炎天下、車内の生活用品は大丈夫?
直射日光にさらされた車内は温度が急上昇し、危険な暑さになることがよく知られます。短時間でも子どもやペットを車内に残してはいけない、モバイルバッテリーなどの電子機器を放置してはいけない、といったことは地域を問わず常識となりつつあるでしょう。
しかしキャンピングカーをはじめとした車中泊用のクルマでは、非常食、ペットボトル飲料、菓子、医薬品、化粧品、洗剤類などの日用品を多く搭載しています。すべての日用品を旅行のたびに積み下ろしするのは非現実的。
では夏の車内、収納庫の中などはどれくらいの温度になっているのでしょうか。気になったので調べてみました。
暑さでクッションの色移りが発生
このリサーチのきっかけとなったのは、ある失敗。後部座席に置いていたクッションの滑り止め部分が、いつのまにか暑さで張りつき、シートに色移りしてしまったことでした。
フロントガラスには常にサンシェードを欠かさず、また後部座席はスモークガラスですから安心していましたが、それでもゴムが溶けてしまったようでした。シートに移った斑点は拭いてもなかなか取れず大ショック。
さまざまな事故の例を見て、ダッシュボード周りには気を配っていましたが、後部座席は油断していました。
「収納庫の中に入れておけば大丈夫」「リアなら日が当たらないから大丈夫」と安易に考え、車内に積んだままの荷物が少し心配になってくる出来事でした。
車内の各所を温度測定
実験日の外気温は36℃。ほぼ晴れた日、日向にクルマを停めてエンジンを切った状態です。
(※使用したのは一般的な室内用温度計で、1箇所につき10分以上定置してからの測定を繰り返したため、最初の測定時間と最後の測定時間には数十分の開きがあります。精密な数値ではありませんが、目安としてご参照ください。)
ダッシュボードの温度を測ろうとすると、みるみるうちに温度計の画面に黒い帯が入り、異常表示されてしまいました。表示温度上限を超えてしまい測定不可。
JAFのテストでは、外気温35℃で何の対策もしない黒いクルマの場合、ダッシュボードの最高温度は79℃。クレヨンが溶け、スマートフォンは使用不可、100円ライターは亀裂が入ってガスが抜けるという結果だったそう。
サンシェードを閉めた状態で再計測すると49.0℃。JAFの計測結果では同条件で52℃でした。夏場は多くの人がサンシェードを使うと思われるので、「ダッシュボード付近は50℃前後」という状態を基準に考えていきます。
続いて計測したのは、ガムや文房具などの小物を入れておくことの多いセンターコンソール。「フタを閉めた状態」で測定してみました。
結果は49.2度でダッシュボードとほとんど変わらず。フェルトの中敷きは熱さを感じませんが、プラスチックの外装は触ると「熱っ」と声が出るほどの温度を感じます。
「センターコンソールやグローブボックスに入れておけば大丈夫」というのはまったく通用しないことがわかります。
続いて後部座席に移動。スモークガラスに囲まれ、直射日光は当たらない部分になります。何気なく買い物袋やクッションを置いてしまう場所ですが……
温度は47.3℃。運転席マイナス2℃ですが、十分に暑い!
低温サウナほどの温度があり、普通の状態では人が過ごすことはできません。測定のために出入りしている短時間でも汗が床にポタポタと落ちるほど。
鋼鉄のボディーがムッと熱を発しているような状態で、四方から暑さが迫ります。日が落ちても容易に温度が下がらないことが想像できます。
扉を閉めると完全な暗所となる収納庫の温度はどうでしょうか。食品の保管には「高温多湿を避け」「直射日光の当たらない場所」というのが一般的ですから、条件のひとつはクリアできますが……
結果は45.8℃。
ダッシュボードからはマイナス3℃、後部座席からはマイナス1.5℃で多少は低いですが、「わずかに」という程度に過ぎません。庫内に手を入れると空気が温かいのがわかるほどでした。
写真は前開きタイプですが、オーバヘッド収納、引き出し、シート下収納なども同じだろうと思われます。
最後に、分厚い外壁とパッキンに守られ、もっとも外気温の影響を受けなさそうな冷蔵庫を測定してみます。電源は切った状態、扉を閉めてしばらく経ってから見てみると……
結果は43.5℃でした。
ダッシュボードに比べると5℃以上低く、何も対策をしない後部座席に比べても4℃近く低いので、ほかの場所よりはだいぶよいですが、それでも40℃以上。開閉のたびに暑い空気が入ってしまう状態でした。
食品メーカーなどが記載する「常温で保管」とは「外気温を超えない室温」を指し、「15℃~30℃」が大まかな目安となることが多いようです。
たとえ完全な暗所となる場所や、密閉性の高い収納庫の中であっても、夏の車内はペットボトル飲料、スナック菓子、インスタント食品などの保管には適さないことがわかります。
日用品の保管方法に注意
車内が40℃を超え、人が居られないほどの暑さになっているとき、冷感が保たれている場所は車内には見つけられませんでした。
JAFのテストでも、サンシェード装着中の車内の最高温度は50℃、平均温度は45℃。「サンシェード対策や窓開け対策をしていても温度抑制効果は低く、人や動物が耐えられない温度となり、車内温度の上昇を防ぐことはできない」というのが結論だそうです。
口紅やリップクリームが暑さで溶けてしまうことはよく知られますが、バスアメニティや外用薬なども「高温多湿や直射日光を避けて保管」となっていることが一般的。
また、長期保存食品も一時的な温度上昇ですぐに食用不可になることはないとされますが、自宅駐車場に日よけがないような場合は数か月も炎天下となります。
経験上、車内の食品や薬剤が変質したケースにはまだ出会っていませんが、年を追うごとに暑さが増しているように感じられる日本の夏。これまで以上に車内の残置物には気をつけるべきでしょう。
参考:JAFユーザーテスト(https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/temperature)