「逆さま川」の謎に迫る!オーストラリアの砂漠地帯に巨木が生える驚きの理由
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    2023.09.23

    「逆さま川」の謎に迫る!オーストラリアの砂漠地帯に巨木が生える驚きの理由

    この先が今回の最終目的地。いちばん大事なところを隠す「人間モザイク」になっちゃってる私です。はい、私じゃなくて撮影者のせいです。

    前回の「大地の割れ目」こと「スタンドリーカズム」に引き続き、オーストラリア中央部の小都市アリススプリングス近郊からお届けします。どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。

    じつは今回も前回に引き続きなかなかの絶景を見に来たわけですが、そこに向かうまでの間に無茶苦茶おもしろい話を聞いたので、そっちをメインにお届けしようと思います。

    砂地に生えた巨木の謎に迫る

    その“無茶苦茶おもしろい話”の主人公はこれ!

    なかなかの大木です。

    「なんだよ~。なんの変哲もない木々じゃないか」と思った方、地面を見てください!はい、そうなんです。砂漠状態の「砂地」なんです。それなのにこの大木っておかしくありませんか?

    ここだけの話ですが、じつはこれ…宇宙人の仕業なんです。というのはもちろんウソです。今回はまずこの「砂地に巨木」の謎に迫ってみたいと思います。

    訪れたのは、アリススプリングスから車で15~20分ほどの「シンプソンズギャップ」という場所。駐車場から遊歩道が続いています。

    看板に「往復20分」と書かれていますが、それは行って帰るだけの場合です。見どころ満載なので実際はもっと時間がかかります。

    その遊歩道の脇に砂地が広がります。もっとも広いところで、幅は20~30メートルといったところでしょうか。

    今回の最終目的地は両側の崖がV字になっている場所。遊歩道ではなく、この砂地を突き進んでも行けます。

    ただこの砂地の一角に、先ほどの写真のように巨木たちが生えているんです。

    画面左下の人々と比較するとそれなりの大きさの木々であることがおわかりいただけるかと思います。

    今回も大活躍の「あの男」

    その不思議な光景に見とれていると、「どうして砂地に木々が生えているかわかる?」と後ろから問いかけてくる男がいます。前回の「大地の割れ目」の記事を覚えている方なら、もう想像がつくと思いますが…はい、あのガイド氏です。今回も引き続き「友情出演」してくれます。

    私が首を傾げていると、「その理由をお教えしよう」とガイド氏。その得意満面の笑みからして、おそらく衝撃の事実が隠されているはず!

    彼の言葉を聞き逃すまいと全神経を耳に集中させていると…なんとガイド氏、思わず「犬かっ!」とツッコみたくなるような勢いで、素手で砂地を掘り始めました。いわゆる言葉よりも行動で示す「不言実行タイプ」?…違いますね。というか、かなりの挙動不審だっつ~のっ!

    穴に念を送っています。…というわけではなく、これは手に着いた砂をパパッと払っているだけです。

    砂地の下を流れる「逆さま川」とは?

    「ほらっ、見てごらん」とガイド氏。言われたとおりにすると、なんと中に水が見えます。「これはアップサイドダウンリバーっていうんだよ」。

    日本語に訳すと「逆さま川」とか「ひっくり返り川」となるでしょう。

    彼の説明によると、砂地の下をまるで川のように水が流れている、または溜まっている。普通の川は「水が上で、土壌が下」なのに、ここでは「土壌が上で、水が下」。だから「逆さま川」。アリススプリングス周辺にはこうした場所が他にもあるそうです。

    とにかくこれが「砂地に大きな木々が生えている理由」です。根っこが砂の下の「逆さま川」から水を吸い上げているのです。

    「それとこんなふうに溜まっている水は汚くて飲めないよね」ガイド氏は砂地のすぐ横の大きな水溜まりを指さします。そして、「だから先住民であるアボリジナルの人たちは昔、さっき僕がやったみたいに砂地を掘ってそこの水を飲んだんだ」と。

    まさかこの挙動不審男、砂の中の水を飲むのか?

    砂の中の水って汚くないのかと一瞬疑問に思ったのですが…。ああ、なるほど!砂がフィルターの役目をしてろ過してくれるのです!

    ガイド氏、なかなかいいことを言います。ちなみに砂の中の水は飲みませんでした。飲まないんかい!

    某探検隊並みにすぐ何かが見つかる遊歩道

    植物の知恵にも先住民の英知にも感心しながら、遊歩道に戻ります。

    相変わらず挙動不審なガイド氏

    すると遊歩道の脇で大股を広げている男の姿が目に入ってきました。言わずもがな、ガイド氏です。

    川口浩探検隊くらいの頻度ですぐに何か見つけるガイド氏(若い読者のみなさん、意味不明だったらすみません)。

    「これこれ、スピニフェクス(spinifex)って覚えてる?」。ああ、前回の「大地の割れ目」の記事で、「根っこの部分をバシバシ叩くとネバネバして強力な接着剤になる」と言っていた草ですな。

    「じつはこの草の根元はまわりよりも10℃くらい低いんだ。だから、地球温暖化対策に使えないかって研究の対象になっているんだよ」。前回のNASAの話といい、科学者っていろいろなところに目をつけるんですね(本当かどうかはさておき)。

    指を突っ込んでみると確かにひんやり。

    さらに進みます。赤い岩肌の崖を眺めていると、ガイド氏が「あっ、ほらっ。あそこにロックワラビーがいるっ!」。

    ワラビーというのは小型のカンガルー。ラグビーのオーストラリア代表チームの愛称「ワラビーズ」はここから来ています。そしてロックワラビーは草原ではなく、岩場に住む種類。

    でも、野生動物を見つけるのが苦手は私にはどこにいるか見当もつかず。ていうかガイド氏、マサイ族並みの視力の持ち主か?

    またまた挙動不審な人を目撃!

    するとまた挙動不審な人間を発見!「おいおい、何してるんだガイド氏!」と思ったのですが…別人でした。

    木の幹に頬を寄せて抱き合っている挙動不審者B。

    「君子危うきに近寄らず」を座右の銘にしている私は通り過ぎようとしたのですが、おそらく訝しげな表情をしていたのでしょう。そばにいた別のガイドさんが「水を吸い上げている音が聞こえるんだよ」と教えてくれました。

    ウソつけ!それが私の第一印象。音がするほどの吸引力ってかなりじゃないですか。ありえないでしょ? 

    でも結局私も順番待ちをしてやってみました。私のもう一つの座右の銘は「虎穴に入らずんば虎子を得ず」なんです。はい、二つの座右の銘が「矛vs盾バトル」を繰り広げています。

    とにかく幹に耳を当ててみたところ…マジでした。なんと本当にジョロジョロジョロと水が流れている音が聞こえるではありませんか!

    「えっ?どんな木でもこういう音がするの?」。ガイドさんに聞くと「いや、この種類だけだよ」とのこと。

    リバーレッドガムというユーカリの一種だそうです。あとで調べてみると、オーストラリア全土に広く分布しているらしいので、私もきっと飽きるほど見ているはずですが、まだまだ知らないことはたくさんあります。

    いよいよ最終目的地に到着!

    そうこうしているうちに、いよいよゴールへ。時折ながれる鉄砲水が、何百年の歳月をかけてつくっていったのでしょう。すごいV字谷です。

    つい「コマネチッ!」をした私は、ガイド氏レベルの挙動不審です。…このネタもわからなかったらすみません。

    さらに近づくと…。水が溜まっている場所が広がり、それ以上先には進めませんでした。

    水が溜まっていて、ここから先は進めません。

    別の機会に、ヘリコプターに乗って上空から眺めてみました。

    山脈をぶった切るようにして存在する「シンプソンズギャップ」。自然の力ってすごいですね。

    最後にもう一つ豆知識。最初のほうでお見せした砂地に生えた木々、名前を「ゴーストガム」と言います。はい、「幽霊」の「ゴースト」です。

    名前の由来は「幽霊のように白いから」。先ほどの写真を頭に浮かべて、「そんなに白くないじゃん」とツッコむ方もいると思うので、「アリススプリングステレグラフステーション(電信所)」という観光名所で撮影した別の写真も載せておきます。

    夜、月明かりに反射したら確かに幽霊に見えそうですね。

    ちなみに、この「ゴーストガム」の話を教えてくれたのもあの男!面白おかしく書いてしまいましたが、ガイド氏、知識が豊富で本当に優秀でした!

    シンプソンズギャップ(Simpsons Gap)

    アクセス:アリススプリングスの中心部から車で約15~20分
    URL:https://nt.gov.au/parks/find-a-park/tjoritja-west-macdonnell-national-park/simpsons-gap

    ※「シンプソンギャップ」は「チューリトジャ/西マクドネル山脈国立公園」の中にあるが、ノーザンテリトリー(北部準州)にある国立公園の多くは州内に住む人を除き、入るのに「パークパス」という名の入場券が必要。1日券が大人10ドル、2週間券が30ドルなどで、有効期限内であればどの国立公園にも何度でも入れる。詳しくはこちらから(https://nt.gov.au/parks/park-pass)。

    私が書きました!
    オーストラリア在住ライター(海外書き人クラブ)
    柳沢有紀夫
    999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ(https://www.kaigaikakibito.com/)」のお世話係。

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