海に潜って初めてわかる、生き物たちの美しい姿と生態。それを写真で誰にでも知らしめてくれるのが、水中カメラマンです。堀口和重さんは2022年12月、オランダのネイチャーフォトコンテスト「Nature Photographer Of The Year 2022」で水中部門グランプリを受賞した、その道のトップランナー。水中写真の魅力についてお届けします。
水中カメラマン堀口和重の「美しき海の世界」第15回
9月前半、八丈島の撮影が終了後は伊豆の自宅に一時戻り、クルマで次の撮影地へと向かいました。
次の撮影場所は北海道の知床半島(羅臼)。
なぜ北海道に向かったのかというと、この時期にある生き物が大集結しているのです。以前からその光景をどうしても撮影したかったのです。
そのずっと撮影したかった生き物とは……ホタテガイ(帆立貝)!
天然のホタテガイ
知る人がいないぐらい有名なホタテガイ。刺身でも焼いても美味しく食べられることから、外国人の方にも人気が高い食材です。
そんなホタテガイですが、水中で生きた姿を見たことのある人は少ないのです。
ここまで全国各地で撮影している私でさえ、天然のホタテガイを水中で見るのは今回が初めてなのです。
貝類の仲間で海産物の中でも、とても愛されているこの二枚貝。
上下の貝殻につく黒い粒のようなものは、ひとつひとつがホタテガイの目で、80個くらいあります。このたくさんの目で明るさを認識しているようです。
このホタテガイ、6月頃から10月頃まで北の海に大集結します。下の写真の光景こそ、私がずっと撮影をしたかったものでした。ちなみになぜ集まっているかは完全には分かっていないようです。
天敵から逃げるホタテガイ
ホタテガイには天敵がいます、それがヒトデ。ニッポンヒトデという大型の種類です。
ニッポンヒトデはホタテガイに覆い被さり、包み込むように口に運び捕食します。対するホタテガイもただ食べられるのではなく、必死で抵抗します。海中を泳いで!
ホタテガイは口から海水を吐き出し、ジェット噴射の要領で逃げていきます。
これにはニッポンヒトデも意表を突かれた様子でした。
また、ホタテガイを狙っているのはヒトデだけではありません。
それが、クロガシラガレイ。
クロガシラガレイは普段、殻が硬いホタテガイには攻撃を仕掛けないのですが、ヒトデがホタテガイに覆い被さろうとすると、すかさずカレイも近づいていきます。
単体で動いていたクロガシラガレイが次から次へと集まってきました。
ヒトデからのおこぼれを狙っているのだと、見ていて感じました。
ホタテガイを捕まえて食べないと死んでしまうヒトデ。捕まってしまうと食べられてしまうホタテガイ。ヒトデが捕まえてもらわないと食べることのできないカレイ。海中では常に命をかけた攻防戦が繰り広げられているのです。
ホタテガイの稚貝
ホタテガイが大集結している場所から沖に移動していくと、ボロボロになった昆布がありました。
その昆布をガイドさんが念入りに調べると、稚貝がついていたのです。
ホタテガイは6月ごろ産卵するので、その時に生まれた稚貝だと思われます。
砂地にも数個体、小さな稚貝が。可愛くて綺麗です。成熟するには2〜3年かかります。
うまく生き延びて、次に会うときは立派なホタテガイになっていることを願い、海を後にしました。
北海道の知床半島(羅臼)の撮影も終わり、南へ移動。次は世界遺産の島・鹿児島県の屋久島の記事をお届けする予定です。
今回までの撮影径路
START→伊豆(大瀬崎)→沖縄(石垣島・黒島・竹富島)→伊豆(赤沢)→山口(青海島)→千葉(波左間)→山口(青海島)→鹿児島(沖永良部)→鹿児島(桜島)→伊豆→鹿児島県(南大隅町・南さつま・桜島)→佐賀(唐津)→ 八丈島 →北海道(知床)
撮影協力:知床ダイビング企画
Home page https://photographer-holly.amebaownd.com/
Facebook https://www.facebook.com/kazushige.horiguchi
Instagram https://www.instagram.com/holly1kaz