春から晩秋にかけて楽しむことができる、キス釣り。キスは手軽に釣れて食べてもおいしい魚です。今回は、キス釣りをするのに必要な道具やコツを初心者の方にも分かりやすく解説します。
キスってどんな魚?
一般的にキスといえば「シロギス」のことを指し、その白く透明で美しい魚体から「海の女王」と例えられる人気の魚です。釣れる時期は3~11月で、特に4~10月はベストシーズンになります。体長は15~20cmのサイズが多く、大物になると25~30cmにもなり、その引きは強烈です。
生息地は北海道南部から九州までの沿岸部で、浅瀬に群れをつくります。主な餌は、ゴカイ、イソメ類やアミエビなどです。
キスの釣れる場所
キスは砂地を好むので、砂浜や河口付近などが主なポイントになります。漁港や波止などでも、海底が砂地であれば釣れる魚です。
キスの釣れる時間
キス釣りに最も適した時間は「朝マズメ」、「夕マズメ」です。日の出と日没の前後の時間のことを指し、総称して「マズメ時(まずめどき)」と言われます。魚は一般的に普段、物陰や物音に対して警戒しています。徐々に明るくなったり暗くなったりするマズメ時は魚の警戒心が薄れて捕食活動を行うため、釣りやすくなるのです。
マズメ時は釣りをする上でぜひ押さえておきたいタイミングです。とはいえ、キスは日中でも十分釣ることができるので、無理の無い時間帯で楽しみながら釣りましょう。
キス釣りに必要な装備と道具
釣り初心者の場合、どのような服装や道具を持って行けばいいか分からないという人も多いでしょう。竿やリールをはじめ、キス釣りに必要な仕掛けやあると便利なアイテムについて、詳しく説明します。
服装
キス釣りは3~10月がベストシーズンなので、どちらかというと暑い時期に行われることが多いです。近年の日差しは厳しいので、十分な暑さ対策が必要です。飲料水なども必ず持参し、熱中症対策を行うことが重要。帽子は必須で、サングラスなどもあればなお良いでしょう。
靴はすべりにくく、濡れる可能性を考えたら防水性のあるものが望ましいです。上の写真にはありませんが、フローティングベストも装着しましょう。
クーラーボックス、バッカン
釣った魚を新鮮な状態で持ち帰るときに必要なのが、クーラーボックスです。魚を入れるだけではなく、釣行時に必要な飲み物を入れておくことができます。キスは体長15~20cmのサイズが多いため、15リットル前後の小型のクーラーボックスで十分です。
また、釣り用の小物類をまとめて収納できる、持ち手付きの四角いケース「バッカン」もあると便利です。釣りにはルアーやワームなど必要な道具があるので、一つにまとめておくと持ち運びも楽になります。
竿
キス釣りで基本となる釣り方が「ちょい投げ」という方法になります。1.8~2.5mほどの短めの竿におもりと仕掛けを付けて、20~30m付近に投げ込むという釣り方です。竿には並継ぎタイプと振出しタイプがありますがどちらでも構いません。
リール、ライン(道糸)
リールはまず、ちょい投げ用のスピニングリールを選びましょう。リールには遠い投げ用や船釣り用などがあるので、釣り方に合ったものを選ぶことが大事です。スピニングリールの番手(サイズや仕様を表す用語)については、1000番から2000番までが軽くて使いやすいです。ラインはナイロンやフロロカーボンの2~3号、もしくは複数の原糸を1本に撚ったPEラインの0.6~1.5号を選ぶとよいでしょう。
おすすめはPEラインです。理由としてはナイロンは伸び率が高いため、細かいアタリ(魚がハリに引っかかる時に起こる穂先の変化)を取りにくい傾向にあります。一方、PEラインはナイロンやフロロカーボンに比べて伸びにくいので、敏感なアタリもキャッチすることができました。ダイレクトにキスのアタリを楽しむことができるため、取り逃がしも減らすことができます。
仕掛け・おもり
初めての場合は、糸付きの針とおもりが1セットになっている市販の仕掛けを使うことをおすすめします。取り付けも簡単で、スペア針なども付属しているのでとても便利です。
キス釣りの仕掛けは複数の針が付いており、通常は2~3本針、多いものだと6~8本針のものが販売されています。初心者の場合は針数が多いと投げるときに絡まってしまい、釣りにならないこともよくあります。キス釣り初心者の方は2~3本針かつ仕掛けの全長も1m前後のものを選ぶことをおすすめします。
エサ
キス釣りのエサは、主に「イシゴカイ」か「アオイソメ」になります。キスは口が小さいので、エサが大きいとうまく食べてもらえません。イシゴカイのように細くて柔らかいエサの方が食い込みがよく、釣果も上がるので特におすすめです。どうしても生きエサが無理だという人は、虫エサそっくりのワーム(疑似餌)で代用することもできます。
便利なアイテム
その他、キス釣りで便利なアイテムは以下の通りです。
- 三脚:仕掛けの交換や、竿を置いてアタリを待つ場合などに使います。竿やリールの傷の防止にも有効です。
- 水くみバケツ:エサや魚を触った手を洗ったり、釣った魚を入れて生かしたりしておくこともできます。
- 魚ばさみ:魚を触るのが苦手な人や、毒を持った魚が釣れた場合などに使用します。
- 針外し:魚が針を飲み込んでしまった時に役に立ちます。
- すべり止め粉:ヌメリのある活きエサにふりかけることで、エサをかんたんに取付けることができます。
- ヘッドライト:マズメ時など、暗い時間帯に使用し、緊急時の合図にも役立ちます。
キスの釣り方
準備が整ったら、さっそく海に出かけましょう。今回ご紹介する釣り方は「ちょい投げ」です。砂浜や河口付近など、砂地のポイントで20~30m仕掛けを投げ込む釣り方です。エサの付け方から合わせ方まで詳しく解説します。
エサの付け方
キス針は流線形で、細長いのが特徴です。キスの口の形状に合わせて、針掛かりしやすいように細長くなっています。エサは長い方が魚にアピールできて釣れやすいように思われがちですが、キスに関しては当てはまりません。エサを一口で飲み込みやすいように短く付けることがポイントです。長いエサは半分に切ってから使いましょう。
投げ方
私が行っているちょい投げの手順は、以下の通りです。
- 仕掛けに付いているおもり部分を竿先から50cmくらいの位置まで巻いて調整
- ベールをはずし、道糸を人差し指に引っ掛ける
- 左手で竿の根元を軽く握る
- 後方に人がいないことを確認してから振りかぶる
- 左手は脇をしめて固定したまま、てこの原理で右手を斜め45度の角度に振り出す
- 仕掛けが着底したら、ベールを戻し糸ふけを取る
巻き方・合わせ方
仕掛けが着底したことを確認したらゆっくりと巻き始め、3~5秒でハンドルが1回転するくらいの速さで巻き続けます。途中でコンコンとエサを突っついているような感触があれば、魚が寄ってきている合図です。そのまま巻き続けると竿先が曲がる瞬間があるので、その時が合わせのタイミングです。
竿先を一気に引き上げ、リールを巻いて糸ふけ(ラインのたるみ)を取りながら竿先を海面に向けて、戻したらそのまま巻き続けます。魚がかかっていれば竿先が重くなり、ブルブルっと震える感触があるので、途中で止めずに一定の速度で巻いていけば釣り上げることができます。
保存方法
釣り上げたキスはビニール袋にいれ、すぐに氷の入ったクーラーボックスに入れましょう。キスは魚体が小さく血が回ることもないので、締めや血抜きを行わずにそのままクーラーボックスに入れて氷締めにします。
おすすめはクーラーボックスの中に海水を入れ、その中にキスを入れる「塩氷(しおごおり)」と呼ばれる方法。冷えた海水が魚体をまんべんなく覆うので、均等に魚を冷やすことができますよ。
まとめ
夏の風物詩であるキス釣りのノウハウをご紹介しました。キスは漢字で「鱚」と書きます、魚へんに喜ぶと書く名の通り「釣ってよし」、「食べてよし」、万人に喜ばれる魚です。キスは天ぷらがおいしいですが、釣りたての新鮮なキスを刺身で頂くのもまた絶品です。
ちょい投げに慣れてきたら、長めの竿に持ち替えて遠投釣りにチャレンジしてみてください。広い範囲を探ることができるのでさらに釣果がアップしますよ。自分だけのポイントを見つけて、ぜひ30cmオーバーのキスを釣り上げて下さい。