそうです。