イタリアではローマなどの都市部の道が狭く、駐車場が少ないこともあり、昔から小型車が人気。その象徴といえるのが、フィアット 500。2代目は20年近く製造され、その愛らしいスタイリングは2007年に復活した3代目にも取り入れられた。現在も販売されているが、2022年からは新設計の電気自動車「500e」が登場している。既存のエンジン搭載車をEV化けしたのではなく、基本設計から刷新しているのが特徴だ。電動化が進むいま、アウトドアでの利便性は気になるところだ。
フィアット500eってどんなクルマ?
4人が乗れる小型実用車の金字塔、フィアット 500。愛嬌のあるデザインは最新型にも踏襲され、さらに洗練されたものに。併売中の旧モデルと比べて角がとれ、EV専用のプラットフォーム(クルマの土台となる下回り全体)を採用し、全長は60㎜長くなった。先進の運転支援機能も装備され、フル充電での航続距離は335km(WLTC値)だ。
テスト車両はトップトップ仕様の「500e OPEN」。現在、日本で販売されるEVのなかで唯一のオープンモデルとなる。
ソロキャン向きの室内空間
3世代目よりも少し広くなったとはいえ、座席レイアウトはあくまでも2+2。後席は長時間乗っても快適とはいいがたいが、小さなクルマにみんなで乗れば、にぎやかで楽しいもの。後席の背もたれはたためるので、キャンプ道具も積める。現実的にはソロキャン向きの実用性といえそうだ。
運転席周りの小物入れは標準的な数だが、手を伸ばしたときに置ける使いやすさ。小型大衆車作りで定評のあるフィアットならではの、実用的な設計だ。
誰もがすぐ馴染める乗りやすさ
EVなので当然走りは静か。「ノーマル」「レンジ」「シェルパ」の3つの走行モードが選べる。「ノーマル」はガソリンエンジン車から乗り換えても違和感が少ないセッティングで、アクセルペダルを戻したときの回生ブレーキ(運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、その際の抵抗で車両を制動する技術)も弱め。「レンジ」「シェルパ」では回生ブレーキが強くなり、ワンペダル走行も可能だが、同乗者がいる場合は慣れていないとスムーズな荷重移動が行えず、不快に感じられることも。
そして「シェルパ」ではシートヒーターなどの電装品をほぼ切って最高速度は80km/hに制限される。電池残量に不安があるときのエコドライブ用だ。
静かなEVで風を感じるのが最高に気持いい
エンジンで走る小型車のほとんどは排気量が小さく、高速走行ではおのずと高回転で走ることになる。エンジン音はそれなりに感じるし、ロードノイズなども聞こえてくる。また、トールワゴンだと重心が高いため、横風の影響を受けたり、山道で振られる感じもある。その点、「500e」はモーター走行の静けさに加え、新設計のプラットフォームといこともあり、キャビンへの音の侵入が押さえられている。そして駆動用電池を床下に積んだ設計による重心の低さは、高速走行などでの安定感にもつながっている。
EVは味気ないという人もいるだろうが、慣れてしまえばそういうものだと気にならなくなる。新しいテクノロジーに抵抗のない人なら、チョロQのごときかわいいクルマと楽しく付き合えるだろう。
【FIAT 500e OPEN(2023年モデル)】
- ボディサイズ:全長×全幅×全高:3630×1685×1,530mm
- 車両重量:1,360kg
- 最小回転半径:5.1m
- 駆動方式:前輪駆動
- モーター最高出力:87kW(118PS)/4,000rpm
- 最大トルク:220Nm/2,000rpm
- 車両本体価格:¥5,360,000(税込み)
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