夏だ、海だ、キャンプだ!といっても、ただ海辺でキャンプするだけ、ではもったいない!ひと味違う、でも手軽にマネできる海キャンスタイルをご紹介します。
青森・八戸で地元食材を味わう「グルメ海キャンプ」
体験したのは…
せっかくの休みだから、遠くても特別な場所に行きたい。そう考え、真っ先に思いついたのが、青森県八戸市だった。日本とは思えない海辺の風景のなかでキャンプができ、海岸線にはトレイルまで整備されている。しかも魚介類が強烈に美味しくて、大好きな酒蔵まである。それが八戸を選んだ理由だ。
これまでの八戸旅行といえば、市街地のホテルに泊まり、横丁や朝市を楽しんできたが、今回はキャンプ好きで料理研究家の妻と一緒。新鮮な地元産の食材と地酒を買い出し、妻が腕を振るい、グルメ海キャンプをふたりで満喫することにした。
昼前に八戸に入り、真っ先に八食センターへ。全国的に知られる巨大観光市場で、近海で水揚げされたばかりの鮮魚を中心に、肉や野菜まで様々な食材が手に入る。八戸名産のイカをはじめ、カキ、ホタテ、タラなどを、次々と竹篭の中に。どれも日本酒に合いそうな食材ばかりだ。青果店では田子町産のニンニクを、土産物店では八戸名物の南部せんべいを調達。安くて新鮮な材料が手に入り大満足。
次に港の近くにある八戸酒造を訪ねた。「陸奥八仙」「陸奥男山」という銘柄で知られる歴史ある酒蔵。青森県産の米や酵母にこだわり、八戸の魚介類に合うお酒を醸す。大正時代に建造された蔵は、レンガ造りの壁と、スコットランド製の鉄骨が特別な趣を放っている。蔵見学と試飲(妻が担当)をして、大好きな陸奥八仙ISARIBIなど計3本を厳選し、意気揚々とキャンプ場へ向かった。
種差キャンプ場は、三陸復興国立公園内にある。種差天然芝生地の一画を利用したフリーサイトの一番海寄りの場所にテントを張る。ここは「やませ」と呼ばれる海風の影響で、「夏でもクーラーいらず」といわれる場所。夜は寒いくらいだった。
なだらか芝生の丘陵地と荒々しい岩礁、そして、広い青空が作る特別な風景。そんな場所で、いただく八戸の食材と地酒。10年前に初めて訪れてから、いつかやってみたかった八戸三昧の贅沢な海キャンプが、遂に現実となった。八戸に乾杯!
DAY1 市場で食材を買い出し、酒蔵で特別な酒と出会う
11時
新鮮な食材がズラリ!食のテーマパークへ
店舗面積7,000㎡に、イカ、ウニ、アワビなど新鮮な旬の魚介類、精肉、野菜、酒、珍味、土産物まであらゆる食材が並ぶ。ここで材料をそろえればキャンプ飯は勝ったようなもの。
地元の食材がそろいます!
八食センター
住所:青森県八戸市河原木神才22-2
電話:0178(28)9311
HP:https://www.849net.com/
魚介も野菜も採れたて八戸産を中心に。
大型駐車場有り。買った食材を炭火で焼いて食べられる「七厘村」のほか、すし店、食堂もある。
13時
青森産にこだわった新しいお酒も続々
地元漁師に愛される「陸奥男山」と、フルーティーで華やかな味わいの「陸奥八仙」が人気。ホップや白麹など、新しい材料で作った個性的な酒も登場している。
酒蔵見学もできます
八戸酒造
住所:青森県八戸市湊町本町9
電話:0178(33)1171
HP:https://mutsu8000.com/
1775年創業の老舗酒蔵。この日は、駒井専務が酒蔵や試飲を案内してくれた。お酒やグッズも購入できる。
勢い余って3本買っちゃいました
「8000 BREWING HAZY IPA」1,980円は、ホップ香るビールテイストのお酒。
「陸奥八仙ISARIBI特別純米(火入)720㎖」1,760円
白ワインのような「陸奥八仙 blanc 720㎖」3,630円。
17時
お酒にぴったりのシーフード料理作りました!
殻付きホタテのアクアパッツァ
ブイヤベース南部せんべい添え
ポキサラダ
八戸を食べつくすシーフード3選。ホタテは、上殻を外してアクアパッツァに。マグロのポキはフレッシュ野菜と一緒に。濃厚な出汁が決め手のブイヤベースには、南部せんべいを添えて、郷土料理のせんべい汁風にアレンジ。
バーナーやテントなどは、30年以上使い続けているヴィンテージギアを中心に。海辺のスローなキャンプとの相性良し。
SOTOのホットサンドメーカーは、厚みがあり密閉性も高いため、魚介類の調理にぴったり。直火で焼くより、ジューシーに仕上がる。
Camp Ground Info
夏でも涼しい絶景のフィールド
種差キャンプ場
住所:青森県八戸市大字鮫町赤コウ
電話:0178(51)8500
営業:4月~11月中旬
予約:随時(種差海岸インフォメーションセンターに電話)
テントサイト:約50
その他の宿泊施設:0棟
海辺まで迫る広大な種差天然芝生地の一角にあるフリーサイトのキャンプ場。荷物は、駐車場からリヤカーで運ぶため、駐車場から遠い海辺のエリアは人も少なく、リラックスできる。
DAY1 Night
20時
静かな海のそばで
焚き火を灯し肴を炙る
昼間は涼しく快適だった海辺のキャンプ場は、夜になると冷えてきた。焚き火で暖を取り、海を眺め地酒をいただく。至福の宵はまだ続く。
甘くて、やわらかい八戸産のイカをホットサンドメーカーに挟み、焚き火で丁寧に焼く。キリッとした八仙の味にこの上なく合う。
夜まで贅沢に地元食材をつまみに晩酌!翌朝は…
カキもホタテもポキも新鮮で美味く、購入したお酒がグイグイ進む。なかでもブイヤベースは別格。食材の持つ濃厚な味が出汁となり、鍋に広がった。夜になり冷えてきてからは、焚き火でイカやホタテをあぶり、瓶があくまで、ゆっくりと晩酌を楽しんだ。贅沢だな~。
翌朝は、早起きして陸奥湊駅前朝市へ。8時前に到着したが、時遅く、通り沿いの露店は店じまい。でも大丈夫。駅前にある八戸市魚菜小売市場に入ると、イサバのカッチャ(市場の母ちゃん)たちが、元気よく刺身や珍味を売っていた。好きな食材を買ったら、奥の食堂でご飯とみそ汁を注文。ここでも鮮度のいい刺身や筋子などをいただいた。やっぱ市場の朝飯は最高だ。
満腹になったところで、再び種差海岸へ。テントを撤収し、チェックアウトしたら、そこからトレッキングのスタートだ。
八戸は、福島県相馬市まで約1000㎞におよぶ、みちのく潮風トレイルの北の起点。この自然歩道の一部、種差海岸から鮫駅までの渚を歩いた。
天然芝生エリアから、樹齢100年以上の巨木が並ぶ松林を抜ける。大須賀海岸では、踏みしめると「キュッ、キュッ」と鳴る鳴き砂を体験。小さな入り江に岩礁と緑、たくさんの花が咲く中須賀は、種差海岸のなかでもとくに心に響く風景だった。
産卵のため毎年3万羽ものウミネコがやってくるという蕪嶋神社でお参り。さらに鮫駅まで歩いてゴール。山道のトレッキングと比べて、起伏も少なく、常に海を視界に入れながら歩く清涼感が心地よかった。
鮫駅から種差海岸までは、JR八戸線かバスで戻れる。クルマをピックアップしたら、最後に銭湯で汗を流してさっぱり。
今回は、1泊2日の駆け足の旅だったが、せっかくの風景と美食、文化を味わうなら、ぜひ2泊以上で計画してほしい。
DAY2
8時
がんばって早起きして朝食は町の市場で
八戸市魚菜小売市場
住所:青森県八戸市湊町久保38-1
電話:0178(33)6151
営業時間:午前3時~午後2時ごろ(鮮魚、刺身店は11時ごろまで)
定休日:日曜、第2土曜、1月1日~2日
昨年12月にリニューアルしたばかりの市場。周辺の通りでは、平日限定で朝市が開かれる。
市場内の店を歩き、好きな食材を好きなだけ買ってテーブルへ。ご飯、味噌汁、焼き魚は、食堂で注文する。
新鮮な刺身盛り、筋子、焼きサバなどをついつい取りすぎてしまった。このあと、店のおばちゃんが、タラコとイカ刺しを差し入れてくれて満腹!
八戸の魚はうまいよ
市場内には、イサバのカッチャがいる小さな店が17軒。建物は新しくなったが、昔ながらの温かみのある市場の雰囲気は残されていた。
10時
キャンプ場から鮫駅まで渚をトレッキング
種差天然芝生地
キャンプ場をチェックアウト。種差天然芝生地から、みちのく潮風トレイルを歩く。
大須賀海岸
約2・3㎞におよぶビーチは、海外の映画のなかに入ってしまったような美しさ。
中須賀
春から秋まで、多様な花が咲く中須賀の遊歩道を行く。荒々しい岩礁と色鮮やかな花とのコントラストがお見事。
蓑毛崎展望台
大海原を一望にできる石造りの展望台。かつて軍用施設だったものを今は展望台として一般に開放している。
蕪嶋神社
1922年にウミネコの繁殖地として、天然記念物に指定された蕪島。蕪嶋神社の社殿は、2015年に焼失したが、2020年2月に再建した。
旅の無事を祈り参拝。境内では、ウミネコたちが所かまわず子育てをしていた。
ウンがついたら開運の証
ウミネコのフンが命中。社務所で、開運の証の「会運証明書」をいただいた。
鮫駅
ジョーズ風のモニュメントがある鮫駅でゴール。のんびり歩いて約3時間。絶景を満喫した。
16時
歩いたあとは銭湯へ
壽浴場
住所:青森県八戸市白銀町田端2-1
電話:0178(34)5021
営業時間:5時〜23時
定休日:なし
広々とした浴槽のほかにサウナもある。地下水を利用した15度Cの冷たい水風呂が話題に。
スーパーミクロン風呂は、温泉のような気持ち良さだった。漁師の町=八戸には、壽浴場のように、朝5時から入浴できる銭湯も多い。
海キャンに役立ったギアはこちら!
干し網
市場で買った魚を一夜干しにするのに便利な干し網。数時間干すだけで、水分が飛び、旨みがギュッと凝縮される。100均で購入。
サビないペグ
鋳鉄のペグは、サビやすく、砂浜では抜けやすい。断面がT字型のプラスチックペグや長めのアルミペグが意外に利く。
シャワーバッグ
水を入れたバッグを吊るし、蛇口をひねるだけで、砂のついた手足を洗える便利品。日中、太陽光で水を温めれば簡易シャワーにもなる。
「海キャン」の満喫ポイント
1 キャンプ飯の食材は、地元の海の幸!
2 酒蔵見学のついでに晩酌用の地酒もGET!
3 海沿いのトレイルを歩いて海を感じる
※構成/山本修二 撮影/花岡 凌 地図/地図屋もりそん 撮影協力/VISITはちのへ https://visithachinohe.com/
(BE-PAL 2023年8月号より)