編集長 沢木/学生時代はワンダーフォーゲル部。以降、アウトドアの王道を歩む最後のビーパル小僧。編集 早坂/2児と野山を駆け回るパパ。「海のキャンプはムレるし暑い。なぜか私は普通の人より何倍も強く感じられるので、日頃の工夫をお伝えします」編集 大下/小学館マーケティング局から本誌編集部に異動してきた、アウトドア1年生。「座右の銘は『なせば成る、なさねば成らぬ、なにごとも』です!」編集 小川/ランドクルーザーを駆る愛車家。「キャンプ中はずっと相棒と一緒にいたい。見てたいし見せたいし感じ続けたい。クルマ活用スタイルは任せて」
水場とトイレと水シャワーしかないけれど…海まで10秒のキャンプ場で挑戦!
早坂(以下早):「編集長! 編集部の女性陣は九州の人気エリアまでバカンス的キャンプをしに行ったらしいんですけど、僕らはどうしましょう? 離島とか北海道とか、行きたいな〜」
沢木(以下沢):「それについては、最高のフィールドと企画を考えてある。俺たちは磯に行って、魚を釣って、火をおこして、海水から塩をつくろう!」
大下(以下大):(磯!? 塩!?)
沢:「山、海に遊んで42年のビーパル編集部。創刊以来、流行りを追い続けてきたけど、素朴な野遊びの素晴らしさだけが変わらなかった。ここいらで原点に立ち返って根源的なキャンプの楽しさを伝えたいんだよね」
小川(以下小):「お! それなら、千葉の鴨川にぴったりの場所がありますよ。あるのは水場とトイレと水シャワーだけ。その代わり、海までダッシュで10秒のキャンプ場です」
大:(海まで10秒!? ほぼ海じゃん。波にさらわれないの?)
沢:「いいねぇ! それじゃ、編集部員各自は自分がいま提案したい海キャンプのスタイルをそのキャンプ場で紹介しよう。おすすめの道具を持って集合ね。大下くん、もう編集部に来て1年経ったしばっちりだよね?」
大:「ゲッ……もちろんです!」
……ということで編集部の男性チームがやってきたのは「江見吉浦 海辺のキャンプ場」。前評判のとおり、目の前に太平洋を望む絶景キャンプ場だ。
沢:「夏の低地で行なう海キャンプは涼しさが重要。暑くて眠れないと修行みたいになっちゃうからね。私は快適さを追求するスタイルを提案します!」
早:「海は楽しいけど、やっぱり塩とベタつきが気になる。僕は海水を浴びたあとでも爽やかにすごせるアイデアを紹介します。ベタつき&ムレ対策にはね、一家言あるんですよ」
小:「家族で海に行くなら、クルマ移動が前提になります。それなら設営も撤収も簡単で、着替えや濡れたままでの出入りがしやすいカーサイドタープスタイルがいちばんですよ!」
大:「私が提案するのはミニマム&使い回しスタイル。ビーパルの付録と通販グッズがあれば人類は海キャンプを楽しめる。この場でそれを証明します!」
海キャンテクニック1
焼けないテーブル×シングルバーナー2丁使い
「ビーパルをつくるなかで、いくつもの木のテーブルが焼け焦げるのを見てきた。焚き火と合わせるならアイアン×メッシュが安全です。砂も落ちるしね。バーナーは2口のものよりシングルふたつのほうが便利です」
離して使える!
海キャンテクニック2
コット&防水ダウンで快眠!
「夏のキャンプは通風が命! 両側にメッシュパネルをもつテントにコットを入れて通気を確保。海辺のキャンプはどうしても道具が濡れるから、寝具は防水ダウンの寝袋をチョイス」
海キャンテクニック3
「土間」のある海テントこそ至高!
「体からは水が滴り、足は砂まみれ。こんなキャンプでリビングを快適に保ちたいなら、テントには土間が必須! 着替えのときの目隠しにもなるデザインだといいですね」
海キャンテクニック4
大型メッシュパネルで通風!ラグを敷いて海でもベタつかない
「夏のテントはとにかく開口部とメッシュパネルが大きいものを選ぶ。フロアがむき出しだとベタつくし、そこにマットを敷くと熱がこもる。だからサラっとしたラグを敷いて、地面に体熱を逃しながら寝ます」
海キャンテクニック5
大型バケツ&シャワーですっきり
「海キャンプは濡れものと汚れものが出る。クルマを汚さずに荷物を運ぶために、バケツがあるといい。僕はバケツに電動シャワーを組み合わせ、少ない水を循環させて塩を流したりもしています」
海キャンテクニック6
ビーパルの付録でソロキャン!
「みなさんお気づきでしょうか。最近のビーパルの付録は集めるとソロキャンプできるようになっていたと! え、この焚き火台は違うって? いいところに気づきましたね。笑’sさんの新作、『EISAN』です」
海キャンテクニック7
カーサイドタープで快適サイトを迅速設営
「SUVに乗っているけど車中泊にはちょっと窮屈……。そんな人にはオガワのカーサイドリビングDX-Ⅱがおすすめ。広くて高さもあり、荷物の出し入れも楽ちんですよ」
閑話休題:海遊体験もしてみた!
沢:「よーし、設営も済んだから、魚を釣って火をおこして、海水を煮て塩をつくって、魚を塩焼きにしよっか!」
一同:(!! 本気だったの!?)
沢:「え、何その反応。ビーパルは40年前からそうゆう雑誌だよ。表紙に『自然を手でつかもう』って書いてあるじゃん」
一同:「今それないです。しかもなくなったのだいぶ前です」
沢:「……心の目で見れば今も書いてある! それでは各自、仕事に取りかかってください」
それぞれに遊び道具を手にして磯に散らばっていく面々。この日いちばんの大役・おかずの調達役を任されたのは早坂・大下ペアだった。
大:「え、このウネウネ動く虫を爪の先でちょん切ってハリにつけろって!? 業務上の指示の範疇超えてない? 労働局に相談したほうがいい? うへー! しかもこの虫、咬む〜!」
魚釣り初体験のおかずチームは、残念ながら魚を手にできなかった。急遽スーパーで食材を購入して、得意の魚介類料理を披露することになった。急な展開だがそこは歴戦のアウトドア雑誌編集者。みな日没前に得意料理を作り上げた。
沢:「ただキャンプをするだけでなく、同時にいろんな自然体験をできるのが海キャンプの魅力です。みなさんも素敵な海キャンプをお楽しみください!」
海キャンテクニック8
潮だまりは最高のテーマパークだ!
「波が穏やかな潮だまりは絶好の自然観察ポイント。集中力や技術の面で魚釣りができない年齢の子供でも、生き物をつかまえられる。ただし、転んだりもしやすいから、下半身は水切れのよいレギンスなどをはき、手には軍手をしたい」
全身を覆う服装で!
海キャンテクニック9
海を満喫するならビーチじゃなくて、磯に行け!
生き物が多いのは砂浜よりも磯。釣りなどの海遊びをするなら磯近くが楽しい。釣りも初体験なら餌つけも初体験。「まさか釣り餌に咬まれるなんて……」。と、衝撃を隠せない大下。
初めての釣りは、ウキからハリまでがワンセットのものが便利。餌はエビとイソメがあると対象魚の幅が広がる。
記念すべき人生初の獲物にして、この日唯一の釣果はクサフグ。それでもこのリアクション。
海キャンテクニック10
原始技術で火をおこせ!
スギの火きり板とセイタカアワダチソウの火きり棒、麻紐が基本。板と棒をの摩擦熱で火種を生む。
焚き火の着火も人力で。上から圧力をかけながら手を擦り合わせる揉み錐式火おこしは慣れるまでは難しい。ひとりでは息切れしてしまうため、ふたりで交互に棒を回すことで火種を作ることに成功!
火種ができたら麻紐をほぐしたものでくるんで息を吹き込む。大量に煙が出た直後、ボン! と発火。「これは大人でも夢中になるね〜」
海キャンテクニック11
体験こそ最高のお土産!海水から塩をつくる
塩は海水を煮詰めるだけでつくれるが、途中に濾す作業を加えると、にがりと塩を分けられる。でき上がった塩はまろやかな風味に仕上がる。「きれいな海水を煮るだけで塩になるんだ!」
澄んだ海水を1ℓ汲んできて、元の水量の10分の1程度になるまで煮詰める。
最初の量の10分の1くらいになると鍋肌に硫酸カルシウムがつくので一度濾す。
さらに煮ると塩が結晶してとろみが出る。そのタイミングで液体をもう一度濾す。
濾紙に残るのが塩、通過した液体がにがり。1ℓの海水から30gの塩がとれる。
海キャンテクニック12
現地調達食材で海ごはん!
大下は…宇和島鯛めし
「魚を食べやすい厚みに切ったら醤油、みりん、砂糖、白ゴマ、卵黄を合わせたタレにからめて薬味と一緒にごはんに盛ります」と大下。「手軽でうまい宇和島鯛めし。ポイントは『42周年記念 ビクトリノックス42機能マルチツールセット』でさばくこと。鱗引きも装備してます。購入は小学館百貨店(通販)からどうぞ!」
一般的な鯛めしが米と共に鯛を炊くのに対し、宇和島鯛めしは漬けだれを生の切り身にからめてごはんに盛り付ける。手軽につくれて薬味が食欲をそそる。茶漬けにしても美味!
小川は…カツオの塩たたき
「海では長く遊びたいから料理は手軽で豪華に! ボンゴレビアンコと塩たたきなら、2品つくるのに20分もかかりません!新鮮なカツオは酸味の利いた甘辛いたれで食べてもおいしいけど、塩で食べるとより風味を繊細に味わえる。タマネギやミョウガ、ニンニクなどをこれでもかと盛るのがポイントです」
「串をうったカツオを焚き火に投入した藁束で一気に炙る。表面を強火で炙ったらすぐに氷で急冷します。冷えた身に天然塩をきつめに振ってから切って盛り付けます」
お手軽ボンゴレビアンコも!
「パスタを茹でつつ別の火でオリーブ油を熱し、ニンニクと唐辛子、アサリを炒める。においが立ったら白ワインとバターを入れ、酒気が飛ぶころパスタを加えてからめる」
「ニンニクのにおいが立ったら白ワインを加える。白ワインは日本酒でも代用できます」
早坂は…缶詰の煮るだけパエリア
シェアできるように米は2合用意。クッカーはラージメスティンを選んだ。「今回の料理のテーマは『ほったらかしごはん』。調理時間はそこそこかかるけれど、準備だけしたら勝手にできあがる料理です!炊き込みごはん系のソースは、米を計量して炊き合わせるだけだから、野外でも味がぶれにくい」
パエリアの具の缶詰とアサリの水煮缶詰(それぞれ1合分)を用意。2合の米と合わせて混ぜながら煮て、汁気がなくなったらラグに包んで保温しながら蒸らす。
さらに夏野菜のソーラー? グリルも!
「地表に届く太陽エネルギーは1㎡あたり1kW。その力を熱に変えるのがソーラークッカーで、野菜を入れたら放置するだけ。なぜスキレットに入ってるかって? それは秘密!」
シリンダーに食材をセットして集光パネルごと太陽に向ければ数十分で食材に火が通る。しかし、日光が弱いよう……。「も、もっと光を!」とは日中遊びすぎた早坂。
沢木は…蛸ミートのタコス
「私がつくるのはタコのタコス。ええ、オヤジギャグです。でもギャグと侮るなかれ、タコスの味付けとタコってよく合うんですよ」。作り方は簡単。タコミートの素材をひき肉からタコに代えるだけ。「ソースは市販のタコスソースを使用すると手軽。トルティーヤを焼いたらトマトやタマネギなどお好みの具と挟んで!」
トルティーヤの原材料はトウモロコシ粉(なければ小麦粉でもOK)。水で練って少し寝かせたら薄く延ばす。手持ちの中華鍋などに油をひいて熱したら、両面を焼く。
※構成/藤原祥弘 撮影/小倉雄一郎 撮影協力/江見吉浦 海辺のキャンプ場 https://umibenocamp.rsvsys.jp/
(BE-PAL 2023年8月号より)