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知っておくべきバーナーの選び方
バーナー選びで失敗しないために
元製薬企業研究職・農家生まれの自然を愛するサイエンスライター。独立後、自然豊かな千葉県外房・海岸エリアに移住し、週1~2回ソロキャンプにでかける日々。多くの人が気軽にキャンプを始められるように、初心者向け記事の執筆やイベントの企画などを行っている。千葉には山がないので登山できないのが最近の悩みだそう。
キャンプ用の燃焼器具で、最もオーソドックスなのがガスバーナーだ。ガスバーナーは大きく分けると「CB缶用」と「OD缶用」の2種類がある。この2つのバーナーの特徴や違いを押さえておかないと、自分に合わないものを買ってしまうことになりかねない。そこで今回は、「CB缶とOD缶の違い」「初心者が自分に合ったバーナーを選ぶポイント」についてわかりやすく解説していく。
そもそもCB缶・OD缶とは?
CB缶のCBは「Cassette Gas Bombe(カセットガスボンベ)」の略。家庭用のカセットコンロにも使われるガス缶で、キャンプ未経験者にもなじみのある形だと思う。
一方、OD缶のODは「OutDoor(アウトドア)」の略。名前のとおりアウトドア用に作られたガス缶で、屋外での使用に向いた性能を備えている。
2つのガス缶の具体的な違いについては、バーナーの比較と絡めて解説する。
CB缶とOD缶の違い
2つのバーナーの違いについて、下の表にまとめた。メーカーの公式発表や、渡邉さんが実際に利用する中で感じたことなどを元に評価をつけてもらった。
CB缶 | OD缶 | |
耐寒性 | △ | ◯ |
ランニングコスト | ◯ | △ |
コンパクト性 | △ | ◯ |
燃料の入手し易さ | ◯ | △ |
耐寒性
耐寒性は言い換えると「どのくらい寒い場所で使えるか?」ということ。こちらに関しては、アウトドアユースを前提としているOD缶の方が優秀。具体的にどのくらい違うかはどのメーカーのガスを使うかにもよる。CB缶とOD缶の実際の製品を比較したのが下の表だ。
製品名 | 缶のタイプ | 使用可能温度 |
イワタニ カセットガス |
CB缶 | 10度C以上 |
イワタニ カセットガスパワーゴールド |
CB缶 | 5度C以上 |
IWATANI PRIMUS ノーマルガス |
OD缶 | 5度C以上 |
IWATANI PRIMUS ハイパワーガス |
OD缶 | 0度C以上 |
使用温度を下回ると、ガス缶の中の燃料が液体から気化できず、火が弱くなったり着火できなくなる。つまり「ガス缶の耐寒性が高い」というのは「より低い温度でも気化できる燃料が充填されている」ということだ。
春夏秋はさほど問題にならないが、晩秋~冬にキャンプをするならおさえておくべきポイントだ。
また、通常より耐寒性を高めたCB缶を「パワーガス」などの名称で販売しているメーカーもある(上表の「イワタニカセットガスパワーゴールド」もその1つ)。ただ、パワーガスのCB缶であっても、オールシーズン対応のOD缶(上表でいうとIWATANI PRIMUS ハイパワーガス)の耐寒性には劣ることが多い。
ランニングコスト
OD缶の方がCB缶より価格は高い。理由の1つとして、耐寒性の高いガスの方が高価であることが挙げられる。メーカーによっては、中身を耐寒性の低いガスにして価格をおさえた春夏秋用のOD缶も販売している(ノーマルガス、レギュラーガスなどの名称で販売)。しかし、基本的にはノーマルガスのOD缶でもCB缶より価格は高い。下の表はOD缶とCB缶の価格を比較したものだ。
商品名 | 種類 | 内容量 | 価格/1本 |
イワタニカセットガス | CB缶 | 250g | 440円 |
イワタニカセットガスパワーゴールド | CB缶 | 250g | 568円 |
IWATANI PRIMUS ノーマルガス | OD缶 | 230g | 550円 |
IWATANI PRIMUS ハイパワーガス | OD缶 | 225g | 715円 |
※メーカー小売希望価格を表記していますが、店頭価格ではCB缶とOD缶の価格差はさらに大きい傾向がある。
このように、基本的にCB缶とOD缶を比較するとCB缶の方が安価。よって、燃料のランニングコストはCB缶の方が優れている。
コンパクト性
形状的に、縦長のCB缶よりOD缶の方がバックパックへの収納性は高い。また、OD缶は丸型の鍋などのクッカーにも収納(スタッキング)できるので、その意味でも携帯性に優れている。CB缶にはコンパクト性に長けたショートタイプもあるが、容量はその分少なくなる。
バーナー自体のコンパクトさも、OD缶用は登山などで持ち運びしやすいようコンパクトなものが多い。ただ、五徳が小さくなり、大きめのクッカーを置いたときの安定性に欠けるので注意が必要だ。
燃料の入手し易さ
CB缶はホームセンターやアウトドアショップはもちろん、コンビニで買える事もある。対してOD缶はコンビニにはまずない。ホームセンターに置いている事もあるが、品揃えはそこまで期待できない。主な入手ルートはアウトドアショップ、あるいはネットだ。
ネットで何でも手に入る時代なので、通常のキャンプを楽しむ分には“入手のし易さ”はそこまで問題にならない。しかし、以下のようなケースでは、キャンプ場に着いた後にガス缶を入手する必要がでてくる。
ガス缶を忘れた・紛失した
ガス缶の不具合で火が着かない
連泊でガスを大量に使う
飛行機を使う(ガス缶は預け入れも持ち込みもNGです)
キャンプ場の周辺にコンビニやホームセンターがある事は多いので、CB缶は比較的手に入る。しかし、アウトドアショップがあるケースは決して多いとはいえないので、OD缶は入手困難だといえる。
自分に合ったバーナーの選び方
結論から言うと、ほとんどの初心者キャンパーにはCB缶がオススメだ。以下のような“OD缶用バーナーの方が向いてる一部の人”以外は、CB缶が向いている。
既に氷点下でキャンプすると決めている人
高山や冬山の登山もする予定がある人
ランニングコストよりとにかくコンパクト性を重要視する人
その上で、どのようなバーナーを選べばいいかを解説する。
最初に考えるべきは耐寒性
せっかく買ったバーナーも使えなければ意味がない。そのため、まず考えるべきは「使用可能温度=耐寒性」だ。
氷点下の環境で使用する場合は、OD缶が必須になる。
ただ、キャンプ初心者の段階では、「厳しい寒さの中でもキャンプをしたいと思うか」はまだわからない。経験を積む中で冬キャンプをやりたいと思ったら、その時に改めて買い替える、もしくは買い足すという選択肢もある。
また寒冷地でキャンプをする場合であっても、前項で触れたパワーガスを使えばCB缶でも耐寒性を上げる事が可能。メーカーによってはCB缶に特殊な細工を施すことで耐寒性を上げている製品もある(例えば、マイクロレギュレーターを搭載したSOTOのST-310やST-340など)。
渡邉さんの経験でいうと、上記のST-310にSOTOのパワーガス ST-760を用いることで、メーカの公式発表通り外気温5度C前後の環境下で問題なく使用できたとのこと。CB缶バーナーであってもこのレベルまでは耐寒性を高める事ができる。
前述のとおり氷点下で使うならOD缶しか選択肢はないが、5度C前後までの使用ならCB缶バーナーも選択肢に残る。よってその場合は他の3つの特徴も踏まえて決めることになる。
その後に残りの3つの違いを吟味する
コンパクト性は優れているに越した事はない。だが、バックパック1つの徒歩キャンプや登山用途で限界まで荷物をコンパクトにしたい人以外は問題にならない差だ。ランニングコストの安さは、キャンプに行く頻度が高い程メリットが大きくなる。渡邉さんは、家でもバーナーを使うとのことだが、その場合はさらにコスト面の影響が強くなる。
耐寒性で選択肢を絞れない人は、このコンパクト性とランニングコストを秤にかけて決めるのがおすすめだ。
上記2つに比べれば「燃料の入手しやすさ」はそこまで重視しなくていいだろう。ただ、ここまでの3つのポイントを熟慮しても選択肢が絞れないときは、これを最後の判断材料にするといいのではないだろうか。
この記事で解説した2つのバーナーの特徴をしっかり理解し、自分の用途に合うバーナーを選んでみよう!
▼参考記事
初心者におすすめはCB缶?OD缶?初心者こそ知っておくべきバーナーの選び方
アウトドア料理の達人が2024年に買うべきバーナーを大予測!
『BE-PAL』の通販担当を務める、道具の目利き。アウトドア料理の名人でもあり、著書に『焚き火料理の本』など。三浦市・三崎にてカフェ「雀家」も営む。
技あり道具が増えることに期待!
「バーナーはSOTOが頭ひとつ出ている感じ。個人的には大型鍋に対応するものが欲しい」
と、小雀さん。もちろん、SOTOの新モデルが2024年もヒット間違いなし、という見解だが、小雀さんが敢えて挙げたのはこの3つ。
「アウトドアメーカーから出ている、自宅使いにも向くデザイン性の高いものに注目です」
中〜大サイズの鍋が安定して載る卓上ストーブは、自宅コンロの火口を増やしたいときにも役立つ。手入れに手間がかかるとツーバーナー人気が衰えているので、軽くて機動力が高く、手入れが楽なモデルもセレクト。
「環境が変わりやすいアウトドアだからこそ、弱点を減らす工夫が大切。技あり道具がどんどん生まれてくれば、キャンプ料理はもっと楽しくなるはずです」
\第1位/
FORE WINDS
LUX CAMP STOVE
シンプルで手入れも楽ちん!トップカバー(取り外し可能)と風防リングで風を防ぐ。グッドデザイン受賞のスマートなフォルムはテーブル上でも違和感なし。282個の炎口が自慢。 ¥16,500
太いワイヤー五徳がダッチオーブンも支え、野外でも使いやすい。
\第2位/
プリムス
キンジャ
薄型設計でスタイリッシュ。コンパクト設計のツーバーナー。燃料ホースでカートリッジを横置きでき、どこでも気軽に使える。五徳と受け皿は取りはずし可能。 ¥38,500
カートリッジを取り付けるバルブ部分は、底部にきれいに収納できる。
\第3位/
MSR
ウィンドバーナー パーソナルストーブシステム
旅の相棒に最適な高効率ストーブ。密閉された風防と輻射式バーナーで風の影響を最大限抑え、0.5ℓの水が2分30秒前後で沸く。ポット部に収納可能。 ¥31,900
バーナーヘッドの金属のメッシュが赤く熱され、赤外線を放射する。
▼参考記事
アウトドア料理の達人が2024年に買うべきキッチンツールとバーナーを大予測!
アウトドアNO.1情報誌『BE-PAL』編集部がリアルに使ってわかったおすすめバーナー
\ツーバーナーのおすすめ/
SOTO (ソト)
レギュレーター2バーナー GRID ST-528
低温時や連続使用時に火力の低下を防ぐマイクロレギュレーターを搭載した、ツーバーナーの後継機が登場。火口径が大きくなり火力がUP。広範囲かつ均等に加熱ができるようになり、より機能的に。炊飯時も満遍なく鍋に火が回る! ●発熱量/2,800kcal/h ●サイズ/幅473×奥行き252×高さ145㎜ ●重量/2240g ¥29,700
ST-526より火口径が45㎜から66㎜に広がり、さらに家のガス台の形状に近づき、実用度も抜群。火力も300kcal/hもUP!
CHECK POINT
火口に近い側のゴトクがカットされたことで火口周りの掃除も楽々。風防は背面に折りたため、収納時は約15㎝の厚さというスマートさも◎。
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SOTO (ソト) / レギュレーター2バーナー GRID ST-528
\ヘッドを改良!/
SOTO(ソト)
レギュレーターストーブ ST-340Range
同社の名品レギュレーターストーブST-310(¥6,930)に、大型ヘッドを搭載した兄弟機ST-340Range(¥9,020)が登場。ツーバーナー同様の火口径で直径11~19㎝のクッカーと相性抜群。 ¥9,020
CHECK POINT
点火アシストレバーが追加され、押し下げる構造になったので着火動作が楽。
「ロングセラーモデルが多いツーバーナーのなかでも、燃料の扱いやすさやパワー、スマートな見た目などから、SOTOのレギュレーター2バーナーGRIDが一線を画していました。しかも後継機は、火口を見直して火の当たる範囲を広げ、手入れのしやすさも加わるなど、まさに最強ツーバーナーの誕生です!」
と、編集部オガワが鼻息荒く力説。 そこで、新旧モデルを並べて、火力をチェック。
「これならフライパンの中心から縁に置いたものまで、餃子も満遍なく焼けますな」
と、感心しきり。シングルバーナーも、バーナー界の二大巨頭プリムスからは、ブランド最軽量モデルがさらに使いやすくなって再登場。MSRからも安定性を向上させるためのオプションパーツが開発されたりと、ジワジワと進化の波が押し寄せてきている。
「ロゴスのアルコールストーブは、いくつかの既存品と組み合わせて使えるのがおもしろいですね。何と一緒に使えるか考えるだけでワクワクします!」
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SOTO(ソト)/レギュレーターストーブ ST-340Range
\羽の生えたシングルバーナー/
PRIMUS (プリムス)
P-116 フェムストーブⅡ
燃料調節つまみがステンレスワイヤー製に変更。クッカーの下に手を入れて火力調整する必要がなくなって使いやすくなった。旧機より7g重くなったものの収納性の良さは◎! ●発熱量/2,100kcal/h ●収納サイズ/幅54×奥行き27×高さ74㎜ ●重量/64g ¥8,800
CHECK POINT
点火装置を兼ねたプラスチックのつまみが、ワイヤー製に。点火スイッチは単独で操作する一般的なタイプに。
\オプションパーツが安心安全を叶える/
MSR (エムエスアール)
ローダウン リモートストーブアダプター
ストーブとカートリッジの間に連結し、直結型のストーブを分離型に変身できる、ありそうでなかったパーツ。ゴトク位置を低くでき安定感が増す。点火時2か所のアジャスターを操作する必要がありやや面倒だが、手元で火力調節できて便利。 ●サイズ/一辺13.5㎝ ●重量/180g ¥8,800
CHECK POINT
ポケットロケット2やウィンドバーナーに連結可能。ソロ向きバーナーがグルキャンにも対応できるように。
ポケットストーブ2
ウィンドバーナー
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MSR (エムエスアール) / ローダウン リモートストーブアダプター
\組み合わせ次第でアルコールバーナーの使い道が広がる/
LOGOS (ロゴス)
アルコールバーナー
フタに取手がつき、消火時も躊躇なく本体に被せられる。型押しされたブランドロゴのメープルリーフも相まって、女性でも手に取りやすい。同社既存の別売りアイテムと組み合わせれば様々な調理が楽しめる。 ●サイズ/約直径7.5×高さ5㎝ ●重量/約110g ●容量/約110ml ¥2,200
写真のミニミニKAMADOやminiたき火コンロなどをゴトクとして組み合わせると、中型の鍋やメスティンを乗せての調理も可能。
※構成/大石裕美 撮影/山本 智
(BE-PAL 2023年5月号より)
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改良著しい「炎」のギア!テストしてわかった、編集部おすすめのバーナー7選
全国アウトドアショップの店員さんが選んだおすすめバーナーランキングTOP7
\第1位/
SOTO (ソト)
レギュレーターストーブ ST-310
もはやソロハイカーの王道バーナー!元祖マイクロレギュレーター搭載モデルが不動の人気。低温下でも火力が安定し、CB缶が使える経済性も併わせ持つ。専用テーブルなど、オプションパーツも人気の的。 ¥6,930
推しのコメント
「寒さに弱いCB缶の弱点を克服した、リスペクトモデル。五徳が広く、重い鍋も安定して載せられる」(秀岳荘白石店)
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SOTO (ソト) / レギュレーターストーブ ST-310
\第2位/
Snow Peak(スノーピーク)
フラットバーナー
パーツを分解できいつでも清潔。直径23㎝の鍋に対応可能な、低重心のシングルストーブ。バーナーヘッドが外部に露出していないので、防風性にも優れる。同社のIGTシリーズのフレームにセットして使うことが可能。 ¥14,520
推しのコメント
「ほかにないデザインが新鮮で初心者キャンパーにも扱いやすい。IGTシステムにジョイントできるのも魅力」(SWEN新富士Base)
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Snow Peak(スノーピーク)/フラットバーナー
\第3位/
PRIMUS (プリムス)
P-153ウルトラバーナー
高出力(3600kcal/h)、軽量(116g)、小型なストーブ。高い防風性と安定感のある4本五徳が、登山者に根強い人気。コンパクトクッカーに収まるサイズで、パッキングしやすい。 ¥11,000
\第4位/
Iwatani(イワタニ)
カセットフー タフまるJr.
その名のとおり"タフ"なカセットコンロ。ダブル風防ユニットで風をシャットアウト。耐荷重10㎏で、テーブル上でもダッチオーブン料理が楽しめる! 専用キャリングケースも付属し、携行もラクチン。 ¥10,978
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Iwatani(イワタニ)/カセットフー タフまるJr.
\第5位/
PRIMUS(プリムス)
トゥピケ
薄型設計でスタイリッシュなフォルム。燃料ホースを介したひとつのガスカートリッジでふたつの火口を使え、燃料を無駄なく使える。スタンドはロック機能付き。五徳と受け皿を取りはずし可能。 ¥49,500
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PRIMUS(プリムス)/トゥピケ
\第6位/
SOTO (ソト)
マイクロレギュレーターストーブウインドマスター SOD-310
風にも寒さにも負けないミニマムモデル。レギュレーターとすり鉢型のバーナーヘッドによる防風性で、強風時にも火力が安定。使用時のガス出力音が静かなのも高評価。別売りで4本脚五徳もある。 ¥8,800
\第7位/
SOTO (ソト)
マイクロレギュレーターストーブ FUSION Trek SOD-331
シェラカップから大鍋まで対応!登山やトレッキング用として人気。OD缶を燃料にした分離型で、不整地でも安定して使える。ガス噴射口が改良され、発熱量3000kcalにパワーアップ。 ¥9,900
※CB缶はカセットガス缶(カセットボンベ)で、OD缶はアウトドアガス缶のこと。
※構成/大石裕美 撮影/山本 智
(BE-PAL 2023年2月号より)