漕がなくていい!? 夏場のスキー場の「下り」をマウンテンバイクで乗ってみたら…
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    2023.08.03

    漕がなくていい!? 夏場のスキー場の「下り」をマウンテンバイクで乗ってみたら…

    スノー・サミットのリフト乗り場付近。

    私がトレイルでマウンテンバイクを使わない理由

    私はトレイルランナーです。山に行くと、大抵は自分の足で走ります。安物のマウンテンバイクを持ってはいますが、街乗りが中心で、トレイルで使うことはあまりありません。

    全米すべてのトレイル事情に詳しいわけではありませんが、少なくとも南カリフォルニアの多くのトレイルでは、歩く(走る)人、自転車に乗る人、そして馬に乗る人が分け合って使うことになっています。

    よくトレイルの入り口で見かける標識。自転車は人に道を譲り、自転車と人は馬に道を譲る、という意味。

    従って、トレイルランをするときは多くのマウンテンバイカーとすれ違う、もしくは追い抜かれることになります。もちろん、自転車は人が走るよりはるかに速いです。しかし、長いか、険しいか、またはその両方の登り坂では立場が逆転することもあります。

    苦しそうにあえぎながらペダルを漕ぐ人、あるいはあきらめて自転車を押しながら歩く人を、これまでに登り坂で数多く見てきました。

    これなら空身で歩いた方がまだマシだな、と思ったことは一度や二度ではありません。

    私があまりマウンテンバイクを本来のフィールドで使わないのは、そんな印象が大きな理由になっています。

    真夏のスキー場で下りだけのマウンテンバイクに挑戦!

    真夏のスキーゲレンデ。遠くに見えるのはビッグ・ベアー・レイク。

    私のような根性なしには朗報というべきでしょうか、夏になるとマウンテンバイクのフィールドに姿を変えるスキー場が日本にもアメリカにもあります。

    リフトに自転車を乗せて高所まで登り、そこからトレイルを下ります。楽しければ、それを時間の許す限り繰り返すことができます。

    つまり、登りに苦しむことなく、下りだけのマウンテンバイクを楽しめるわけです。

    そんなスキー場のひとつ、ビッグ・ベアー・レイクに行ってきました。ロサンゼルスから東に向かって車で2時間ほどの距離にある山岳リゾートです。

    標高約2,100mの高地にあり、マイク・タイソンやオスカー・デ・ラ・ホヤなど、多くの有名なボクサーが高地トレーニングをした場所でもあります。

    付近にはスキー場がふたつあり、ひとつはスノー・バレー、もうひとつはスノー・サミットと呼ばれています。私が訪れたのは後者のスノー・サミットです。

    リフトは標高約2,120mのベースから標高約2,490mの山頂付近まで、自転車とライダーを乗せていってくれます。高低差約370mということになり、東京タワー(高さ333m)を上回ります。

    私が購入した1日乗り放題のリフト券は66ドル(約9,390 円)でした。冬場のスキーリフトと似たような価格です。

    私も含めて、車に自分の自転車を積んでくる人が大半ですが、観光で訪れている人やマウンテンバイクを持っていない人は、レンタルもできます。ダウンヒル専用のマウンテンバイクも用意されているようなので、こちらを利用した方が良いかもしれません(理由は後述)。

    リフトでラクラク!に潜んでいた落とし穴

    リフトの待ち時間はほとんどなかった。前方に自分の自転車が見える。

    さて、リフトの乗り方はスキーの場合と少しだけ異なります。

    まずは自転車を先行するリフトのラックに固定し、持ち主は次のリフトに乗り込みます。自転車の昇降は係員が手際よく行ってくれます。

    まさに至れり尽くせりで、僕らはただリフトに座っていればいいだけです。景色でも眺めながら、ゆっくりと体を休めることができます、のはずだったのですが…。リフトが動き始めてからあることに気がつきました。

    私には高所恐怖症の傾向があります。さほど極端ではないと思いますが、ビルの高い階ではベランダの手すりに近づくことさえできません。もちろん、水泳プールの高飛び込みとか、バンジージャンプなどはやってみようとも思いません。

    スキーはやるので、リフトに乗ること自体には慣れています。そういうときは、それほど恐怖心を感じません。白い雪が一面を覆っていると、現実感や距離感が喪失するのではないでしょうか。

    しかし、ただの地面がむき出しの足元から10メートル以上も下に見えるという状況は、私にとっては恐怖以外の何ものでもありませんでした。実際にはそんなに高くはなかったのかもしれませんが、本人がそう感じているのだから仕方ありません。

    気がつくと手のひらにじっとりと冷たい汗をかいていました。握りしめたポールがそれで滑るのではないかと心配したほどです。

    漕がないのに疲れるのはなぜ?

    トレイルでは時々追い抜かれる以外、ほとんど他の人を見なかった。

    永遠に続くかと思われた長時間の恐怖に耐え(実際には5分くらい)、到着した山頂付近は素晴らしい景色でした。今年の冬は記録的に積雪が多く、遠くの山には残雪も見えました。

    スキーと同じように、いくつかあるルートは初心者用とか上級者用とかに分かれています。私は当然ながら、初心者用コースを使って山を降りることにしました。

    スキー場の広いゲレンデを走るわけではなく、幅2~3mくらいのくねくねと曲がったトレイルがコースです。ずっと下り基調なので、ペダルを漕ぐことはあまりありません。むしろブレーキをかけながら、自然に上がってしまうスピードを落とすことに集中していたくらいです。

    もっとも、それは私がマウンテンバイクの素人だからで、猛スピードで私を追い抜いていったダウンヒルのエキスパートたちは、下り坂でも一生懸命ペダルを回転させていたようです。

    そんな私でも、段々と太股やお尻あたりが痛くなってきました。コースから飛び出さないようにブレーキングするだけで、力いっぱい筋肉を使っていたようです。

    スキー初心者がボーゲンで恐る恐る傾斜のあるゲレンデを滑ることを想像してもらっても、それほどかけ離れてはいないと思います。

    私の自転車が安物のマウンテンバイクであることも言い訳になるかもしれません。そもそもサスペンションが本格的なダウンヒルに耐えられるようにはできていないのです。きちんとしたマウンテンバイクを持っていない人はレンタルした方がよいでしょう。

    マウンテンバイクで疾走できる日本のスキー場も!

    それでも、風を切って自転車で走る爽快さと、休憩しながら見える山の景色は素晴らしいものでした。

    日本でも夏場にマウンテンバイク用のリフトを運行しているスキー場はいくつかあるようなので、一度試してみてはどうでしょうか。

    Apple Watchのデータではリフト1本分の走行距離は約6km、累計獲得標高2m(笑)。

    ビッグベア―観光案内ウェブサイト: https://www.bigbearmountainresort.com/ 

    私が書きました!
    米国在住ライター
    角谷剛
    日本生まれ米国在住。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。

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