ココで気づいた人もいるかもしれないが、福岡の宿なのに、なぜ名前に熊本の「阿蘇」の文字が入っているのか? それは「ゲストハウス阿蘇び心」の1店舗目が阿蘇にあったから。“あった”そう、過去形。
2016年の熊本地震で被災し、それ以降、休業中だ。建物じたいも取り壊され、今は更地となっている。オーナーのじゃけんさんは、阿蘇に惚れこみ移住し「阿蘇び心」とう名のゲストハウスを開いた。地震の前年には、借りていたその土地を購入するコトまでしていたのだ。その直後の震災。その情報を聞いた一ゲストの私ですら落胆してしまったほどだった。・・・が、当のじゃけんさんは逆だった! 「悩んでいてもしかたない!」と、数ヵ月後には太宰府店をオープンさせてしまったのである。
さらに、ゲストハウスが気になるけど泊まったコトがない人たちにも泊まってもらえるようにと、プライベートスペースを考慮した「B&C Gakubuchi」をつくり、宿泊するコトへのハードルを低くしたいと語る。「Gakubuchi」の物件との出逢いも偶然にしてはできすぎたようなご縁なのだ。博多の街を自転車で走りまわり、物件探しを担当したのは「ゲストハウス阿蘇び心 福岡太宰府店」の店長である小野寺拓二さん。近頃の民泊での外国人宿泊者トラブル等の影響か、ゲストハウスと言うだけで何軒もの不動産に断られた。ほぼ諦めかけていた時、たまたま入った不動産が「Gakubuchi」の物件を紹介してくれたのだった。偶然にも、この不動産は博多の古民家再生等を手がけており、ゲストハウスとしてリノベーションするコトに意気投合したのだそう。宿の飾りや内装に使えそうな古道具も譲ってもらったりしている。
つらいコトがあっても、前を向いて進んでいれば、ステキなご縁はおのずと目の前に現れるのかもしれない。じゃけんさんの話を聴きながら、そう思わずにはいられなかった。
晴れて「Gakubuchi」がオープンしたら、私はスナックのカウンターに、わーちゃんが煎れる珈琲を飲みに来るのだ。そして、自分もこの宿の一部(洗面台の脚だけだが)を作ったのだと、同席した人にちょっと自慢してみたいと思うのだった。
※ボランティアは5月中旬まで継続して募集中。作業内容はその日によって異なります。詳しくは「B&C Gakubuchi」または「阿蘇び心 太宰府店」へお問合せを。
※以上は、松鳥むうが泊まった時の情報です。諸事情により変更になっている場合があります。
【データ】
B&C Gakubuchi
住所:福岡県福岡市博多区上呉服町4-3
TEL: 092-281-2511
料金:3,800円/泊(素泊まり)~
アクセス:地下鉄箱崎線呉服町駅下車、徒歩約2分
URL: http://bnc-gakubuchi.jp/
【データ】
阿蘇び心 福岡太宰府店
住所:福岡県太宰府市石坂1-22-26
TEL: 092-923-1123
料金:3,780円/泊(素泊まり)~
アクセス:西鉄太宰府線大宰府駅下車、徒歩約5分
URL:http://www.aso.ne.jp/asobi-gokoro/dazaifu/index.html
◎イラスト・文・写真/松鳥むう(まつとり・むう)
イラストエッセイスト。離島とゲストハウスと滋賀県内の民俗行事をめぐる旅がライフワーク。今までに訪れたゲストハウスは100軒以上、訪れた日本の島は82島。その土地の日常のくらしに、ちょこっとお邪魔させてもらうコトが好き。著書に『島旅ひとりっぷ』(小学館)、『ちょこ旅沖縄+離島』『ちょこ旅小笠原&伊豆諸島』『ちょこ旅瀬戸内』(いずれも、アスペクト)などがある。2017年7月に新刊『日本てくてくゲストハウスめぐり』(ダイヤモンド・ビッグ社)、『あちこち島ごはん』(芳文社)発売予定。http://muu-m.com/