私は人生の大半を過ごした東京を離れ、2022年4月に山形の田舎に移住しました。小さい頃から自然と触れ合うことが好きで「いつか田舎に住んでみたい」と漠然と思っていましたが、その夢が実現。ちょっとした縁から古民家を紹介され、そこで生活しています。
最近では古民家をリノベーションしたカフェや民宿なども増えており、“古民家”というワードに惹かれる方も多いのではないでしょか?そこで今回は、古民家暮らしのリアルをお伝えできればと思います。
古民家とは
一般的に古民家とは、築年数が50年以上経過した建物のことを指します。しかし実際には古民家に明確な定義はなく、あくまでも目安として築年数で判別をしています。
参考として、一般社団法人全国古民家再生協会では以下を古民家と定義しています。
古民家の定義は登録有形文化財制度に合わせ、築50年を経過する木造軸組構法の伝統構法、または在来工法の住宅とされるが、一般社団法人全国古民家再生協会での「古民家」の定義は、昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた「伝統的建造物の住宅」すなわち伝統構法としている。
木造軸組構法とは柱と梁を組み合わせて建てる手法のことで、有名な寺院などでも用いられています。
古民家は魅力に溢れている
狭いアパートでの暮らしが長かった私が、築約60年の広い古民家に住み始めて感じた魅力からご紹介します。
趣を感じながら生活ができる
古民家は家全体から木の温もりを感じることができ、梁の奥深い色合いや、歴史を感じることができる床や柱があって、日本家屋ならではの趣を味わえます。“古き良き日本”を体現しているような建物にいると、どこか心が安らぐような感覚になります。日当たりの良い日に、縁側や畳の部屋で手足を伸ばして寝転ぶと、とても気持ちが良いです。
広々とした空間
私が住む家は部屋数が多いので、広々、ゆったりと生活することができます。襖で仕切られている部屋であれば、襖を開けることでより広く開放的なスペースを作り出せます。来客用や寝室、趣味の部屋など、TPOに合わせて広さを調整できるのもGOODなポイント。
和家具との相性が良い
私は座卓などのレトロな家具が好きなのですが、和家具と古民家の相性は抜群だと思っています。特に茶箪笥などはその家のスペースに合わせて作られることが多く、前の所有者が残していった家具をそのまま使えることもあります。デザインや色味なども味わい深いものが多く、古民家にとてもマッチしているので落ち着いた雰囲気を演出してくれます。
生活をしていて不便なところも
古民家では趣のある生活が楽しめる一方で、慣れないと大変な面も多々あります。
隙間がある場合があり、冬は寒い
古民家は部屋数が多いため、窓が多く設置されています。また通気性を確保するために機密性が低く作られていたり、建築から長い年月が経過し隙間が多くなっていることも。そのため冬はとても寒く、暖房効率が低下して光熱費がかさんでしまうといったデメリットがあります。寒い地域に建つ古民家では、隙間を塞いだり、断熱シートを貼ったりするなど対策が必要でしょう。
虫が発生しやすい
私が住んでいる古民家は自然が豊かな場所にあるため、虫が多く出ます。特に夏場は、蚊や蜘蛛などが多く出ます。以前、近隣の築浅物件に住んでいたときは室内で虫を目にするようなことは少なかったのですが、古民家に移ってからは頻繁に室内に虫が入ってきます。
立地や建物の構造によって差はあると思いますが、古民家の多くは窓数や隙間がたくさんあるので虫が入ってきやすいと思います。ときには蜂などが巣を作ってしまう、なんてこともあります。
キャンプなどのアウトドアシーンで虫に慣れている方なら多少我慢できるかもしれませんが、苦手な方にとってはこういった暮らしはかなり大変かもしれません。ですので、虫除けアイテムの設置や、家の周辺をきれいにしておくなど、日頃からの対策・備えが大切です。
セキュリティが不安
鍵は昔ながら簡易的でアナログなものが大半です。都会のオートロックなどに比べるとセキュリティの差は雲泥です。気になる方は交換・新設するなど、ぜひ対策を。
それでも古民家に住み続けたい!
生活をする上で大変なところもたくさんありますが、それを上回る魅力が古民家にはあります。夏の虫対策や冬の寒さ対策など課題や苦労は尽きませんが、さまざまな工夫をすることで自分仕様のスペースを作り出せます。味わいのある装飾やくつろげる空間での生活は、きっと価値ある時間になると思います。古民家が醸し出すノスタルジックな雰囲気は唯一無二。移住を検討している方や、古民家に興味のある人はぜひ参考にしてみてください。