ワイン樽でさらに広がるアウトドアライフ! シェルパ斉藤の「パーソナルサウナ」計画
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    2023.08.05

    ワイン樽でさらに広がるアウトドアライフ! シェルパ斉藤の「パーソナルサウナ」計画

    わが家にはワイン樽ハウスがある。その名のとおり、ワインの樽でできた小さな家である。「ワインダルハウス」と口にすると、外国語っぽく聞こえるし、「ワンダフルハウス」にちょっと似ているので、ワイン樽ハウスという名前をつけた。

    ワイン樽を改造した小屋「ワイン樽ハウス」との出会い

    ワイン樽ハウスと初対面したときの写真。僕も妻もメルヘンチックな姿に一目惚れした。

    ワイン樽ハウスは、甲府盆地でレストランを営んでいた男性が築いた作品だ。木工が得意な彼は甲州ワインの醸造所で使われていたワイン樽を手に入れ、屋根や扉をつけて小さな小屋に改造した。それをレストランの庭に設置して小さなショップとして活用していたそうだが、レストランをたたむことになったため処分することになり、知人のつてで僕に声がかかった。

    愛らしいデザインに惚れ込んだ僕は、二つ返事で譲渡を申し込んだが、わが家までどう運べばいいか悩んだ。軽トラには積めないし、僕個人でどうにかできるレベルではない。業者に頼めば相当の金額がかかるだろう。

    どうすべきか悩んでいたとき、北杜市在住のTくんが救いの手を差し伸べてくれた。彼の父親は、葛飾柴又にある『男はつらいよ』の寅さん像も制作した著名な彫刻家であり、Tくんは父の大きな作品の運搬を手伝っているという。相談したところ、「なんとかなりますよ」とのことで、Tくんのおかげでワイン樽ハウスがわが家に搬入された。

    Tくんはユニック車を所有する鉄工所の友人とともにワイン樽ハウスを運んでくれた。屋根を外し、樽本体の両側にコーチボルトを通して吊るし上げる。手際の良さに感心した。

    巨大な樽と屋根を積んで走るユニック車を見て、「なんだ、あれ?」と不思議がったドライバーが少なからずいたと思う。

    わが家の庭に設置する前に、防腐塗料を樽の底に塗った。このときしかできない重要な作業だ。

    わが家に設置直後のワイン樽ハウス。最初からここにあったように周囲の森に溶け込んでいる。

    書斎から絵本図書館に……活用法を模索

     ワイン樽ハウスはわが家の庭に違和感なく、フィットした。ロングセラーの玩具『黒ひげ危機一髪』の等身大ともいえるサイズもちょうどよかった。

    円形の床面積は直径180cm。寝泊まりするには小さすぎるけど、秘密基地や書斎として使うには問題ないだろう。そう思ってイスと机を運び入れ、ノートパソコンを置いてみた。集中して原稿が書けるかもと思ったが、長く居続けるには狭すぎた。自分が閉所が苦手ということもあるけど、長時間いると息苦しさを感じる。

    「大人じゃなくて、子供にちょうどいいサイズなのよ」と妻が主張するものだから、棚に絵本を並べて子供のための絵本図書館にアレンジしてみた。

    友人のイラストレーターが「ワイン樽ハウス」っぽい看板を作ってもらった。造語だからスペルはいい加減。

    明り採りと通気のための開き窓が、絶妙な場所に設置されている。

    狭い空間のほうが執筆活動がはかどる、と思ってパソコンを持ち込んだけど、原稿に集中できなかった。

    棚に絵本を並べて、大人と子供の絵本図書館にしてみた。

    発想を転換してパーソナルサウナに!

     小学生の子を持つ親たちには好評だったが、絵本の図書館としてワイン樽ハウスを利用する子供たちはあまりいなかった。木に囲まれた樽特有の閉鎖空間であるため、冬は暖かいんだけど、夏場は暑くていられない。昼間はほとんどサウナ状態なのである。

    うん? サウナ状態……?

    ひらめいた!

    ワイン樽ハウスは、サウナになるんじゃないか!

    樽を使ったサウナが販売されているけど、うちのは実際に使われていた本物の樽だ。室内に薪ストーブを設置すれば、立派なサウナになるはずだ。僕はサウナーとまではいかないけど、月に数回は八ヶ岳南麓周辺の温泉施設に出かけてサウナでととのっている。家にサウナがあれば、いつでも好きなときにととのえる。サウナを出たあと、森に囲まれた自宅の庭で極上のビールを味わえる。

    サウナ改造を決意した僕は、ネットでワイン樽ハウスに適した薪ストーブを探し、アマゾン限定で販売されているホンマ製作所のクッキングストーブを購入した。送られてきたクッキングストーブは、円形のデザインもサイズもワイン樽ハウスにピッタリだった。

    ホンマ製作所のクッキングストーブ。短い煙突も付いて¥24,910。重量は約7kgで簡単に持ち運びできる。最初に野外で試し焚きをして、塗料の匂いをとばした。

    薪ストーブを購入した後は、薪ストーブを設置するための大工仕事に取りかかった。ホームセンターでコンパネを購入して、ワイン樽ハウスの床に収まるようにジグソーで円形にカット。それを床に敷いて、同じくホームセンターで購入した薄いレンガ板を薪ストーブの炉台として並べた。それからワイン樽ハウスに煙突を設置。自宅の煙突にはじまり、旅人小屋の煙突、カフェの煙突、かまど小屋の煙突、五右衛門風呂の煙突というように、これまで僕はいくつもの煙突をしてきたから、こういう作業はお手のもの。半日もかからずに作業は終了した。

    ワイン樽ハウスの床を補強するコンパネを、電動工具のジグソーで丸くカット。野外での大工仕事に、大容量のポータブル電源がとても役立った。

    ワイン樽ハウスに煙突を設置して、初燃焼。燃えはじめは煙が出るが、完全燃焼状態に入ると、煙は目立たなくなる。

    パエリア鍋を利用したウエットサウナが完成

    薪ストーブの熱量は高く、室内はかなり高温になる。薪ストーブを焚くだけでワイン樽ハウスは優良なドライサウナになるが、それだけでは物足りない。熱した石に水をかけて蒸発させるウエットサウナも体験できるようにしたい。そのためには熱する石=サウナストーンが不可欠である。

    どんなサウナストーンがいいかネットで探したら、うちの薪ストーブに最適のサウナストーンを発見した。非日常ではなく「火日常」のライフスタイルを提唱しているファイヤーサイドのサウナストーンである。天然石のサウナストーンは水をかける熱衝撃を繰り返すと次第に脆くなるが、セラミック製のファイヤーサイドのサウナストーンは耐久性が高く、表面が平らのため薪ストーブの熱を効率よく吸収する。

    さらにサウナストーンを薪ストーブの上に並べるのにちょうどいい器も発見した。わが家のキッチンの壁に掛けられていたパエリア鍋だ。大きさがクッキングストーブのトップと同じだし、クッキングストーブの付属品に思えるくらいデザインもぴったりだ。

    「パエリアが作れなくなる」と妻は不満を漏らしたが、「パエリアを作るときはキッチンに戻す。サウナストーンを置いて熱するだけだから汚れたりはしない」と説得して、パエリア鍋を利用したウエットサウナが完成した。

    ファイヤーサイドが販売しているサウナストーン。37個入りで¥22,000。

    キッチンで愛用していたパエリア鍋をサウナに応用。

    パエリア鍋にサウナストーンは15個並べられた。サイズといい、デザインといい、ホンマ製作所のクッキングストーブとの相性抜群だ。

    こうしてワイン樽ハウスはわが家のパーソナルサウナへと変貌を遂げた。ワイン樽サウナと名称変更すべきかもしれない。一般のサウナとは違って自分で薪を燃やして炎や熱を自在にコントロールできる点も、薪ストーブや焚き火愛好家でもある僕にとっては魅力に感じる。サウナとしての性能も申し分ない。

    次回は庭に設置したワイン樽サウナならではの「ととのい方」を披露しよう。

    シェルパ斉藤の「パーソナルサウナ」計画【後編】は8月6日に配信予定。お楽しみに!

    シェルパ斉藤
    私が書きました!
    紀行作家・バックパッカー
    シェルパ斉藤
    1961年生まれ。揚子江の川旅を掲載してもらおうと編集長へ送った手紙がきっかけで『BE-PAL』誌上でデビュー。その後、1990年に東海自然歩道を踏破する紀行文を連載して人気作家に。1995年に八ヶ岳の麓に移住 し、自らの手で家を作り、火を中心とした自己完結型の田舎暮らしを楽しむ。『BE-PAL』で「シェルパ斉藤の旅の自由型」を連載中。『シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅』ほか著書多数。歩く旅を1冊にまとめた『シェルパ斉藤の遊歩見聞録』(小学館)には、山、島、村、東海自然歩道などの旅や、犬と歩いたロングトレイルの旅を収録。

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