ULキャンプが注目の理由
UL(ウルトラ・ライト)キャンプはごく少ない荷物で行うキャンプです。アメリカのロングトレイルを超軽量装備で歩くスタイルである「Ultra Light Hiking」(ULハイキング)、「Ultra Light Backpacking」(ULバックパッキング)にはじまるキャンプのスタイルで、近年では日本でも楽しむ人が増えています。通常のキャンプとは違う、ULキャンプの魅力を紹介します。
荷物を軽くして疲労を軽減
キャンプというとテント・寝袋・食料など、たくさんの荷物が必要というイメージがあるのではないでしょうか。ULキャンプは反対に、少ない荷物で身軽に行うのが特徴です。あえて不便な状況にすることで、自然をより身近に感じられます。
荷物のコンパクト化・軽量化によって、移動の際の負担も減らせるでしょう。疲労も軽減できるのでこれまでより遠くに行ったり、高地に登ったりするなど行動範囲も広がるはずです。
見たことのない景色や新しいキャンプのポイントも見つけられるかもしれません。荷物が少ないと設営や撤収もしやすいため、キャンプの場所移動も簡単にできます。
ULキャンプを実践する3ステップ
ULキャンプを実践したい人のために、荷物を減らすコツやどのような準備をすればよいかを解説します。これからキャンプギアをそろえる人もチェックしてみましょう。
ULキャンプの3ステップ
1.今持っているものを計量してリスト化
まず、今自分が持っているキャンプギアの重量を量りましょう。ULキャンプの装備重量は食料や水、燃料などの消耗品も含めて約6~8kgとされています。
総重量のうち、テントや寝袋といったキャンプに不可欠なギア類の重さ(食料・水・消耗品を除いた重さ=ベースウェイト)はだいたい4.5kg以下が目安です。
キャンプギアは本体だけでなく収納袋や付属品も込みで量り、リスト化しておきましょう。品名と重量、収納サイズを一覧にしておくと、後から荷物を詰めるのに役立ちます。次にULキャンプをするときにも、見返せるので便利です。
2.持ち物を厳選してパッキング
キャンプギアの重量を量ったら、次は持っていくものの選別をします。テントや寝袋といった必ず使うものを優先し、使用頻度の低いものは省きます。
バックパック自体の重量も忘れずに計算に入れましょう。例えば、ソロキャンプなら食器は最低限で構いません。テーブルやチェアも小さいものにするか、省くことで軽量化できます。
カメラや釣り道具など、自分が趣味で使うものも厳選が必要です。「キャンプに行った先で必ず写真を撮る」など、こだわりがある場合は荷物に加えてもよいでしょう。ただし、なるべく軽いものにすることが大切です。
3.軽量アイテムへの買い替えも検討
ULキャンプを実践するポイントは、ベースウェイトを減らすことです。今使っているテントや寝袋などを、より軽いものに替えるだけで軽量化できます。「これからはULキャンプをメインにする」と考えているなら、買い替えを検討してもよいでしょう。
ただし、軽さだけで選ぶのはおすすめしません。軽すぎると強度や耐久性が不足する場合があります。軽量で機能も備えているものは価格が高い傾向がありますが、自分の快適さや安全にも関わることです。機能性と価格のバランスを考えて選びましょう。
また、調理道具や食器などを軽い素材のものに替えたり、1つで何通りにも使えるものを選んだりすることも軽量化につながります。
ULキャンプギアのおすすめ【寝泊まり編】
ULキャンプでも、テントや寝袋などの快適性は譲れません。軽量ながらも機能性に優れ、体をゆっくりと休ませられるキャンプギアを紹介します。
テント:HERITAGE「クロスオーバードーム f <2G>」
日本製の高強度・極薄素材を用いたテントです。第2世代である2Gは、パネル部分の素材に特殊な防水透湿加工を施すことで従来品の約1.5倍の耐水圧、約1.9倍の透湿性を実現しました。
約540gと軽量ながら、特殊な強力糸を使用しているため、強度も確保しています。パネル素材そのものに通気性があるので畳んだときに空気が抜けやすく、撤収もスムーズです。
コンパクトサイズでも、成人男性が1人で横になるには十分です。また、テントの短辺側に入り口を配置しているため、奥行きを感じられます。
ヘリテイジ クロスオーバードーム f <2G>
寝袋:イスカ「エアプラス280」
ダウンのかさ高を出すボックス構造とシンプルなシングル構造で、保温性と軽量化を両立した寝袋です。
冷えやすい足元は寝たときの足の形に沿いやすい逆台形構造になっており、多めのダウンを配しています。春や秋の中級山岳や、夏の3,000m級の登山でテント泊をするときにおすすめです。
中身には、保温性や柔軟性、耐水性に優れた820FP(フィルパワー:羽毛のかさ高性)のグースダウンを使用しており、軽量でも温かさは十分です。さらに、人間の体型を考慮した3D構造で、温かい空気を逃がしません。
イスカ エアプラス280
マット:THERM-A-REST「Zライトソル Sサイズ」
設置や撤収がスムーズにできる折り畳み式のマットレスです。表面に蒸着したアルミ板が体温をキープする、『サーマキャプチャーテクノロジー』を採用しています。アルミ板なしのものに比べ、約20%断熱性が高いのがメリットです。
表面に凸凹があることで、保温性・耐久性・柔軟性が向上しています。約290gと軽量ながら、約2cmの厚みがあるのでゆったりと休めます。
持ち運びしやすく、広げるのも簡単です。テントの中はもちろん、登山やハイキングの途中で休憩したいときにも便利です。
サーマレスト Zライトソル Sサイズ
ULキャンプギアのおすすめ【身の回り編】
ULキャンプを楽しむには、荷物の軽量化が必須です。軽くコンパクトで持ち運びしやすいキャンプギアを紹介します。
バックパック:Hyperlite Mountain Gear「DAYBREAK」
アウトドアでもタウンユースでも活躍する、手頃なサイズのバックパックです。ノートパソコンも収納できるサイズなので、仕事用のバッグにしてもよいでしょう。
容量17L・重量約570gとコンパクトながら、チェストベルトやヒップベルトも装備しているため、安定して荷物を運べます。ヒップベルトは着脱式なので、使わないときには取り外して収納することが可能です。
製造元のHyperlite Mountain Gearは、ULハイキングを中心に軽量で強靭なバックパックやテント・シェルターを開発しているUL専門メーカーです。軽量でも耐久性があり、アウトドアでのハードなアクティビティにも対応する製品作りが特徴です。
Hyperlite Mountain Gear DAYBREAK17
テーブル:エバニュー「Alu Table / Fire」
約233gのオールアルミ製テーブルです。場所を問わず、脚を起こすだけでA4サイズのスペースを確保できます。天板は高温でも変形の心配がない、アルミの一枚板です。料理をクッカーごと置いたり、火気を使用したりしても問題ありません。
食材を刻んだり、皿に盛って置いておいたりするのにも使えます。ゲーム用の卓や、日記や絵を描く机代わりにしてもよさそうです。
畳んだときの厚さは約1.3cmで、バックパックに収納できます。軽量でコンパクトな、ULキャンプにピッタリのテーブルといえるでしょう。
エバニュー Alu Table / Fire
チェア:ヘリノックス「チェアゼロ」
人気の『チェアワン』の座り心地はそのままに、軽量化を実現したチェアです。改良を重ねた結果、本体の重さは500mLのペットボトル1本よりもやや軽い約490gを実現しました。収納時には、長さ約35cmに収まるコンパクトさも魅力です。
シートには丈夫なポリエステル・リップストップを、ポールには強度に優れたメーカーオリジナルの合金を使用しています。耐荷重量は約120kgあり、軽量でも耐久性は十分です。
座面が低めなので、普段とは違った目線で景色を眺められます。新しい発見や思わぬ気づきもあるかもしれません。
ヘリノックス チェアゼロ
バーナー:エバニュー「Ti アルコールストーブ」
キャンプで湯を沸かすときにおすすめのアルコールストーブです。中央だけではなく、側面(下段)からも火が出るので火力が安定します。燃料用アルコールを入れて火をつけるだけと、使用法も簡単です。
アルコールストーブの内側には、燃料用アルコールを計る30mL・60mLの目盛りが付いています。燃料用アルコール30mLを使った場合、燃焼時間約5分で400mLのお湯を沸かせるとされていますが、気温や風の強さ、水の温度によって多少の差があるため、目安として考えるとよいでしょう。
エバニュー Ti アルコールストーブ
クッカー:エバニュー「Ti SOLO pot NH」
純チタンを用いた深型のポットです。燃えにくいシリコンリングを装備しています。ソロキャンプ用にピッタリの大きさで、約76gと軽量です。
持ち運ぶ際には中にガスカートリッジやストーブヘッド、小物などを収納できるので、省スペースにも役立ちます。荷物は少なめでも、必要なものはしっかり押さえておきたい人におすすめです。
容量は約550mL、直径は約9.7cmと小ぶりなサイズで、女性の手でも無理なく持てるでしょう。ストーブヘッドの火にかけられるので、簡単な調理も可能です。
エバニュー Ti SOLO pot NH
ランタン:LEDLENSER「ML4 Warm Light」
長さ約9.7cmのコンパクトなランタンです。吊り下げに便利なカラビナフック付きで、テントはもちろんバックパックやベルトにも装着できます。電池込みでも約71gと軽量なので、ULキャンプにピッタリです。
『マイクロプリズムテクノロジー』効果で、柔らかさのある光が効率よく周囲を照らしてくれます。小型でも明るさは十分です。
充電式電池を本体に入れたまま、USBポートで充電もできます。途中で充電が切れるのが心配な人は、充電器につないでおくとよいでしょう。充電式電池だけではなく、市販のアルカリ単3電池も使えます。キャンプのほか、防災用にもおすすめです。
レッドレンザー ML4 Warm Light
ULキャンプの注意点
少ない荷物でフットワークも軽くなりそうなULキャンプですが、必要な準備はしっかりしておきましょう。気軽にできるといっても、装備が足りないことで思わぬトラブルにつながる可能性もあるためです。
必須の装備はきちんとそろえる
荷物を軽くコンパクトにするために、必要なものまで削らないようにしましょう。キャンプの行先に合った装備を用意することも大切です。
寝袋があるからとマットレスを省いたり、季節に合わない寝袋を選んだりすると、地面が冷たい・寒くて眠れないといったトラブルにつながる恐れがあります。
ULキャンプのポイントは荷物を厳選することで、やみくもに軽くすればよいという訳ではありません。基本のキャンプギアをそろえた上で、軽量化することを考えましょう。
まとめ
ULキャンプは、少ない装備で自然の美しさや雄大さを身近に感じるのが目的です。荷物を軽量化することで行動範囲が広くなり、普段のキャンプとは違う楽しみ方ができるでしょう。
ただし、必要な装備まで安易に削るとトラブルにつながる恐れがあります。快適・安全にULキャンプを楽しむポイントは、キャンプギアを軽いものにしたり、持ち物を厳選したりしてしっかり準備することです。