横浜市泉区・戸塚区を拠点に生態調査や里山保全活動を行なっている“ご近所生きもの観察案内人”の相川健志さん。今回は、多様な種類がいる「タマムシ」について案内します。
タマムシってどんなムシ?
さまざまな解釈ができる表現などのことを「タマムシ色」といいます。では、タマムシとはどんな虫か、ご存知でしょうか。
タマムシは、一般的にタマムシ科の甲虫の総称。緑や赤などの金属光沢のあるキレイな上翅(硬いはね)が特徴です。法隆寺の「玉虫厨子」(たまむしのずし)には、「ヤマトタマムシ」の上翅が使われています。
ヤマトタマムシの幼虫期間は2~3年で、成虫の寿命は2か月程度。活動するのは日差しの強い夏の時期です。成虫はエノキやケヤキなどの葉を、幼虫はエノキ、サクラ、ヤナギなどの木(材)を好みます。
多士済々なタマムシの仲間たち
タマムシは世界で2万種以上、日本でも200種以上が確認、記録されています。筆者の活動拠点である横浜郊外で見つけたタマムシを、以下に紹介します。
ヤマトタマムシ(ルリタマムシ属)は、日本産タマムシでは最大種。成虫は40mmくらいの大きさで、5~9月ごろによく見られます。
ウバタマムシ(マダラタマムシ属)の成虫も40mmくらいのサイズになり、マツ類の葉を好みます。成虫は4~9月ごろに見ることができ、越冬をすることでも知られています。
ムネアカナガタマムシ(ナガタマムシ属)の成虫は10mmくらい。幼虫・成虫ともにエノキやエゾエノキを利用し、成虫は6~7月に見ることができます。
コウゾチビタマムシ(チビタマムシ属)の成虫は3mmくらい。コウゾ、カジノキ、クワなどをを好み、成虫は4~9月ごろによく見られます。
ヤマトタマムシの産卵
近所で、ヤマトタマムシの産卵シーンを目撃しました。ここから2~3年後、成虫となって次世代へ命をつないでいきます。
ただ、残念ながらヤマトタマムシは近年、開発などによって生息環境が失われ、個体数を減少させています。地域によっては、絶滅危惧種にも指定されています。
チビタマムシの仲間などは数ミリ程度なので、小さすぎてなかなか視界に入らないかもしれません。でも、タマムシの仲間は身近な場所にしっかり暮らしています。機会があれば、ぜひ小さなタマムシたちの世界をのぞいてみてください。