1970年以来、進化を続けるレンジローバー
膝まで浸かる沼地やサッカーボール大の岩が転がる荒れ地を走ることはなくても、極限の状況に耐えられるクルマに乗っているだけで、大きな安心感を得ることができる。
「渡河水深限界」や岩場を乗り越えるクリアランスを確保したSUV(スポーツ多目的車)は決して多くはないけれど、4WD性能に限っていえば、駆動力を緻密にコンピュータ制御することで想像以上に悪路を走れるようになっている(ただし過信は禁物)。
今や売れ筋のSUVは悪路走破性に加え、舗装路での乗り心地にも優れ、インテリアも居心地の良さを重視しているクルマがほとんどだ。
その先駆けとなったのが、1970年に登場した初代レンジローバーだ。
軽快感を高めたレンジローバースポーツ
1960年代にイギリスの自動車ブランドが集まってできたブリティッシュ・レイランドに属し、もともとイギリス版ジープであるランドローバーシリーズ(のちにディフェンダーと改称)をつくっていたランドローバー社は、卓越した悪路走破性を誇るフルタイム4WDを活かしながら、乗用車と同じ感覚で扱える装備を備えたレンジローバーを開発。
「砂漠のロールスロイス」の異名を得て、イギリスのカントリージェントルマンを中心に人気を博した。現行モデルは4代目で、3代目からちょっぴりカジュアルなレンジローバースポーツも加わった。
カジュアルといってもその装備は実に豪華で、インテリアのレザーやパネルの素材は豊富なバリエーションから選べ、自分仕様をオーダーできる。そしてもっともハイスペックなモデルが、『レンジローバースポーツSVR』だ。
スポーツ性能を極めた「SVR」
エンジンはスーパーチャージャー付きの5リッターV8で、最高出力はなんと550馬力。
始動させるや野太い爆音が響き、走行モードを「ダイナミック」にすると、アクセルを戻したときの「パ、パ~ン!」というアフターバーナー音まで鳴り響く。この恐るべきパワーで2・5トン近い車重をものともせずに加速していくのだ!
ボディの各部に空力性能を高めるエアロパーツをまとい、シートもホールド性重視のバケットタイプと、もはやSUVというより“背の高いスーパーカー”だ。
実際、世界中の高性能スポーツカーがテストすることで知られる、ドイツのニュルブルクリンク・サーキットで、SUVの世界最速タイムを記録したこともあるというからすごい(のちにポルシェ・カイエンターボが更新)。
アウトドアでカッ飛ぶことはほとんどないし、キャンプ場で爆音を轟かせたらヒンシュクを買うこと間違いなしだが、クロスオーバー化が進み、今や何でもアリとなりつつあるSUVの到達点のひとつとして、記憶の片隅に留めておきたい。
ここまでいかなくても、スポーツ性能を重視したSUVは今後のトレンドになりそうだし……。
ランドローバー/レンジローバースポーツSVR
全長×全幅×全高:4880×1985×1800㎜
車両重量:2410kg
最低地上高:210㎜
最小回転半径:6.1m
エンジン/排気量:スーパーチャージャー付きV型8気筒DOHCターボ/4999cc
燃費:7.3km/L
最高出力/最大トルク:550ps/680Nm
トランスミッション:8AT
駆動方式:4WD
価格:¥16,050,000(税込)
問い合わせ先: ランドローバー・コール ☎0120-18-5568
◎構成/櫻井 香 撮影/小倉雄一郎