海に潜って初めてわかる、生き物たちの美しい姿と生態。それを写真で誰にでも知らしめてくれるのが、水中カメラマンです。堀口和重さんは2022年12月、オランダのネイチャーフォトコンテスト「Nature Photographer Of The Year 2022」で水中部門グランプリを受賞した、その道のトップランナー。今回から定期的に水中写真の魅力についてお届けします。
水中カメラマン堀口和重の「美しき海の世界」第14回 東京の海 八丈島
前回、佐賀の海で撮影が終わった後は長崎の海と精霊流しという伝統行事を撮影しました。その後はクルマで関東方面に戻り、羽田空港まで移動しました。飛行機に乗り次の目的地の八丈島へと向かったのです。九州以外で力を入れて撮影している場所の一つです。その魅力溢れる八丈島の海を伝えていきます。
見どころ1 空路で約1時間の楽園
八丈島は周囲が約45km、東山の三原山と西山の八丈富士2つが火山で接合したことにより成り立った島です。関東からのアクセスも良く羽田空港から飛行機で約1時間、フェリーでは約10時間で行くことが可能です。山や海と自然豊な場所で、パッションフルーツの栽培やムロアジやトビウオから作られる特産品のクサヤなどが名産となっています。
陸上も見どころ満載なのですが、今回は海の美しさもぜひご覧ください。
黒潮の通り道に位置する八丈島の海中は透視度が平均的に高く、真っ青な海がひたすら広がります。
本土には少ない伊豆諸島を中心に生息する生き物の種類が多いのも特徴の1つです。
また、八丈島に行ったらぜひ寄っていただきたいのが海水浴場の底土浜です。
底土浜はテトラポットのお陰で波の影響を受けづらく、休んでいるウミガメに高確率で出会えます。日本の様々な場所で水中撮影をしてきた私ですが、こんなに簡単にウミガメに出会えるところは他にはないと感じています。少し沖に出ればサンゴ礁もひたすら広がります。
見どころ2 豪快な水中地形
泳いで遠くへ行ったり船で沖に出たりすると、火山の噴火で作られた水中アーチが何箇所で見られます。
水中アーチは魚たちにとって絶好の隠れ家です。流されてきたプランクトンもぶつかる場所なので、魚たちの餌場にもなります。島の周りの至ところで、このように魚の多い場所が多く存在します。
見どころ3 カラフルな魚たちに出会える
八丈島は固有種や伊豆諸島を中心とする魚たちの楽園です。そんな八丈島で見られる珍しい魚たちを数匹紹介します。
まず紹介したいのは八丈島や小笠原諸島を中心に生息しているユウゼン。チョウチョウウオという魚の仲間のユウゼンは日本固有種であり、メタリックな体色が特徴的です。初夏に大きな群れを作って泳ぎまわり、秋口には岩陰に隠れる幼魚の姿が見られます。
こちらはナメモンガラ。国内では、伊豆諸島から小笠原諸島を中心に分布しています。基本的には群れを成して行動することが多いですが、撮影時は繁殖時期ということもあり、単体で泳いでいる姿も多く見られました。八丈島ではトミメと呼ばれ、フライや天ぷらなど食用にもされています。
レンテンヤッコは本土でも生息していますが、八丈島では良く見かけるカラフルな魚です。オスが1匹に対して複数のメスが集まり、ハーレム状態で縄張りを持って生活をしています。夏から秋が繁殖期で、夕方になると産卵も観察することができます。
次回は北へ!
言葉に表せないような真っ青な海、火山噴火の自然が作りたした豪快な地形。さらに固有種も数多く生息する八丈島。東京都とは思えない海山共にとても豊で美しい場所です。
次の撮影地は車で北の大地へ向かいます。
今回までの撮影径路
START→伊豆(大瀬崎)→沖縄(石垣島・黒島・竹富島)→伊豆(赤沢)→山口(青海島)→千葉(波左間)→山口(青海島)→鹿児島(沖永良部)→鹿児島(桜島)→伊豆→鹿児島県(南大隅町・南さつま・桜島)→佐賀(唐津)→ 八丈島
撮影協力:八丈島ダイビングショップ・アラベスク