自然環境はもとより、火を扱ったり、慣れない鉈で薪を割ったりと、いつピンチが起きてもおかしくないのが、キャンプだ。テントの設営や道具の扱い方をマスターするなど、現地で慌てないよう準備を万全にしよう!
教えてくれた人(トップ画像の右の人)
アウトドアコーディネーター
牛田浩一さん
アウトドアブランドのPRやマーケティングを手がける。著書に『A Beginners Guide to Camping キャンプ雑学大全2020 実用版』。
教えてもらった人(トップ画像の左のファミリー)
新米パパ&ママ
二見翔太さん
久美子さん
麓太朗くん
山好きが高じてアウトドアショップに勤務。長男麓太朗くんは神奈川県・大山にて0歳児で山デビューを果たすも、ファミリーキャンプは未経験。初心に戻って挑戦!
突然の雨や強風のピンチに対処!
正しい場所選びと設営方法を身に着けよう
どんなに機能的なテントやタープも、その日の天候や気温、キャンプサイトの地面の状態など、さまざまな自然環境の影響を受けるし、それがピンチにつながることも多々ある。
「野外はピンチだらけなので、まずは正しい場所選びと設営方法を身に付けることが肝心」
と神妙な面持ちの牛田さん。
「でも今日は快晴だし、どこにテントを張ってもいいですよね」
登山が趣味の二見夫婦だが、子供のキャンプデビューに備え、今日は初心に戻って弟子入り。
「黒い土が見えているところは周りの植生を要チェック! 水はけが悪い場合があるんだよ」
あとは、森を背にすると風が弱まりプライベート感が増すが、原っぱに数本だけポツンと生えた木は、倒木や落雷の恐れがあるので、離れたほうがいい。
「うわっ、風でテントが!!」
「そう、いちばんのピンチは風。テントの張り綱を張っていない人って結構見かけるけど、絶対NG。張り綱を張っておくと、強風時に風の力が分散されて、テントの損傷を防ぐんだよ」
「タープはたたんじゃえ〜」
「ダメダメ。強風下の撤収は危険だから、タープは全体を低くして、風がおさまるまで待つ」
ほかにも、ありがちな雨天時の対処法やペグワークの方法を伝授。状況によって臨機応変にピンチを乗り切ろう!
ピンチ1
寝てたらテントの下が水たまりに!
晴れていると気づかないが、雨が降ると水が溜まりやすい場所がある。その目印になるのが、地面に群生するヘビイチゴ。湿地を好む植物なので、こいつが生えていて黒土が見えるような場所は、水はけが悪くグショグショになるので注意しよう。
ピンチ2
豪雨に見舞われ、テントが水没……
雨で周囲に水がたまりはじめたら、テントやタープを取り囲むように側溝を掘り、水を逃す。タープ下の荷物は地面から離して置くのも忘れずに。撤収の際は側溝を埋めて現場復帰を。
コフラン/フォールディングシャベル
2,750円
折りたたみ式の小型スコップがあると、穴を掘ったり、灰を片付ける際にも重宝する。
問い合わせ先:エイ アンド エフ 03(3209)7575
※キャンプ場によっては掘るのがNGなところもあるので確認を。
ピンチ3
強風でペグが凶器に変身!
風が強いと幕が煽られてペグが抜けやすい。そんなときはペグを1本足し補強する。ペグをクロスさせるように打ち込むと強度がUP。
ピンチ4
楽しい海キャンのはずが、ペグが刺さらず涙……
砂地や雪面など、地面が柔らかくてペグが刺さらないときは、ペグを横に寝かせて置き、砂をかけて踏み固める。ヒモをかけやすいように中央に穴をあけた手作りの竹ペグは、表面積が大きく最適。
ピンチ5
突風と同時に天井が落下!?
補修用のリペアスリーブ(口径を選んで購入可能)をフレームに通し、折れた部分が真ん中になるように重ねたら、両端をダクトテープで巻いて留める。帰宅後、購入店やメーカーに修理を依頼。
ピンチ6
自在金具が壊れてタープがヨレヨレ
自在結びを覚えよう
ロープの張り具合を自在に調節できるので、タープをピンと張りたいときに活躍する。
ペグにロープをかけて折り返し、輪を作る。
↓
写真のように上側にもう1回巻きつける。
↓
さらにもう1回巻き付けて二重にする。
↓
端を上に引いてふたつの輪を密着させる。
↓
もう一回巻いて端を写真のように通し締める。
ピンチ7
フィールド中をイスと追いかけっこ
人気の軽量チェアは軽量なだけあり、強風時には飛ばされることも多々ある。チェアのフレームに細引きを結び付け、ペグダウンするのが特効薬。細引きをフレームに渡して前後2か所で留めるとより頑丈。
ピンチ8
凧のように舞うタープに唖然……
内外から風圧を受けるタープは、強風にすこぶる弱い。風が吹きだしたらポールを短くし、全体を低くして風から受ける抵抗を減らす。そもそも強風の日はタープを張らない選択を。
ピンチ9
テントからタープに移動しただけでズブ濡れ
メインポールから幕体の下にロープを渡し、テントの背後にサブポールを逃して張り、連結スタイルを実現した"小川張り"をマスター。テントとタープを濡れずに行き来できる。
5050 WORKSHOP/マルチドライバッグ
4,950円
58ℓの大容量防水バッグ。濡れたギアをそのまま放り込める。ロールトップ。
問い合わせ先:5050WORKSHOP 042(706)1355
お隣に一目置かれるキャンプサイトを作りたい!
目指せ、オシャレキャンパー……に立ちはだかるピンチを解決!
教えてくれた人
スタイリスト 平 健一さん
ファッション、アウトドアギア、車などマルチな分野で活躍するスーパースタイリスト。幅広い知識と卓越した選択眼でこだわりギアをレコメンド。
色のトーンを揃えることが大事!
設営場所と設営方法のピンチを乗り切ったら、次はギア選び。
「せっかくならオシャレなサイトにしたいなぁ……」
と頭を悩ます二見夫婦に、スタイリストの平さんが助け舟。
「とかく、テントとタープは同じブランド、同じカラーで揃えがちなんですが、そんな必要はまったくなし! 色のトーンを揃えるだけでまとまりは出ます。ただし、テーマを決めることは大切。今回は人気の無骨ミリタリーにしましたが、ナチュラルでもヴィンテージでもいいので、自分の好きなテーマを決めて、それに合わせてモノ選びをすれば、自ずとまとまりが出ます」
今年はアースカラーやブラックが主流。大物はそんなシンプルなカラーを選び、そこに柄物や差し色でアクセントをつけるのも、オシャレ度UPのコツ。
「最近オススメのオシャレギアってありますか?」
「注目は独創的なデザインの、韓国ブランド。ミニマルワークスやグラウンドカバーなど個性派揃いでワクワクしますよ」
気に入ったモノがなければ、手作りするのも手。既成のものをリメイクするのも楽しい。
「道具は機能的で使いやすいにこしたことはないけど、“持っているだけで気分が上がる”ことも機能のひとつです。胸を張って、オシャレサイト作りにこだわりましょう!」
ピンチ10
がんばったのにちょいダササイトに……
まずテーマをひとつ決める。今年は"無骨ミリタリー"がいち推しなので、主役となるテントとタープは、ミリタリーカラーを選択。ブランドはあえて揃えないのが平流。
ピンチ11
どのテントが正解かわからない!
オシャレ度ならワンポールテントがピカイチ。風合いのいいコットン風のTC素材なら、ミリタリー感もUPするうえ、難燃素材なので焚き火の周りでも安心して使える。
ピンチ12
キャンプサイトの配置が決まらない〜
テントの入り口にかぶるようにタープを展開した連結型。タープを通り外へ向かう流れで動線がスッキリ。グルキャンならタープをシェアして周りをソロテントで囲むのもいい。
ピンチ13
ワントーンにしたら地味になりすぎ!?
大物も小物もカラーは一色で揃えず、トーンを揃えるのが上級者テク。同じ色でもグラデーションをつけるだけで変化が出て新鮮なコーデに。
ピンチ14
テントもタープもお隣とカブった……
何かひとつは自分でDIYして作ったり、レアなガレージブランドを取り入れると、お隣と差別化が図れる。今なら六角テーブルがオススメ!
六角テーブル:ざぁ〜ッス/ヘキ男ンドル青 ¥67,430
問い合わせ先:TheArth_six https://thearth.design
ピンチ15
妻がインドア派なんです……
家で使っているラグマットやクッションなどを組み合わせると、居心地も良くリラックス度もUP。布物は汚れても洗濯できるので気兼ねなく!
ブランケット:ホースブランケットリサーチ/ブランケットジャカード柄 ¥33,000、
バディットブランケット ¥33,000、クッション ¥15,400
問い合わせ先:playmountain 03(5775)6747 horseblanketresearch.com
ピンチ16
柄物の入れ方がわかりません
流行のモノトーンやアースカラーと相性がいいカモフラ柄がオススメ。クーラーや小物でアクセントをつけると、メリハリが出る。
バリスティクス/マルチボックスⅡ
¥6,600
全パネルに芯材とウレタン材が内蔵され、ストーブや食器など割れ物の収納に活躍。
問い合わせ先:バリスティクス 03(6427)9244
グレゴリー/フィールドクーラーダッフルL
¥22,000
45ℓと大容量。18㎜の厚手のフォームで保冷力も高い。独自の斜めジッパーは使い勝手抜群。
問い合わせ先:グレゴリー/サムソナイト・ジャパン 0800-12-36910 www.gregory.jp/
アッソブ/オリジナル カモ ディッシュケース
¥22,000
仕切りや細かいポケットを備えたキッチン道具用収納ケース。写実的なカモ柄が魅力。
問い合わせ先:アンバイ ジェネラルグッズストア 03(6328)0577
ピンチ17
小物類がすぐ迷子になっちゃう
棚やラックなどをプラスして、小物を収納しつつデコレーションも楽しむ。最近の平さん注目のオシャレギアは韓国発ブランド!
ラック:ミニマルワークス/モカシェルフ プラス ¥36,300
問い合わせ先:アンバイ ジェネラルグッズストア 03(6328)0577
ハンガーラック:ミニマルワークス/インディアン ハンガーL
¥11,000、フックL ¥1,760
問い合わせ先:アンバイ ジェネラルグッズストア 03(6328)0577
焚火台:サンゾー工務店/ロダンハンゲツセット ¥44,000
問い合わせ先:サンゾー工務店 https://www.3zo.online
ピンチ18
荷物だらけでタープ下がゴチャゴチャ
タープの稜線を中心にして左右対象にテーブルを並べ、両サイドにチェアや棚を配置。テント入り口までふたつの動線が作れ動きやすい。
積み込み方で時短になるんです
キャンプ道具満載のクルマにはピンチがあふれてる!
重さよりも設営の手順に合わせて積載しよう
クルマもキャンプギアのひとつだ。カーゴルームをいかに有効活用して荷物を積み込むかで、設営にかかる時間にも影響してくる。
「やっぱり、重いものは下に入れたほうがいいですよね?」
「いやいや、その安易な考え方がピンチを招きます。重さはあまり気にせず、まずは設営の手順を考えて積むものを決めていきます」
二見さんの提案をばっさり切り捨てる平さん。最初に積む、すなわちいちばん奥に積むのは、着いてからすぐに使わない調理道具やランタン。次いでチェアやテーブルなどサイトができてから設置するものを入れ、そのあとにキャンプ場についてすぐ設営するテントやタープ、ペグなどを積む。
「途中で使う可能性があるクーラーボックスは最後がいいですね。道中、食材調達や飲み物の出し入れなどもあるので、上には物を置かないように」
また、防寒着や雨具などは手に取りやすい位置に置いておく。
「次に重要なのは、フラットな面を作ること。ボクはお手製の棚を設置していますが、コンテナなどで平らな床を作りながら、箱状のものを積んでいくといいですよ」
「なんか、パズルみたいですね」
あれこれ組み合わせて積んでいると、なんだか楽しくなり、またキャンプに出かけたくなる。
ピンチ19
クルマが揺れるたび荷室からイヤな音が……
調理道具や食器、ランタンなど、壊れやすい細かいギアは、コンテナにひとまとめにして収納。割れ物はパッケージの箱をそのまま仕切り代わりに使って収納すれば、揺れの衝撃も和らげられる。
ピンチ20
暑すぎて生ゴミからプ〜ン
スペアタイヤを利用して外付けできるゴミ箱があると車内にイヤな臭いが充満するのを防げる(Japan4×4/トラッシャルバッグ¥10,120 問い合わせ先:ジャパンフォーバイフォー 078(224)5038)。
濡れたテントやタープなどの収納にも役立つ。
ピンチ21
コンテナで窓ガラスにヒビ!?
硬い荷物を窓の近くや壁際に置くと、車の振動やカーブのときに当たってしまう。シュラフや着替えの入った収納袋、ブランケットなどを窓際に詰め込めば、緩衝材に変身!
ピンチ22
ハッチバックを開けたら雪崩が!
荷物の積み込みの基本は、面を作って隙間を埋めること。大きな箱状の荷物を置いて隙間ができたら、長物や薄いテーブルなどで隙間を埋める。大きな荷物も固定できぐらつかない。
ピンチ23
シートに置いたティッシュどこ~?
使用頻度が高いものはラックなどを利用し、手元に収納。
アッソブ/ウォールポケット ¥12,100
傘ケース ¥4,180
問い合わせ先:アンバイ ジェネラルグッズストア 03(6328)0577
JKM/ハンギングバー ¥1,780
ソフトハンギングバー ¥3,280
問い合わせ先:ゴードンミラー蔵前 03(3626)5005
キャンプのピンチを救う最新ギアあります!
ピンチ24
なぜか自分だけ刺されちゃう!?
蚊は暗い色を好むので黒い服は控えること。LEDの光には虫が感知する紫外線がほとんど含まれず、虫を寄せつけにくい。
Mt.SUMI/LEDモスキートランタン
¥3,300
上部に紫外線ライトを装備し、蚊を誘導して電撃殺虫機で一撃。USBでの充電タイプで、ライトは6段階調光&調色が可能。
問い合わせ先:マウントスミ 0774(34)1951
フォックスファイヤー/SCシャンブレーフーディ ¥18,150
フォックスファイヤー/SCアルティメットパンツ ¥18,480
フォックスファイヤー/SCエルゴアームカバー ¥4,840
アース製薬と繊維メーカーが共同開発した「スコーロン」。繊維に虫を寄せつけない特殊加工が施され、不快な虫をシャットアウト。UVカット機能も併せ持ち、洗濯しても効果が長持ち。
問い合わせ先:ティムコ 03(5600)0121
ヒートイット ¥6,820
スマホの充電ポートに差し込んで使用する虫刺され対策機器。かゆみの原因のヒスタミンを熱で分解し、かゆさを軽減する画期的製品。
問い合わせ先:飯塚カンパニー 03(3862)3881
スノーピーク/プリントインセクト シールドハット
¥10,780
スノーピーク/プリントインセクトシールドストール
¥12,100
100%リサイクルポリエステルを使用した、インセクトシールドシリーズ。メッシュ地ながら防虫性を備える。帽子のシェードは取りはずしも可能。ストールはポケッタブル仕様。
問い合わせ先:スノーピーク 0120-010-660
キンチョー×ブラー/カノクス
¥4,950
Wフックカラビナでザックやパンツにかけられる電池式蚊取り。小さいながら屋内なら10畳までの効き目。1日6時間で40日使える。
問い合わせ先:ブラー 03(5825)4272
ピンチ25
ハンモックにぴったりの木が見つかりません!
ロープワークを知らずとも、お助けギアで簡単にハンモックは張れるのだ。少々樹間が離れていても、これさえあればなんのその!
ENO/アトラスサスペンションシステム
¥3,520
デイジーチェーンのようにカラビナをひっかける場所が無数にあり、ハンモックの貼り具合を細かく調整できる。木の表面を痛めにくい柔らかいテープを採用。
問い合わせ先:サンウエスト 03(3544)2751
ピンチ26
夜中にトイレに行ったら張り綱で大転倒!
暗闇のなかで引っかからないよう、蓄光性の自在金具や、ライト機能のあるペグマーカーを活用。張り綱にリボンを付けるのも効果的。
アディション キューブデザイン/ボルテクション ペグマーカー
¥2,750
本体の渦巻き部分に張り綱を巻き込み、ペグの上から被せて使用。上部が電池式ライトになっていて、点滅と点灯パターンを選べる。防水。
問い合わせ先:キャンプヒルズ 049(293)9961
クラムクリート/ミニラインロック グロー
¥660
内側の溝でロックをかける自在パーツ。蓄光で暗闇で光るので便利。−20度Cまで対応し、低温下でも割れにくい材質を採用。
問い合わせ先:モチヅキ 0256(32)0860
ピンチ27
愛犬が隣のテントに入って出てこない……
暑さでワンちゃんがダウンしないよう、また隣のサイトに駆け込まないよう、シェード付きのベッドやアンカーは持参必須。
スノーピーク/ドッグアンカー50
¥6,380
同社を象徴するペグ、ソリッドステーク50を使った、リードをつなぐアンカー。地中深く刺せるので、中型犬約15㎏まで対応。
問い合わせ先:スノーピーク 0120-010-660
5050WORKSHOP/アニマルテント(Sサイズ)
¥6,600
シェードが光を遮り、地面から浮いたコットは、地温に左右されず、涼しく快適。撥水加工が施され、汚れにも強い。
問い合わせ先:5050WORKSHOP 042(706)1355
協力/ogawa GRAND lodge FIELD
※構成/大石裕美 撮影/山本 智
(BE-PAL 2023年7月号より)