犬と一緒に旅に出よう!長野県・小谷村の中谷地区を中心に片道 25 キロの行程を車でめぐる旅
私はよく犬と旅をします。コアとはもちろん、先代犬のRookieとも、本当にたくさん旅をしました。トレイルを冒険気分で歩いたり、並んで美しい景色を眺めたり、その土地の美味しいものを分け合って食べたり。疲れたら狭い車の中でくっついて眠ったりもしました。
一緒に旅をすることで、犬も人も経験値が上がり、お互い理解や信頼も深まります。新しい発見もあったりします。そんな犬との旅で、私が大切にしているのが、犬に無理をさせないことなのです。
犬との旅のプランを考える時は、あらかじめ愛犬の好きなこと、苦手なことを書き出してみます。そうすることで、犬に無理をさせるような場所や体験を避けることができるでしょう。
ちなみにコアの場合は‥‥
【好き】原っぱ、山や森のトレイル、水遊び、雪遊び、ボール遊び、美味しいものを食べる、車に乗ること。
【苦手】暑さ、猫、長時間おとなしくしていること、飼い主と離れること。
【興味なし】街歩き、知らない人に触られること。
今回は、そんなコアの【好き】がいっぱいつまった長野県の小谷村(おたりむら)の旅のレポート。週末に、一泊二日で楽しむ旅のプランを前編・後編にわけて紹介しようと思います。
柴犬メル先輩と秋の小谷村の里山へ
小谷村は、長野 ICから車で約1時間、長野県と新潟県の県境にある自然の恵みがいっぱいな村。冬は豪雪地帯でスキーリゾートとして賑わい、グリーンシーズンはたくさんの登山客が訪れます。
そんな小谷村でのんびり暮らす14歳の柴犬の“メル先輩”と、その家族である太田明美さんを訪ね、紅葉に彩られた里山を案内してもらいました。
メル先輩は小谷村では有名な柴犬で、「勝手に観光大使犬」と称して、小谷村の魅力をPRしています。メル先輩の飼い主である太田明美さんは、私が姉のように慕う、スキーと家事の厳しい師匠でもあるのです。
メル先輩と明美さんとは、私の先代犬 Rookieの頃から、年間を通して一緒に小谷村の里山を散歩してきました。Rookie がお空に引っ越した後の失意のとき、私はひとりで小谷村を訪れました。それまでにないくらい長い時間をここで過ごしたのですが、豊かな自然や明美さんとメル先輩、温かい村民のみなさんたちとのふれあいが、立ち直るきっかけになりました。
そんな大切な場所で、今はコアとの旅を重ねています。
夏の厳しい暑さが長く続いたこの秋は、紅葉が長持ちしそう。そんな情報を得て、一泊二日の旅のプランを立てました。まず1日目は、小谷村の中谷地区を中心に片道 25 キロの行程を車でめぐります。
錦秋に包まれる神秘的な鎌池へ
小谷村には多くの登山者で賑わう山岳や、日本の原風景のひろがる里山があります。秋の里山さんぽは、日本百名山に選ばれた雨飾山(あまかざりやま)の登山口近くにある鎌池からスタートです。
国道 148 号線 「小谷温泉口」信号から小谷温泉方面へ進み、約40分ほど上がっていくと鎌池に到着します。 ブナの原生林にかこまれた鎌池は一周 2 キロメートル、40 分ほどの遊歩道になっています。 鎌池のトレイルは整備されておりアップダウンもほとんどありませんが、ぬかるんでいて滑りやすい 場所もあるので、しっかりした靴で歩きましょう。
古い歴史のある温泉宿、山田旅館を訪ねる
鎌池を散歩した後は、車で5キロほど下ります。目指す山田旅館は、江戸時代建築の本館を始め木造建築6棟が文化庁の登録有形文化財になっており、江戸、明治、大正、平成とそれぞれの時代に建築された建物が軒を連ねる風情豊かな温泉旅館です。
源泉が豊富で、たくさんの名湯がある小谷村。中でも歴史ある山田旅館の温泉の元湯は、1555年に発見されたと伝えられています。
歴史を感じる土間の縁台でお茶をいただきながら、二十一代目ご主人である山田誠司さんにお話を伺いました。
「山田旅館は国立公園に隣接しており、自然のままの恵みを感じていただけたらと思っています。 たとえばお食事は、春は山菜、秋はきのこと地元で採れたものをお出ししています。温泉はポンプなども使わない自然湧出で加温も加水もせず、そのままのかけ流しです。こうした温泉は日本の中で1 割にも満たないそうです」
山田さんは旅館からすぐ近くにある雨飾山を中心に山岳救助の活動もなさっていて、本連載のvol.6記事で取り上げたNPO 法人 ACTの創立メンバーだったそうです。
魅力あふれる山田旅館は著名な方も泊られるそうで、日本百名山の著者として知られる深田久弥氏も雨飾山の登山時に宿泊したと記しています。
紅葉の美しい雨飾山は近年の登山ブームで登山客が増えすぎて登山道の混雑による事故がおきたり、駐車する車が狭い道路にまであふれて、怪我人が出た時に救急車が通れず、救助が遅れるなどのトラブルがあり、現在は駐車車両の規制を行っているとのこと。それにより登山道の混雑も緩和されているそうです。
「登山も旅館も適性なキャパにしないと長続きしません。やりたいことができないより、ゆっくり静かに楽しんでほしい。せっかく気に入って訪れてくれたのだから、良い印象を持っていただきたいと思います」と語る山田さん。オーバーツーリズムを避けるためにさまざまな取り組みをなさっています。
山田旅館は、犬の宿泊はできません。愛犬を連れての旅で立ち寄り、敷地内で記念撮影などをするときは必ず一声かけて。もちろん、排泄などさせないようにしましょう。
少しずつ変わりながら、受け継がれる小谷の伝統
小谷村には豊かな大地の恩恵を授かった美味しい食べ物があります。蕎麦や雪中キャベツ、おたり漬けなどが有名ですが、最近話題になっているのが小谷村など長野産の素材を使ったジェラートです。
その絶品ジェラードがいただけるのは、山田旅館から4.8キロ下った場所にある『オタリアンジェラート』。“小谷村の古民家のお蕎麦屋さん”として知られる『蕎麦屋 蛍』のご主人が 15 年の構想を経て、一昨年夏にオープンしたお店。二軒は車で1 分ほどの距離なので、はしごして味わうのがおすすめ。今回は、まずお蕎麦をいただきに行きました。
趣のある古民家に入ると、ご主人が真摯に蕎麦を打ったり、茹でたりされている姿がありました。しばらく待って出てきたお蕎麦は蕎麦の香りがして、ほんとうに美味しかったです。
お蕎麦の後は『オタリアンジェラート』へ。焙煎した蕎麦の実を使用した蕎麦ジェラートは香ばしくて、コアのいちばんのお気に入りです。メル先輩のお気に入りはバニラだそう。
こちらのテラス席は犬の同伴も可能。コアは何回も行っているので、もう場所を覚えていて駐車場に車を停めると「ジェラート食べる!」と大興奮です。
●蕎麦屋 蛍 https://www.facebook.com/hotaru2016/
●オタリアンジェラート(@otarian_gelato) • Instagram
『オタリアンジェラート』からさらに下っていき、148号線をまたいでしばらく走ると、『ぼろ織り工房 風良』があります。
山村のこの地に根ざす人々の、“最後まで物を大事にする”という生活の知恵と工夫から生み出された「ぼろ織り」は、着物や野良着などの古着を細く裂き、はた織り機で新たな布を織りこむ、小谷村の伝統工芸。デザインや色合いはすべて異なり、世界でただひとつのものが織り上がります。 小谷村では「小谷ぼろ織りの会」が結成され、その技術が若い人たちに伝承され、今までと少し違う新しいデザインも生まれています。
そんなぼろ織りの制作、ギャラリーでの展示・販売を行なっているのが『ぼろ織り工房 風良』。ここに置いてある織り機はすべて譲り受けたもので、明治時代に養蚕が盛んだった頃に紬を織った100年以上の歴史があるものもあるそう。私は、事前に予約をしていた“ぼろ織り体験”をさせてもらいました。
『ぼろ織り工房 風良』は除雪の難しい豪雪地帯にあるため、冬はお休みになります。現在、来年の春以降の体験希望を受け付けています。
また、小谷村のぼろ織りで作られたバッグや小物は道の駅おたりや小谷村郷土館などでも購入することができます
これで 1 日目の旅は終了。 小谷の温泉にゆっくり浸かって、明日に備えて早めに休みます。実は、お昼ご飯にお蕎麦とジェラードを食べた後、14 歳のメル先輩は無理をしないようにと明美さんと一緒に先に帰宅していました。
後編は「塩の道」を旅します。メル先輩、明日も案内もよろしくお願いします。
小谷村に愛犬と泊まろう!
小谷村には犬と泊まれる宿やキャンプ場がいくつかあります。 連載vol.5では棚田キャンプ場をレポートしましたが、これからの雪の季節でも安心して泊まれる宿泊施設を紹介しておきます。
子供の頃から動物とアウトドアが大好き。ロサンゼルスのアニマル・シェルターでボランティア・スタッフをしながら犬のことを学ぶ。コアとお互いに良いバディでありたいと日々奮闘中。コアのHPはこちら。https://white-search-and-rescue-dog.jimdosite.com