「分水嶺(ぶんすいれい)」って聞いたことありますか?
降った雨がどの川に流れるか。その水の流れの境を分水界と呼び、その境が山の尾根沿いにある場所を「分水嶺」と呼ぶそうです。中でも「中央分水嶺」は日本列島に降った雨が日本海に流れるか太平洋に流れるかの分岐となる、なんとも壮大なスケール。
ハイカーに人気のエリアをつなぐ「霧ケ峰・美ヶ原中央分水嶺トレイル」は、長野県県郡長和町にある長門牧場から長野県松本市、上田市、 小県郡長和町にまたがる美ヶ原高原までの全長38kmのコース。
このトレイルは歩きやすいようにいくつかのセクションに分かれていて、プランを立てやすいようになっています。ロングトレイルの踏破も気になるところですが、お気楽ハイキング好きの私としては、いいとこどりもおすすめ。
この日は関東から来訪の友人と稜線が気持ちの良い区間「和田峠~三峰山」を歩きに行ってきました。
爽やか信州、観光でにぎわうエリアのその先へ
朝10時に待ち合わせした茅野駅の気温は30度C。車で景色の良いビーナスラインを走って行く途中で見た温度計で23度C。標高が上がっていくにつれ、風がどんどん爽やかになっていきます。
夏休みが始まっていることもあり、途中の霧ヶ峰や八島湿原の駐車場は満車。観光地の夏の賑わいをみせていました。さらに進んで和田峠の峠の茶屋に到着するころには、観光で訪れる車はほとんど見られず、その静かさも魅力のひとつだったりします。
三峰山の最短ルートはビーナスライン上の三峰山ドライブインからのアクセス。ただ、それだと30分ほどで山頂に着いてしまうので、今回は和田峠から古峠を経て、三峰山に向かうルートで歩きます。
広い駐車スペースがある「和田峠茶屋」では、食事が取れるほか、お土産も販売していて、腹ごしらえや休憩をしてから歩き始めるのも良いかもしれません。お買い物をしなくてもお手洗いは100円でお借りできるのですが、お声をかけた際に同額の美ヶ原の辺環境保全の保護への募金付きクッキーがあり、そちらをお勧めしてくださったのがうれしかったです。
平日と週末で営業時間が異なったり、冬季休業がありますのであらかじめチェックしてお出かけください。
和田峠茶屋
- 所在地: 長野県小県郡長和町和田5101-1
- 営業時間:10時~16時(月〜火曜、金曜)、10時~15時(水曜)、8時〜16時(土~日曜)
- 定休日:なし(4月下旬~11月上旬の季節営業)
「和田峠茶屋」からロマンあふれるトレイルへ
中央分水嶺トレイルの入り口は、舗装路を少し美ヶ原方面に歩いたところの左側。トレイルの看板は小さいのですが、中山道の標識があるのでそれを目印にトレイルへ。
登山道は何度か舗装路を横切り気持ちの良い林の横を抜けて、中央分水嶺に取りつきます。
ほどなく1つ目の目印の古峠に到着。ここは中山道と中央分水嶺トレイルの交差点。中山道方面に進めば諏訪を経て木曽につながっています。江戸時代に選定された参勤交代の道、中山道もロマンあふれる街道です。今回は分水嶺を歩くので美ヶ原方面へ進みます。
草原から稜線へ。地形の変化も楽しい
なかなかピーカンの晴れの日に当たりにくい私ですが、この日も多分にもれず晴れから曇り、そして15時ごろより雨予報。雨対策の装備にレインウェアは常備していますので天気と相談しながら歩いていきます。
細かいアップダウンを繰り返しながら標高を上げていく前半は気持ちの良い草原の中、坂道を登っていきます。時折、咲いている花を楽しみながら、振り返ると広がっている霧ヶ峰や諏訪湖の景色を眺めながら歩いていきます。
1時間ほど進むと視界が開け、そこからは楽しい稜線歩き。目指す先の三峰山が見えてきます。ビーナスラインに沿ってトレイルがあるので、トレイルへの入り口も多数。右手に三峰山ドライブインが見えると山頂はもうすぐそこ。
このあたりではハクサンフウロやワレモコウ、マツムシソウなども見られました。
天気予報と夏の雲
ここで心配していた雨の気配。レインウエアはもちろん持っていますが、できれば降られたくないのが心情…。
携帯電話のお天気アプリで雨雲レーダーをチェックしながら山頂まで行くか戻るかを判断。自分たちのいる所から雨雲が少しそれていることと、降るとしても、大雨にはならなさそう。また雷も鳴っていないので、ひとまず山頂を目指していくことに決めました。
雨の境目と分水嶺
三峰山頂につき美ヶ原方面を見ると、先ほどレーダーで確認した雨雲がしっかりとかかっています。雲から雨が縦に落ちる白い筋。離れた場所からでも、明らかに向こう側は雨が降っています。その雨も分水嶺を境に流れていく場所が違うと思うとなんだか不思議な感覚です。
本当は山頂でゆっくりご飯を食べる予定でしたが、このあとも雲の動きが心配なので、少し休憩したら折り返し、戻る道中でお天気を見ながらお昼を食べることにします。
幸いにもそのあとは雨に振られることはなく、下り基調の遊歩道を気持ちよく歩いていきます。同じ道を行き来しているのに見る景色が変わるので、往路にも気づけなかった、霧ヶ峰の奥にそびえる八ヶ岳連邦の美しさにあらためて感動。
丁度、狙っていたランチのポイントに着いたときには、晴れ間も出ていて少し落ち着いてお昼ご飯は食べられそう。
太養パン店のカスクートとアイスコーヒーでランチ
お楽しみのランチメニューは、諏訪市内を通ったときに立ち寄った「太養パン店」のカスクート。サンドイッチよりもパンがしっかりしているので山に持って行っても型崩れしなにくいのです。キャロットラペとチキンのカスクートはたっぷりの野菜とチキンがぎっしりで食べ応え満点。
コーヒーは、最近、私の中で流行っている、氷を入れた保冷ボトルにコーヒーをドリップしていれるアイスコーヒー。この時期は魔法瓶のお湯も冷めにくいので、お湯を沸かさなくても手軽に楽しめます。山で飲むキリッと冷えたコーヒーは格別ですね。
ほぼ息切れなしの楽しい稜線歩き
稜線歩きとおいしいランチ、緩やかなアップダウンのハイキング。一面に広がる緑の草原と遠方に見える八ヶ岳や霧ヶ峰、諏訪湖。楽しいこととおいしいもの満載の高原の夏。青空ばかりではなかったけど雨の境も見られたし、涼しくてそれもまた良し!そう思える往復4時間ほどのハイキングでした。
健脚な人は三峰山から先も気持ち良いトレイルが続くので長く歩くのもおすすめです。コースの概要はホームページにも詳しくありますので気になる方はぜひチェックしてみてください。
「霧ケ峰・美ヶ原中央分水嶺トレイル」
http://www.c-trail.com/
お出かけ前におすすめ!
太養パン店
創業は大正5年。県内外のお客様に愛させる老舗のパン屋さん。毎朝6時30分から店内には焼きたてパンが並び、目からの幸福感がたまりません。サンドイッチ、牛乳パン、クロワッサン。いろいろ欲しくなってしまいます。
テイクアウトやイートイン、ドリンクの販売もあり、朝ごはんを食べてきたのに我慢できず、その場でひとつ食べてしまいました。
太養パン店
- 所在地: 長野県諏訪市末広12-2
- 営業時間: 6時30分〜14時30分(月〜土曜、祝日)、6時30分〜12時(日曜)
- 定休日:年中無休(本店のみお盆休業などあり)
- HP:https://www.taiyopan1916.com/
時間があれば、季節の花が楽しめる霧ヶ峰や八島湿原への寄り道も良いですし、茅野や諏訪は温泉どころなので日帰り温泉に立ち寄るものいいですね。
メジャーどころの観光地から、少し離れた静かな山歩きが楽しめる中央分水嶺トレイル。ぜひ一度お出かけください。