北海道の地の果て、利尻山って?
北海道の北端、地の果てのような場所に浮かぶ利尻島。筆者は、この最果ての地に惚れ込んでしまい、毎年ハイシーズンにはここへ帰ってきて、ネイチャーガイドをしています。
稚内から船で利尻島へ入るときには、まるで巨大な山が海に浮かんでいるように見えます。この姿を見て興奮しない人はいないでしょう。
本州よりも緯度が高い利尻島は、海岸沿いから高山植物が咲き誇り、来島者を可愛く出迎えてくれます。島自体が山であるこの地には、海岸沿いに咲く花、湿原や原生林に生える植物、山頂直下に咲く小さなお花など、それぞれの場所で全く異なる植生を楽しむことができます。
一度登ったらやみつきになる「利尻富士」
「日本百名山」と調べると、一番上に日本百名山の最北端である利尻山が出てきます。別名「利尻富士」です。
標高は1,721m、実際に登ることができるのは1,719mまでです。というのも、利尻山はとても脆い火山岩でできているため、実際の山頂付近は崩れていて封鎖されています。
利尻山でしか味わえない絶景や、利尻山でしか出会えない植物、刻々と変わっていく景色は、登山者を魅了し続けています。
利尻山の2つの登山コース
利尻山には、2つの登山コースがあります。登山道が明瞭で歩きやすい「鴛泊(おしどまり)」コースと、急峻で危険なトラバースを含む「沓形(くつかた)」コースです。
筆者のおすすめは、鴛泊コースです。
登山道はきれいに整備されていて、道迷いもしづらいため、初心者の方でも安心して登ることができます。
といいつつ、登山口である北麓野営場(ほくろくやえいじょう)からは、標準コースタイムが登り5時間、下り4時間です。長丁場なので、体力をしっかり温存しながらゆっくりと登るようにしましょう!
何度登っても飽きない!利尻山登山が最高な理由5つ
何度登っても登り足りない利尻山。その5つの魅力をご紹介します。
(1)山から海まで一直線!素晴らしい大展望
利尻山の魅力はたくさんありますが、筆者がこの山をおすすめしたい一番の理由は、山から望む景色です。
初めて登ったときの衝撃は今でも覚えています。
山頂から望む島の海岸線、そしてその先に広がる海。もういっそこのまま船で冒険に出たくなります。
山頂はもちろん、道中さまざまな角度から展望を楽しむことができます。シャッターチャンスがあまりにも多くて、カメラのバッテリーが足りません。
(2)強風に煽られる姿が愛おしい!さまざまな高山植物
利尻山には、さまざまな植物が生きています。可愛い高山植物を見にやってくる登山者はとても多いです。
7月〜8月は、利尻島固有種の「リシリヒナゲシ」を一目見ようと、多くの方が利尻山に登ります。
カメラマンが撮った写真では、大人しく咲いて見えるお花たちですが、実際は強風に吹かれて暴れている姿が常です。
細い茎で、強風に負けずに元気に咲いている利尻山のお花は、すごく魅力的です。愛おしくてずっと眺めていられます。
(3)安心して森歩きできる
実は、利尻島にはクマやヘビがいないそうです。それどころか、シカやイノシシ、キツネもいないそうです。
鳥の声を聞きながら、静かな森歩きを楽しむことができるのです。
(4)島ならでは!悪天候でも期待できる景色
利尻山は、とにかく天気が変わりやすい山です。
山は天気がコロコロ変わりますが、海に浮かぶ利尻山はそれ以上です。海からくる湿った風の影響を直で受けるので、非常に天気が変わりやすいです。
悪天候の中、展望を諦めて歩いていると、突然雲が切れて遠くの海まで見渡せた、なんて話はよく聞きます。
筆者は先日、しとしとと雨が降る中、寒さ凌ぎをしながら5時間かけて山頂まで辿り着きました。そこには、分厚い雲海に囲まれた、静かな天空の花畑が広がっていました。
雲が厚いからか、もしくは雨だから登っている人が誰もいないからか、雲の上の静寂の世界に心から感動しました。
苦境の中で最高のご褒美を与えてくれる、そんな粋な山なんです。
(5)下山後の至福!100度超えのサウナで整う
登山といえば、下山後の温泉とビールがセットです。この瞬間を楽しみに登ります。
利尻山登山口である利尻北麓野営場から、フェリーターミナルがある鴛泊の町までの間に、利尻富士温泉という温泉施設があります。
広くて清潔なこの温泉には、なんと100度超えの熱々サウナがあるのです。高温サウナで汗を流して、雰囲気のある森に囲まれた露天風呂で身体を癒すことができます。
お風呂上がりは、自動販売機で北海道の缶ビールを楽しみましょう。
利尻山の登り方
実際にこれらの魅力を味わってみたい人へ、最後に登山行程や登山の際の注意点を解説します。
利尻山登山行程
利尻山は、海から登ることができる山です。ですが、ほとんどの登山者は登山口である利尻北麓野営場から登ります。この場合の登山行程を紹介します。
歩行時間:約9〜10時間(登り5時間、下り4時間)
歩行距離:約13km
標高差:1,550m
登山経験者は、もう少し短い時間で登って降りてくる人も多いですが、初心者の場合は10時間以上かけてゆっくり登るのがおすすめです。
利尻山登山の注意点
利尻山に登る際は、気をつけたいことがいくつかあります。
携帯トイレは必ず持参する
携帯トイレは必ず持参して、指定の携帯トイレスポットで使用するようにしましょう。
携帯トイレスポットは、6合目、8合目の避難小屋、9合目の計3ヶ所です。
使用済みの携帯トイレは、利尻山登山口にある回収ボックスに捨てることができます。
水は2L以上持っていく
利尻山は、登山口から10分ほどの場所にある「甘露泉水」という湧水以外は、水場がありません。
天気のいい日は、日差しが照りつける中、長時間登り続けることになるので、最低2Lの水分を持参することが推奨されています。熱中症と紫外線対策を忘れずに!
日本最北の百名山「利尻富士」で最高の思い出を!
日本最北の百名山「利尻富士」。最高の山行になること間違いなしです!
一度登ったらやみつきになる山の魅力を、ぜひ全身で体感してみてくださいね。