ロサンゼルスで行われる登山競走「 Run-to-the-Top」とは?
9月4日にロサンゼルス近郊にあるMt. Baldyという山で行われた「 Run-to-the-Top」というレースに参加してきました。その名の通り、山頂まで走って登るタイムを競うものです。
毎年、米国の祝日にあたるLabor Day(労働の日)に開催され、今年で58回目を迎えた歴史ある大会です。
Mt. Baldyは直訳すると「禿山」です。山頂付近が丸みを帯びていて、樹木が少なく、山肌がむき出しになっている姿からきた命名だと思います。同じ名前で呼ばれる山は米国のあちこちにあります。
もっともこのMt. Baldy は通称で、正式名称はMount San Antonioです。ここではレース名にも使われているMt. Baldyで呼び方を統一します。
このMt. Baldyはサン・ガブリエル山脈の最高峰です。標高約3,067mなので、日本の山と比較すれば、富士山(3,776m)よりは低いですが、北アルプスの剱岳と大体同じ高さということになります。
スタート地点は標高約1,800mにあるリフト乗降場。そこから頂上まで一気に登るというわけですので、標高差は約1,200m。かなりきついコース設定であることは間違いありません。
過酷な登山競走にいざ挑戦!
大会名には「Run」という単語が入っており、現地では一応トレイルランのカテゴリーに入れられています。しかし、これだけ標高差が大きく、そして険しい山道を、文字通り「走って」登ることができる人は世の中にそれほど多くはありません。
一握りのトップランナーを除いた参加者のほとんどはずっと歩いて登ります。私ももちろん歩いて登りました。たまに現れる下りや平坦な部分を小走りしたくらいです。
距離や標高差はきついのですが、足元が危険に感じる場所はあまりありません。日頃からトレイルランを行う私にとっては、時間さえかければ、登れる山でした。
山頂が近づくにつれて、樹木が少なくなります。
黒澤明監督『乱』で老武将が彷徨した荒野のような、ガレキだらけの山肌がむき出しになります。豪快で荒々しい魅力があると言えなくもありませんが、日本の繊細な自然と比べるとあまり美しい山とは呼べないかもしれません。
2時間半でゴール!
山頂付近は開けていて、そこにゴールのテープとタイムを示す電光表示板がランナーたちを待っていました。この辺一帯で一番高い山のてっぺんにいるだけあって、360度開けた眺望はやはり気持ちが良いものです。
さて、私の到着タイムは2時間半ほどでした。順位は後ろから数えた方が早いくらいです。
優勝したランナーと言えば、その半分以下の1時間12分でゴールしていました。人間業とは思えません。走行距離は約7マイル(約11キロ)ですので、ふつうの人が平地をジョグするくらいのペースで3000m級の山を登り切ったことになります。
ゴールしても終わりではないレース
もうひとつ、このレースのユニークな点は、ゴールしてもそれで終わりではないということです。山頂のゴールに到着した後は、自力で山を下りなくてはいけないからです。
コースのちょうど中間地点くらいにリフト乗降場があります。冬場はそこからスキーやスノーボードで滑り降りるわけです。今回のレースでは希望者はそこからスタート地点までリフトに乗って下りることができました。つまり、登り約11キロ、下り約5.5キロの山道を自分の足で移動することが参加の条件になります。
完走者メダルもゴール直後ではなく、そのリフト乗降場でランナーに手渡されるのです。
ところが、別の記事でも書いたことですが、私は高所恐怖症です。
遙か下界を見下ろしながら山を下っていくリフトにちょこんと座っていることを考えるだけで背筋が凍ります。
せっかくのレース主催者からの厚意なのですが(そしてレース参加費にリフト代も含まれている)、恐怖の5分間に耐えるくらいなら、とコースの残り半分をとぼとぼと30分くらいかけて歩きで下ることを選びました。
日本でも「富士登山競走」というものが毎年開催されていて、こちらは今年で第76回を迎えたそうです。このMt. Baldyで鍛えて、来年は日本最高峰に挑戦してみようかなと心中秘かに燃えているところです。
Run-to-the-Top大会ウェブサイト:https://run2top.com/