北アルプスの玄関口でありクラフトのまちでもある長野・松本市を”クラフトマンシップ”に焦点を当てたイベントで盛り上げようと「ALPS OUTDOOR SUMMIT」が開催された。
第一回となる2023年は、9月6〜8日の3日間(うち6日はプレスデー)。青空が広がる絶好のスタートを切った。
クラフトマンシップを感じるギア
セールが中心のイベントもいいけれど、「ALPS OUTDOOR SUMMIT」のメインテーマはなんといっても”クラフトマンシップ”。創り手の技術力、デザイナーの思いを感じるモノが並ぶサマは圧巻だ。
サバティカルの新作で10名ほどがすごせるビッグサイズのドーム型シェルター。18ものメッシュパネルを装備しており、遮光PU加工のルーフとあいまって涼しくすごせそう。
韓国の人気ブランド、TENTERのテントは独自の構造「V.A.S」によって最大17cmもの体積を調整できるのが特徴だ。ほかにはないユニークなテントで日本でも話題沸騰中。
後部に取り付けられているのは「ヴェスタビュール」。
コットを置いて寝室に使うもよし、道具の保管庫に使うもよし
地元・長野の七味といえば八幡屋礒五郎!
八幡屋礒五にかかればバーベキュー用のスパイスもピリッと締まる。
「七味バーベキューソルト」は唐辛子と塩、そしてニンニク、ブラックペッパー、レモンを加えたオリジナルブレンドで、イベントなどでしか手に入らない味。
STATICは裂き織りで”捨てないアパレル”を提案。シャツなどをつくるときにどうしても生まれてしまう裁断ゴミを使っているという。
経糸・緯糸の組み合わせによって雰囲気がガラリとかわるし、素材を無駄にしない姿勢が格好いい。
FEDECAは大人気で自社通販では2カ月待ちは当たり前の小型鉈と、樫の木を削ったバトニング棒(完成品)を販売。自分で樫の木を削ってバトニング棒をつくるワークショップも開催していた。
消費電力が点火時166W、燃焼(強)で14W!
定格出力200W以上のポータブル電源で使える小型石油ファンヒーターがこちら。標高2000mの山小屋で使用できるよう高地設定モードを搭載しているほか、持ち運ぶ際に灯油を抜き取るためのスポイトとキャップ付き。
IH鍋で知られるフジノスの技術をいかした9w.(クオウ)の調理プレートセット。
熱伝導性にすぐれたアルミを保温性の高いステンレスで挟んだ”アルミクラッド三層鋼”のプレートは厚みの割に軽くて扱いやすい。基本セットに、スタンドやカッティングボードなどを追加して自分好みに仕上げていく話題のセットだ。
松本と苫小牧で水道用バルブ生産を行う老舗、日邦バルブが、薪ストーブ&ポータブルサウナのファイヤーサイドとコラボ。しなやかに曲線を描くことで風などの大きな力を受けたときの抜けづらさを実現したペグやイベント向きの大型ジンギスカン鍋を提案していた。
廃棄される消防ホースのリユースで知られるFIRE HOSE PRODUCTS。ホースの金具とファイヤーサイドのファイヤーブラスターが奇蹟的にフィットすることで生まれた細長いケース。傘入れ、トング入れなど手持ちの長尺物をつぎつぎに入れたくなる。
国内外の人気ブランドにまつわる有名人が登場
開発者や会長などメーカーの”顔”ともいえる人たちが登壇するステージイベントは「ALPS OUTDOOR SUMMIT」ならではのプログラムだ。
技術でテントの歴史を変えたDAC、日本が誇る老舗テントメーカーogawa、革新的なテントを発表するNEMO(カム・ブレンシンガーCEO)、韓国はもちろん日本でも絶大の人気を誇るミニマルワークス(ジョン・ビョンギル代表取締役)らのトークセッションが繰り広げられた。
国内メーカーはもちろん海外ブランドの開発秘話やこだわりを聞けるし、ときには質問コーナーも。ファンにとっては夢のようなひとときだ。
トークセッションだけでなく、ミステリーランチのブースで限定サイン会を行っていたグリーソン親子。最高の笑顔でファンと交流していたのが印象的だった。
屋外エリアではモーラナイフのグローバルアンバサダーである長野修平さんによる木べら作りが開催されていた。目印はもちろん焚き火ベーコン。
新製品のお披露目や国内未発売アイテムも
会場内を歩いていると、2024年発売予定の新作や国内未発売のレアアイテムの展示もちらほら。
トンネル型をベースとした新作テント。両側にフレームを装備することで設営しやすさを実現。ピンと張っていても雪などによっていつのまにかフレーム間が寄ってしまう、トンネル型あるあるを解消している。
ほぼ日が立ち上げたアウトドアブランド、yozoraの第一作は、ゼインアーツの小杉さんと作り上げたテント。出入り口は大きく、荷物の出し入れも人の出入りも楽ちん。
後部は低めになっているものの大型メッシュを装備しており風通しはよさそう。インナーに寝転んで木々や空を眺めるのもいいかも。
3方向から出入りできるTC製インナーを備えたロッジテント。配色といい格子窓といいちょっと懐かしいデザインがかわいい。
海外で販売されている自立するカマボコ型テント。国内ではコラボ商品として販売されたことがあるのみでレア度大。
とにかく軽いのこぎり。ハンドルと刃の角度を15度とすることで楽に切れるようこだわっている。凝ったことはしないけど、薪を短くするなどちょっとした作業に備えておきたい。
桜の木を削り出したお椀で、割れにくく、深型シェラカップに入れて持ち運べる。シェラカップで湯沸かしをしたまま食器にしてもいいけれど、お椀に入れた方が断然気分がいい。
松本城の城下町、松本では古くより家具作りが盛んで、日本初のクラフトフェアが開催されてきたクラフトの町。町を歩いていると印象的な手仕事のギャラリーや雑貨店が点在しており、ものづくりへの理解度が深い土地柄だ。おまけに町の中を流れている犀川は北アルプス・槍ヶ岳が源。市内にもキャンプ場は点在しているし、ゼインアーツのお膝元でもあり、松本駅のあちこちにロゴ入りポスターやフラッグが並び、地域を挙げてアウトドアの将来性に期待が寄せられていた。
アクセスは松本駅や会場近くの駐車場から20分おきに発車するシャトルバスを利用しなくてはいけならず、目当てのスピーカーを見逃しかねないなどちょっとした課題は残っているが、ものづくりのあれこれを直接聞けるのは貴重な体験だ。
次回の開催を楽しみに待ちたい。
【問】https://alpsoutdoorsummit.jp