国境の島=対馬。美しい海と深い原生林に囲まれた小さな無人ビーチに、かほなんが上陸した。災害からの避難生活を想定した、10日間のサバイバルチャレンジが始まった。
※この挑戦は、関係各所の許可を得て行なっています。
さばいどる かほなん
サバイバルするアイドルで「さばいどる」。無人島での自給自足生活を夢見て、日々、野外生活のスキルを磨く修行中。その様子を紹介する『さばいどるチャンネル』は登録者数47万人超。
アイドル+防災士の言葉が防災意識を身近にする
水は、食料は足りるのか? そして、安全は? かほなんのサバイバル生活術を拝見
舞台は自然が濃~い対馬で
防災の知識をわかりやすく伝えたい
振り返れば1年前のこと。愛知県にある無人島で、21日間に亘り、自給自足のチャレンジを成功させた「さばいどる かほなん」。今年は、長崎県対馬の無人ビーチを舞台に、新たなるチャレンジに挑んだ。
「場所が変われば、条件も変わります。前回は21日間生き残れるかに挑戦しましたが、今回は、ライフラインが途切れたところで、自分のサバイバルスキルと防災用品を試すことを大きなテーマとしています。テントを張り、市販の防災用品を使いながら、何がどう役立ったのか、役立たなかったのかもしっかりと伝えたいです」
出発の前、かほなんはチャレンジに向けた意気込みをそう話してくれた。
ご存じの方も多いかもしれないが、かほなんは1年ほど前から、NHKで平日夕方に放送されている「ニュースLIVE!ゆう5時」という全国放送の番組で、月に2度、防災コーナーを担当している。もしものときに役立つ知恵や、普段から身につけておくべき知識などを、かほなんらしく元気に楽しく紹介している。
「実は、この春に防災士の資格を取ったんです。今回も、どうせやるなら動画や誌面を見ている人のためになることしたいと思っています。楽しく見てくれた人が、そういえば『かほなん、あのときこんなこといってたよな』と、災害に直面したときに思い出せるような役立つ情報を提供できればうれしいですね」
まずは地図を描く
持ち込めるのはリュックに装備できるだけ
「チャレンジのルールはふたつ。ひとつ、持ち込める道具は、リュックに装備できるアウトドア用品と防災グッズだけ。ふたつ、防災備蓄の一般的な観点から、3日分の非常食のみとします。なので足りない分は、魚を釣ったり野草を食べたりして、補っていきます」
リュックのほかには、上陸用のカヤックを用意。このカヤックを使って、カヤックフィッシングや魚突きにも挑戦するとか。これは楽しそうだ。
梅雨入り前の晴天の日、離島でのチャレンジがスタートした。
かほなんが持ち込んだグッズ
釣り具
予備の竿を含めて2本のロッドとリールを用意。いろいろな魚種を想定して、仕掛けも多めに準備した。
飯盒
食事を作るのはもちろん、汲んで濾過した水を煮沸したり、海水を煮立てて塩を作る際にも使用する兵式飯盒。
防災リュック
防災セットとして市販されている小型リュック。中身の防災グッズは、必要なものだけを選んで持ち込んだ。
テント
テントは自立式のドーム型。1名用だが室内は余裕の広さ。前室が大きいので、雨の日には、こもって作業できる。
素潜りの道具
出発前から、魚を突くことを楽しみにしていたかほなん。魚を突くモリ、足ひれ、ウエットスーツなどを準備した。
発電グッズ
スマホや動画用の機材を充電する電気を発電するため、ソーラーパネル付きのモバイルバッテリーなどを揃えた。
キャンプ用小物
直火ができない場所なので、折りたたみ式の焚き火台を使用。着火用のメタルマッチや魚干し網なども用意した。
照明
テント内での照明としてはもちろん、夜間の撮影用としても使える明るいLEDライトは複数準備した。
ハチェット(手斧)
ナイフだけでは、割れないような太い流木に対応するため、コンパクトなハチェットも持っていった。
ナイフ
ナイフは2本。このチャレンジのために作った、海辺でもサビにくい新しい小型のさばいどるナイフを持ち込んだ。
ODシート
グランドシートには、ODシートを使用。このような素材のシートは、雨漏り対策など災害時にも活躍する。
ポリ袋
おもに洗濯するときに使う分厚い45ℓのポリ袋。水と重曹を入れて、袋の中で衣服をゴシゴシと洗う。
重曹
今回は、洗濯用として活躍。自然由来の成分なので、土壌に流しても有害にならない。前回は洗髪にも利用した。
衛生用品
洗髪用には、シートタイプととスプレータイプのドライシャンプーを用意。ボディーシートも使ってみた。
3日分の非常食
アルファ米を中心に、3日分(約5,000Kcal)の非常食を用意。足りない分は、魚や野草などを現地調達して補う。
麻紐
焚き火の着火用、テントの張り綱など、便利に使える太めの麻紐を準備。前回のチャレンジで強度は実証済み。
水6ℓ
飲料水は、持ち運びしやすい2ℓを2本、浄水用など器としても使い勝手のいい500㎖を4本、合計6本を用意した。
小さなカヤックで無人ビーチに上陸
かほなんがチャレンジをするビーチは、陸路でも行くことはできる。しかし、重い荷物を背負って細い山道を1時間ほど歩く必要がある。それを回避するため、近くのビーチからカヤックに装備を積んで、海から渡ることにした。荷物の量が多く、カヤックが不安定になったので、2往復して運んだ。
「初めてカヤックから見たビーチは狭く見えました。でも、上陸したら、けっこう広く感じたんです。それは足場が悪く、浜を歩いて移動するのが大変だったからかもしれません。さあ、これから10日間、楽しみます!」
カヤックから荷物をおろしたら拠点探しだ。
「浜は、草がボーボーに生えていたり、漂着ゴミが大量にあったり、デコボコで寝られないなと感じました。ふと横を見たら、護岸された平らな場所があるじゃないですか。丁度、入り江の奥まったところで、風と波の影響がなさそうだったので、ここが安全と思い決めました」
テントを張り終えると、水や食料を探しに歩き始めた。カヤックから外し忘れた旗を取りに行くと、偶然、水の流れた痕跡を見つけた。さらに草地を歩くと、食料となる野草も発見できた。幸先のいいスタートだ。
限られた食材と水はできる限り使わず現地で調達する
電力は太陽と火力、2系統で発電
ソーラーパネルにモバイルバッテリーが搭載された便利品を2個用意。晴れた日には、釣りや食料調達の前に広げておき、活動している間に太陽光で充電した。
必要な電気は発電する
ソーラー発電機が使えない曇りの日には、食事を作ると同時に火力で発電と蓄電ができるバイオライトが活躍する。
住居は波を被らない高台の平らな場所に
避難所を想定したテントを利用
災害時を想定し、体育館などの避難所内でも張れる自立式のドームテントを用意。「こんなテントがあれば、屋内の避難所でも他人の目を気にせずプライベートな空間を確保できますよ」
水際は、斜面で岩がゴロゴロ。しかも漂着ゴミも多い。そこで、護岸された高台にテントを張り、10日間のベースとした。
食は森へ入り食べられる野草を探す
水も食料もあったが……
非常食はわずか3日分しかない。それを補うために、現地でも食料を調達することは必須。森へ入るとフキがあった。
無人ビーチ付近で見つけた貴重なスイーツ。「甘みはご褒美です」と、かほなん。
「なんて美味いんだ」道の脇で見つけた野イチゴをほおばり感動するかほなん。
水は水流の痕跡が残る溝を遡って
カヤックから抜き忘れた旗を取りに行ったとき、偶然、水流の痕跡を発見。サンダルから靴に履き替えて上流に行くと、水が見つかった。
水場の近くには動物の痕跡が
水場の周辺には、イノシシが掘った跡(ぬた場)がいくつもあった。それからは、危険動物と遭遇しないよう、細心の注意を払った。
※構成/山本修二 撮影/花岡 凌、さばいどる 取材協力/対馬観光物産協会 https://www.tsushima-net.org
(BE-PAL 2023年8月号より)