今夏、大いに話題を呼んだ新型ランドクルーザー250(旧プラド)プロトタイプの発表で、併せて披露されたのが70系(以下、ランクル70)の二度目の再導入。すでに多くの自動車メディアが報じているのでご存じの方は多いだろうが、改めて再導入モデルの内容とアウトドア目線での魅力をお伝えしよう。
80年代に遊んでいたアウトドアズマンにもフィットする!?
ランクル70が初めて販売されたのは1984年末。まだ日本ではSUVという呼称も使われておらず、「ヨンク」とか「クロカン」と呼ばれていた時代だ。当時は主にロードクリアランスに余裕があり、悪路走破性に長けたクルマでないと仕事や生活が回らない人向けの乗り物だった。
一方で、ミルスペックギアを中心とした本物志向の道具を使い、ヘビーデューティなライフスタイルを楽しむアウトドアズマンは、ランクルを趣味性に富んだギアとして選び、山深い場所や大きな石がごろごろした中流の河川敷などをめざした。BE-PALを創刊当時から愛読してくださる方々にとっては懐かしく、そして決して古びることのない野外体験なのではないだろうか。
そんな“懐かしの名車”ランクル70が2014年に再販されたとき、憧れを抱いた人の中には80年代のヘビーデューティなライフスタイルを追体験したいと願う世代も多かったと思う。80年代生まれなら幼少期にランクルをはじめとしたクロカンを見かけた記憶があるだろうし、親世代が所有し、家族でアウトドアを楽しんでいたケースも珍しくないはずだ。
そして再度のランクル70導入。昔を思い出してもう一度と願うシニア世代もいるだろうが、それなりの覚悟は必要だ。「昔のクルマのほうがしっくりくる」と思っていても、快適な乗り心地で、静かで、悪路も電子制御任せで走れる最新のクルマに慣れてしまうと、なかなか昔には戻れない。ヘビーデューティギアは、使う側もタフであり続けなければならないのだ。
ちょっと古いクルマに惹かれる理由
いまランクル70が再導入されるのは、そこに市場があるからだ。最新のランクル300は海外のユーザー向けに大型化。プレミアムSUVとしての性格も強まり、それは価格に現れている。そこで、ランクルブランドの価値を高めてすそ野を広げていくために登場したのが旧プラドからのランクル250であり、オリジンの訴求と手の届きやすい価格で提供するために用意されたのが、ランクル70なのだ。
購入層の心理を世代別に決めつけるのは乱暴かもしれないが、事実としていまの30歳前後は移動空間としてのクルマが成熟した時代に育った世代。クルマ作りが快適性や使いやすさ、そしてなによりも安全性や環境性能を追求していく中で個性がやわらぎ、そこに趣味性を見いだしにくいと感じる層が、10~20年前の旧型車を中古で購入するケースは確実に増えている。ランクル70はそんないまどきの若い世代にもすんなり入っていけるかっこいいギアであり、(最新のクルマと比べて)多少の不便も慣れで乗り越えてしまうのではないか。
角張ったデザインは道具として快適に使える証
まるでランクル70を不便の塊のように書いてしまったが、あくまでも最新のクルマと比べての快適性の差であり、むしろそのぶんカーマニアではない人のほうがハマれる。しかも、こんどのランクル70はパワーユニットを刷新して低騒音や静粛性への配慮、燃費性能の向上を追求しているほか、後席の快適性にも力を入れている。
さらに本来の機能として、フェンダーの張り出しはあるものの直線的なボディは特にサイドぎりぎりまでクルマを寄せやすく、障害物が多く道も狭いフィールドでの圧倒的な使いやすさにつながる。また、観音開きのリアゲートも狭い場所での開閉や積載のアレンジが効くという点で、大きなメリットを感じるだろう。道具としての快適な使い心地は、デザインに現れている。だから角張ったデザインへの憧れだけが購入の動機だったとしても、ランクル70を選んで後悔はない。
最後に価格。今冬とされる発売時期は年をまたぐ可能性もあるが、前回のバンの再販価格が360万円だったので、今回は400万円を少し切るくらいになるのではないだろうか。長く使えることを考えれば、十分元がとれる投資だ。今回は限定生産ではないので、購入に向けてじっくりと検討したい。
※写真提供:トヨタ自動車
TOYOTA Land Cruiser 70
- 全長×全幅×全高:4,890×1,920×1,870mm
- ホイールベース:2,730mm
- エンジン:1GD-FTV ディーゼル 2.8L ターボ(最高出力 150kW(204PS)最大トルク500N・m)
- トランスミッション:6 Super ECT
- 価格:未定
- 発売時期:2023年冬以降