朝晩の気温が少しずつ涼しくなり夏の終わりを感じます。しかし、昼間は気温が上がり残暑が厳しい日もまだ多いですね。海では1 年で一番水温が上がる時期になります。
今回は鹿児島県南さつまエリアや錦江湾で多く見かけるシコロサンゴというサンゴの話をお送りします。
シコロサンゴが育つ海
皆さん、シコロサンゴを知っていますか?
サンゴと聞くとエダサンゴやテーブルサンゴをイメージされる方も多いと思います。シコロサンゴは骨格が硬く葉状で育ち群生を作ります。南さつまエリアでは、水深5~10mの浅場でおおよそ100m×500mの範囲にシコロサンゴの群生が確認されています。
90歳を超える地元の方へ話を聞くと、幼少の頃から群生が見られたとお話しされていました。
シコロサンゴは熱帯・温帯海域の沿岸や港など近海で確認されています。沿岸には山があり強風にも守られ、雨が降ると山水が海へ流れ豊かな海を形成します。
近年の高水温の影響
近年、気温や海水温も上昇し温暖化の影響がテレビや記事で取り上げられています。昨年(2022)の夏、鹿児島県本土でも高水温が続きシコロサンゴの大規模な白化現象を確認しました。シコロサンゴの群生がこんなにも真っ白になるのは初めて見ました。
夏が終わり水温が下がると共に、ゆっくりサンゴの色は元の色へ戻りましたが、壊滅したサンゴもありました。温暖化の影響はこのような身近なところにも大きな影響が出ています。
白化現象を乗り越えたシコロサンゴの産卵
シコロサンゴの産卵を調査をしていると、産卵は月の満ち欠けが関係があることが分かってきました。満月が欠ける頃、まだ夜空には星が見える早朝、毎年決まった時間に産卵をするのです。
暗い海へライトを点灯し潜水します。海底に到着すると、シコロサンゴから白い煙のようなものが出ています。
シコロサンゴの放精です。
それから近くのシコロサンゴを見ると、粒々のようなものが糸を引くように放出されています。これがシコロサンゴの放卵です。
シコロサンゴの放精放卵を確認して10~15分後、サンゴの周りは真っ白の煙に包まれ幻想的な光景です。
海中はまだ薄暗く、寝ている魚たちが少し苦しそうにシコロサンゴから顔を出します。
普段はサンゴの隙間で見かけるノコギリヨウジという魚も、サンゴの上で逆さになり、浮遊していました。少し寝ぼけている様に見えます。昼間では見られない珍しい光景です。
少しずつ空が明るくなり、魚たちが起きてきました。魚たちはシコロサンゴを啄むように、卵を食べ忙しそうに朝食の時間を過ごしている様に見えました。
シコロサンゴの精子と卵が浮遊し、ゆっくり潮に揺られ流されていきます。周りを見渡すと海中が明るくなり、たくさんの魚が泳ぎ日常の海へ戻っていきました。長い年月をかけて大きく成長し、高水温による白化現象を乗り越え、力強く命を繋ぐシコロサンゴに深く感動しました。
産卵の余韻に浸りながら、朝日に照らされ船へ浮上しました。
撮影協力: ダイビングショップSB
~陸編~
暗い夜中、シコロサンゴの産卵調査の準備中にセミの羽化を見ることが多々ありました。海から帰って来ると抜け殻が増え、蝉の鳴き声が夏の空へ響いていました。