北アルプス随一の絶景を求めて親子3人で唐松岳へ!
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    2023.09.29

    北アルプス随一の絶景を求めて親子3人で唐松岳へ!

    北アルプスの中でも登りやすいとされている唐松岳を目指す。

    山登りしている感が味わえる初心者にもやさしい山はどこだ!?

    昨夏、乗鞍岳で本格登山デビューをしてからというもの、山への興味がむくむくと湧いてきた。

    それなら今年の夏も行きますか! というわけで計画を練った結果、標高2696mの唐松岳に泊まりがけで登ることにした。決め手はゴンドラとリフトを乗り継げば、標高1830mまで一気に距離を稼げるところ。経験の浅い私たちにはとてもありがたい。

    猛暑の収まる気配がない8月下旬、鈍行列車を乗り継いで長野県の白馬へ。翌日からの山行に備えてのんびり過ごす。それにしても、辺りに広がる景色の雄大さよ……!

    登山前日には白馬を散策。姫川沿いにある絶景スポット、大出公園の展望台から白馬三山を望む。

    気合い充分で登り始めたけれど……周囲は真っ白

    さわやかな青空が広がる白馬の朝。しかし山の天気予報をチェックすると、唐松岳方面は雲行きが怪しそう。ま、山の天気は変わりやすいというから、晴れることを願って出発だ。

    八方ゴンドラリフト「アダム」で標高1400mの兎平まで。

    アトラクション感満載のゴンドラとリフトに揺られ、登山のスタート地点である八方池山荘に降り立った。8時35分、山岳系アプリの開始ボタンをタップしたら、さあ歩くぞ!

    登り始めてすぐに道が二手に分かれる。さあ、どちらに進む!?

    登山道の分岐点に設置された標識。

    尾根道は景色がよく、木道は歩きやすいとのこと。まだ序盤だし、この先にも素晴らしい景色がたくさん待っていると信じて木道を進む。なお、これだけガスっていると下界が望めず、「高いところまで来た!」という実感がない。それでも自然の中を歩くのは気持ちがよい。

    木道を登り始める。しっかり整備されているので歩きやすい!

    ひとまずの目標は、八方池山荘から60分ほど歩いた先にある第2ケルン。ここから先は頂上付近の山小屋までトイレがなくなるとあって、休憩を取る人が多いようだ。まだ疲れた感じはなかったが、早めのおやつタイムを取っておく。

    標高2005mの第2ケルン。

    バックパックを背負い直したら、次に目指す八方池までは30分ほど。北アルプス随一とも評される絶景が待っているとあって、足取りも軽く……と言いたいところだが、相変わらず周囲は真っ白で、本当に美しい眺めが堪能できるのか不安になってきた。

    ここを少し下れば八方池が広がっている……はずだが、霧に阻まれて展望ゼロ。近くにいた登山者が、「これじゃミルクの中だな」とつぶやいていて、思わず納得。でも心配は無用。山頂に泊まる私たちには明日もチャンスがある!

    八方池方面。目を凝らしてみても池らしきものがまったく見えず。

    これぞ登山という風景にようやく出会えた!

    「ここから先は、登山の装備と技術が必要です!」
    八方池を過ぎたところに、こう書かれた看板が設置されていた。確かに、これまでの登山道よりもハードそうな道が延びている。

    看板のあとに現れた登山道。

    前回の乗鞍岳との大きな違いは、荷物の重量だろう。とくに今年の夏、長野の山小屋はどこも水不足のようで、飲料水は必須アイテム。試しに自宅で必要な量の水を入れたバックパックを背負ってみたところ、「……おぅ」と声が出た。そのとき、息子が言った。「お父さんはカメラを持つでしょ。だから、水は僕が持つよ」

    それぞれが10kgほどの荷物を担いで、延々と歩くことになる。だからこそ荷物の軽量化は重要だ。毎日欠かさずゲームをするWi-Fi命の息子が、iPadを置いていくと自ら決めたときには、しみじみ成長を感じた。

    岩場の登山道では両手両足を使って登る。日常生活ではまず行わない動作だ。

    そんなことを思っていたら、登山道の前方からはジャージ姿の集団が降りてきた。麓の中学校の1年生が、毎夏唐松岳に登っているらしい。さすが日本アルプスを有する長野、スケールが違う。なお、同じ年齢の息子に感想を求めると、「すごいわ(ただし真似はしたくない)」とのこと。

    しばらく歩いていると、晴れ間が覗いてきた。少しずつ隠れていた山々が見えるようになってきた。山の結構高いところを歩いていたんだとようやく感じることができたと同時に、口から出てくる言葉は「うおーっ!」「やばっ!」など、語彙力が低めの単語ばかり。

    もう少しで全貌が明らかになる!?

    そんな壮大さを満喫できたのもほんのひとときで、連なる山々はふたたび霧の中に。とはいえ、ようやく出会えた絶景を目にして、苦労が報われたと心底感じた。

    歩けども歩けども山のてっぺんはまだ遠い

    下の樺、上の樺と呼ばれるダケカンバが生い茂る樹林帯に入る。高度が上がっているのに、これだけ青々とした世界が広がっているなんてちょっと不思議、と思っていたのだが、あとから植生の逆転現象によるものだと知った。

    蛇紋岩というもろい岩石に覆われているこのあたり一帯では、標高の低いところに高地で生育するはずの高山植物が、そして高いところには育たないダケカンバが見られるのだとか。

    開けた岩場も面白いけれど、木々に囲まれた道もあって、バリエーションのある登山道が続くから飽きることがない。

    樹林帯の連続だと眺望が楽しめなくて残念かもしれないが、ときどき現れるのは大歓迎。

    ちょこちょこと携行食をつまんできたが、昼食はここでと考えていた扇雪渓に正午前に到着。観測史上もっとも暑い夏になったというのに、ここには雪が残っている。ほんのり冷気が感じられて、涼しくて心地よい。

    雪渓の前の岩場でランチタイム。ひんやりとした空気に包まれておにぎりを頬張るのは至福。

    腹ごしらえを終えて登山再開。山岳系アプリによれば、次の丸山ケルンまでは20分とあるが、はるか先に小さく見える丸山ケルンまでその時間で着けるとは思えない。あとどれぐらい登るのか……、という息子の表情に同情する。だって私たちも同じことを思っているもの。

    登山道の脇で見つけたチングルマの綿毛。

    ただ、驚いたことに、本当に20分で着いちゃったのだ。ちょうど丸山ケルンでは霧が晴れてきたので、バックパックを下ろしてしばらく眺望満喫休憩をとる。

    丸山ケルンからは稜線歩きが続く。疲労がたまってきた足にガレ場の連続はつらい。ゴールが見えていれば頑張れるのかもしれないが……。「あそこが唐松岳ですかね。そうであって欲しい」と息を切らしながら話しかけられたご高齢の登山者に、「本当ですね……」と返すのが精いっぱい。暑さと疲労で休憩も多くなる。

    このあたりまで来るとさすがに口数が少なくなる。

    あと少しで山小屋に着くというところまで来て、細い稜線やロープ場が出現する。高所恐怖症気味の息子は、「怖いから先に行って」と及び腰になっていたものの、なんとか自力で切り抜けた。

    もはや誰も言葉を発することなく黙々と歩を進め、目に飛び込んできたのが赤い建物。あれは、今夜泊まる予定の唐松岳頂上山荘だ! うおーっ!!

    建物が見えたときの私たちのテンションといったら!

    ふいに登場するなんてニクい。最後は皆にこにこしながら山荘にたどり着いた。時間は14時を少し回ったところ。休憩を1時間半挟んでの4時間の山行、お疲れさまでした! 肝心の唐松岳山頂には、まだ訪れていないけれど……。

    夕方から雷雨の予報につき、今日のところはこれにて終了。

    【後編に続く】

    私が書きました!
    旅行作家、カメラマン、ライター
    旅音(たびおと)
    カメラマン(林澄里)、ライター(林加奈子)のふたりによる、旅にまつわるさまざまな仕事を手がける夫婦ユニット。単行本や雑誌の撮影・執筆、トークイベント出演など、活動は多岐にわたる。近年は息子といっしょに海外へ出かけるのが恒例行事に。著書に『インドホリック』(SPACE SHOWER BOOKS)、『中南米スイッチ』(新紀元社)。
    https://tabioto.com

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