「忙中閑あり」とはよくいったもの。ひとり遊びの上級者たちは、忙しい日常のなかで「生まれたままの自分」をこんなテクニックで取り戻していました!
出艇即ウィルダネス! 日常から逃れ海に鍛錬される日々
難易度 ★★★
全天候型ライター ホーボージュン
神奈川県の海っぺりに居住。「取引先各位。〆切り前に俺が電話に出ないときは海にいる。ホントは出たいけど、出られないんだ!」
「煩わしい日常からエスケープするために、僕はよく近所の無人島(岩礁)までSUPを漕ぐ。海がすごいのは陸からわずか10m離れるだけで、完全なウィルダネスになることだ。 海中では僕ら人間は呼吸ができないし、もし海況が荒れたらあっというまに身に危険が迫る。
その非日常性と緊張感が僕の心を整えてくれる。そしてこれは副産物なのだが、トレーニング効果も抜群だ。不安定な海上に立っているだけで体幹が鍛えられるし、全身運動なのでフィジカルの向上にとても良い。日常的にSUPに乗るようになってから背中と胸まわりがゴリラみたいになってきた。海に鍛錬される日々なのだ」
愛用するSUPは12’4”のレーシング艇をベースにした高速ツーリングモデルだ。
コーヒーとサンドイッチを持って海上ブランチ!
GW明けから晩秋までずっと海の上。ゴリゴリに陽に焼けているので、漁師かレスキュー隊員に間違われる(まぶしいので顔がコワイ)。
自然の力を取り込む! 旬の食材で作る保存食
難易度 ★★
フードディレクター 蓮池陽子さん
料理家。野生食材や伝統食のエッセンスを取り込んだレシピの開発を得意とする。連載の「MISO-PAL」では味噌を使った料理を提案。
「野生の食材や庭先で採れる果樹は市販のものよりも味わいが力強い。そして、一度に大量に採れます。こんな食材を長く楽しむには保存食にするのがいちばん。収穫の喜びを何度も反芻できるし、保存食にすることで新たな魅力が花開くものもあります。私がいま楽しんでいるのが山菜の花をエディブルフラワーとして味わうこと。山菜としての魅力に華やかさも加わります」
山菜としてメジャーなフキノトウも実はエディブルフラワー。酢やオイルで漬けると塩漬けとは異なる魅力が出る。
花ワサビの漬物。
ウルイの名で呼ばれるギボウシの花。独特の粘りがよい。
仕事しながら煎る! 工房内自家焙煎
難易度 ★★★★
クラフト作家 真島辰也さん
小さな手工芸から大きな舞台まであらゆるものをハンドクラフトで作り上げる。連載「井ノ原快彦のつくりびと」のご意見番的存在。
「コーヒーは仕事の合間の気分転換に必須。いつの間にか自分で焙煎するようになりました。最初は手網で煎っていたけどそれだとたいへん。ドリルに自作ロースターを付け、回転数を調整する機械を合体させて煎るようになりました。熱源はトヨトミの石油コンロ。燃焼が安定したらにおいもつかないし経済的です」
オイル壺に穴を開け、内側に豆を撹拌する羽根を装備。
豆からでるチャフ(屑)は集塵機で吸塵。
焙煎後は蚊取り線香の缶を改造した送風機で豆を冷やしつつチャフも吸い込む。
人のいない時間に川へオフピークアユイング
難易度 ★★★
会社員 工藤貴志さん
友釣りで培った技術をアユイングに導入。季節、天候、増水……。
刻々と移り変わる相模川の自然をアユをのぞき窓にして見つめる。
「勤務日が不規則な職場に勤めているのですが、これが釣りには好都合。ほかの人と休みが重ならないから人が少ない時間にアユのポイントに入れるんです。アユに似せたルアーを泳がせてアユにアタックさせるアユイングは、友釣りよりも広範囲を探れる。人が少ない時間に体が空けば、30分だけでも川に入ります」
「瀬のなかで大物を掛ける手応えは格別。条件がそろえば友釣りより効率良く釣れることも」
背中にマーカーをつけて視認性を高めるなど、市販品を改造して使用。
「中古バスルアーにテプラで黄色いアユ模様をつけてアユ用に。ハリも自分で結びます」
不思議オン・ザ・ロード! 退勤エクストリーム路上観察
難易度 ★★★
路上観察家 きうちともゆきさん
趣味は路上観察とランニング。大学時代に学んだ植物や、透かしブロックなどの街から消えつつある建築物を雑多に記録。
「私の趣味は植物の観察と街中の建築物の撮影です。それを同時に楽しめるのが退勤時間を活かす路上観察ランニング。歩いて帰ると時間がかかりすぎるし、自転車では気づかずに通り過ぎてしまう。街に潜むちょっとおもしろい風景を記録するにはランニングがぴったり。コースを変えるたびに新しい発見があります」
街の隙間に生きる植物を記録。
電車を併用するときは銭湯で汗を流す。
工業地帯の建築物も面白い。
浮遊寝床で眠るハンモックハイキング
難易度 ★★★
ハイカー 二宮勇太郎さん
ハイキング用品店「ハイカーズ・デポ」店長。ハンモックを使ったハイキングを提唱する。著書に『ハンモックハイキング』がある。
「ハンモックを使うハイキングやキャンプはソロ向きなんです。ハンモックを吊るのにちょうどいい2本の木を探すのは簡単だけど、それが何組もある場所はまずありません。大人数では使いづらいんです。自ずとハンモックを使うときはひとりになります。デイハイクでも縦走でも空中でひとり時間を楽しんでいます」
ハンモックハイキングは身軽。30ℓのパックで4〜5泊の縦走にも対応。
寝床一式が手のひらに収まる。
バーナーも吊るタイプとの相性がいい。
波打ち際は宝箱! なんでもビーチコーミング
難易度 ★
ビーチコーマー 佐々木幸子さん
ダイビングを通じて海遊びに開眼し、海辺へと移住。現在は2人の子供たちと一緒に三浦半島を中心にビーチコーミングを楽しむ。
「私がよく歩くのが鎌倉から葉山にかけての海。鎌倉は陶磁器や馬の臼歯など、歴史を感じさせるものが多く打ち上がります。黒潮があたる葉山は南方系の漂着物が多いのが特徴ですね。漂着物には季節性があって、ルリガイなどごく限られた季節とタイミングでしか出会えないものも。だから隙間時間を見つけてはこまめに海に通います」
「生き物の遺骸から鉱物、古い時代の遺物や生活雑貨まで素敵なものなら漂着物はなんでも集めます」
※構成/藤原祥弘、ホーボージュン
(BE-PAL 2023年9月号より)