蝉の鳴き声が賑やかになり、今年も暑い夏がやってきました。
気温も高く海水浴や川遊びへお出かけされる方も多いかと思います。
そこで今回は、夏の夜に海中で観察した生物たちの産卵行動についてお送り致します。
癒される夏の海
ザブ~ン、と波の音を聞くだけでも涼しく癒される夏の海です。
夏の海は水温、透明度も上がり生物たちの繁殖行動が盛んになる季節です。
昼間の海中は日差しが入り、キラキラしています。
魚たちも楽しそうに泳いでいる様に見えます。
生物たちの産卵行動
太陽も西へ傾き、涼しくなった夕方の海へ船を走らせます。
生物たちの産卵行動が活発になる時間帯を狙い潜水を行います。
海底へ向かうと魚たちが慌ただしく動き回っていました。
よく見ると「ラッパウニ」に集中的に集まり啄んでいます。
ラッパウニに近寄ると、上部から放精をしていました。
魚たちはラッパウニの精子を食べていたのでしょう。
海中は少しずつ暗くなってきました。
生き物たちに気づかれないように、赤ライトを点灯して観察を行います。
ソワソワしたキンセンイシモチが海底付近を泳いでいました。
観察していると、口を大きく開けたり閉じたりしていつもの様子と異なります。
キンセンイシモチのオスはメスのお腹から卵を口で受け取り、
水温にもよりますが1週間程、口内で卵を育てます。
そして、日暮れ過ぎに口内で育った仔魚を放出します。
今回はまさにその様子を捉えたものでした。
放出された仔魚はとっても小さくキラキラしていて、大海原へ浮遊していきます。
岩の上にはバテイラ(貝の仲間)がいました。
他の魚が寝ている暗い夜、遠くまで子孫を残せるように、わずかな潮流のある時に産卵をすることが多いです。
いつもは岩にくっいている貝ですが、産卵の時は背伸びをするようにして、
緑色の卵を放出します。
近くにいた別の個体は白色の精子を放出していました。
暗い海中を泳いていると、シコロサンゴから顔を出すワカウツボのペアがいました。
写真左の大きな個体はオスです。エラの近くに傷があります。
写真右の個体はメスです。顔は小さいですが、体は太そうです。
オス、メス共に呼吸が乱れ、お互い噛み付くような仕草をします。
産卵の前兆行動と思われる行動です。
赤ライトを弱めて観察をしていると急に勢いよく飛び上がるように、ペアで浮上しました。
浮上後、大量の卵が漂い1秒足らずでペアは別々で海底へ戻りました。
別の日、別種のトラウツボの産卵を確認したので、ウツボの産卵をまとめてみました。
①ペアで急浮上し浮遊しながら体を巻き付かせます。
②オスは放精後、先にサンゴへ戻りました。
③メスは大量の放卵をします。
④放卵したメスはサンゴへ戻り、白色の大量の卵が漂っていました。
浮遊するトラウツボの卵です。
まとまっていた小さな粒状の卵が漂いながら海中へ広がっていきました。
夏の夜の海中で命を繋ぐ生物たち、とっても力強く、神秘的です。
人間と一緒で夜の海中は寝ている生物も多いので、暗い夜を狙って産卵行動をする生物は多いのかもしれませんね。
もちろん、昼間も産卵行動をする生物も沢山います。
今回、紹介した生物たちの産卵行動は一部ですが、夏の夜の海中は海の生物たちにとって新しい命が誕生する大事な時なのです。
海の神秘、これからも観察を続けたいと思います。
撮影協力: ダイビングショップSB
〜陸編〜
夏の夜を賑わうお祭りや花火大会に行かれる方も多いのではないでしょうか。
熱気に満ち、その場にいるだけで楽しい気持ちになります。
皆さんが夏の夜を楽しんでいる今夜も海中では沢山の生物たちの命が輝いていることでしょう。