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    2023.10.24

    ヒット作連発の「FEDECA」その強さの秘密とは?

    FEDECAの人気の秘密とは?

    FEDECAは金物のまち、兵庫・三木市に本社を置く神沢鉄工の刃物ブランドだ。

    従業員は30名ほどとお世辞にも大工場というわけではないが、料理に特化したフォールディングナイフやおしゃれで使いやすいトング、繊細な作業も可能なフルタング鉈など、プロダクトを発表すれば即完売する人気ぶり。

    モノが売れないと言われる現在でなぜ?

    予約制のショールームオープンを間近に控えた神沢鉄工を訪れ、ヒットを連発する強さの秘密を探ってみた。

    ▲4代目社長、神澤秀和さん

    創業者は3兄弟の3男で、明治28年に「辰巳屋」として発足したのが神沢鉄工のはじまりだ。そして神沢鉄工という名前になったのは昭和35年のこと。

    サークルカッターやエキスパン、ハンディソー、L型ドライバーなどDIY好きなら一度は手にしたことがある道具を発明した老舗だ。転がりにくいよう持ち手を角型にしたポンチ、クッションフロア向きのスクレーパー、現在は内蔵されている電動工具が多いけれどトルクを維持したまま回転速度を制御するスピードコントローラーなども神沢鉄工の発明品。

    「金物のまちで親戚はみんな似たような仕事をしています。競争し合うだけでは未来がないので、ほかの親戚たちがやらないようなことを考えていたらこうなりました」と神澤社長。名実ともにアイデアマンだ。

    自由な校風の高校を卒業後、アメリカに留学。これといった目的もなかったが、80年代のアウトドア文化、ヒッピー文化に触れることで改めて日本の伝統的な技術の素晴らしさに気づき、後世に残したいと思うようになったという。

    そのひとつがFEDECA

    「家業のために一度日本に戻りましたが、すぐにアメリカに帰ってやろう・・・なんて思っていたんですがそうもうまくいかなくて。40年近くたってようやくスタッフがそろい、自分が思い描いた形になっています」(神澤社長)

    職人から教わった鍛冶屋魂がヒットにつながる

    勢いのあるブランドの紹介文において「市場にないから作ってみた」「あったらいいなを形にした」というフレーズが必ず見られる。それは神沢鉄工も同様なのだが、その規模が違う。

    ▲ネジなど、金属でできているものはすべて自社で製造

    ▲ハンドルのような木の製品も製造している

    「あるとき金属の製品を購入しようとしたら、職人さんからえらく叱られまして。鍛冶屋なのに作らないのは恥ずかしいってね」(神澤社長)。以来、神沢鉄工では工場内の什器からネジに至るまで自作しているというのだ。

    たとえばナイフを作ろうと計画するとハンドルはA社、ネジはB社という具合に分業することが一般的だ。複数の機械をそろえなくてもよく職人も最小人数ですむが、そのかわり仕入れる単位は数千個、数万個は当たり前。

    「自社で作れば小ロットでいろいろなネジを作れるのがメリットです」と神澤社長は答えるが、機械1台導入するには相当の投資が必要だ。新しい製品を作るたびに機械を導入していると大赤字に陥ることすらある。

    ▲サンダーでブレードを磨く、蝋でハンドルを磨く、組み立てるといった基本工程は人の手による

    ▲プレスロボット。職人による手作業のほうが断然早いが安全性をとって一部をロボット化

    ▲昔作った手作りの機械を用いて新しい製品が作られる予定だというから楽しみ

    そのため将来的に何ができるか、どんな素材に対応できるのかを見据えて機械を導入。伝統的な機材も捨てることなく、少し手を加えつつ活用しているという。また、安全性を考慮し一部をロボット化。これにより女性社員の比率が大幅にアップし、子育て世代が働きやすい会社として注目されるようにもなった。

    そうした知恵と工夫、クラフトマンシップによって実現したのがFEDECAを代表する”カスタムできるナイフ”だ。

    2016年にブレードの素材を選び、ハンドルを自分で削る「It’s my knife」が登場、4800円〜と決して安いわけではないが完売を繰り返すヒット作に。

    さらに2019年には組み立て済みで持ち手の素材や加工を選べる「折畳式料理ナイフ」(18800円〜)が発表された。

    当時はガレージブランドなど”人とは違うこだわりギア”が注目された時期でもある

    「折畳式料理ナイフ」も構造は「It’s my knife」と同じなのでハンドルやネジを換えられ、一時は素材違いの交換用ブレードも販売することでヒット。現在もオリーブ素材のハンドルが登場して評判を得ている人気ぶりだ。

    1万円ほどしても自分だけのナイフができるのは絶対おもしろい。ほしいと思ってもらえる人がいると思っていました」(神澤社長)

    これができるのは、ハンドルもネジも自社で製造しているため。ある程度自動化は進んでいるが、決して大量生産ではないのでユーザーとしては少し目を離した隙に完売となっているのが悩ましいところだが、手軽に自分だけの1本を手にできる喜びには換えられない。

    ▲同じハンドルでも木によって微妙に表情が異なる

    日本人はとかく色や模様がカタログと違うのを嫌う傾向にあるが、店舗やイベントではズラリとならんだ表情違いのハンドルから選べるのは木製品の醍醐味だ。

    日本の刃物製造技術が高いのは当たり前。FEDECA以外にも良質な刃物を製造する会社は数多あるが、FEDECAの製品は細かなパーツを自社製造とすることで少しだけファジーな部分を残しており、完成品なのに選ぶ楽しさがある。

    そのあたりがキャンパーの心をくすぐるのだろう。 

    【問】FEDECA  https://www.fedeca.com/

    私が書きました!
    ライター
    大森弘恵

    フリーランスのライター、編集者。主なテーマはアウトドア、旅行で、ときどきキャンピングカーや料理の記事を書いています。https://twitter.com/utahiro7

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