まずは山を好きになりたい!乗り物を使うのもアリ。2時間以内でサクッと登りたい……。そんな人におすすめの低山「筑波山」を編集スタッフが登ってみました。
サクッと派には、日本一低い百名山・筑波山で満足度100%の低山デビューを in 茨城県つくば市
初秋のある日、二人がやってきたのは筑波山中腹にあるつつじヶ丘バス停。晴れてはいるものの、流れてくる雲は山頂のあるあたりを隠している。
梶:あ! まだ登る前なのに、なんだか空気が山っぽい。気分が盛り上がってきました〜。
高:この登山口の標高は542m。標高が100m上がるごとに気温は0.6度C下がるから、ここは街より3度Cくらい涼しいはず。ところで昨日はよく眠れた? 体の調子はどう? トイレは済んでる? 何か心配事はない?
梶:そ、そんな矢継ぎ早にどうしたんですか?
高:登山は登り始めると簡単にエスケープできないから、出発前に体調や心配事を共有しておくのが大事なんだよ。問題ないなら登り始めようか。最初はスローペースでね!
梶:はーい……っと、むむ、さすが山は地面がワイルド。アスレチックを登るみたいで、ペースをつくれないです〜。
高:たぶん道の真ん中を歩こうとしているからだねー。トレイルを踏みはずさない限り、足を置く場所は自由。一歩ごとの高低差を小さくできる場所を探してみて。そのうちに登山道のなかにラクなラインを見つけられるようになるから。
梶:なるほど。確かにだいぶ楽ちんになりました!
疲れないコツは「小股」と「体重移動」
NG!
大きな段差を腿の筋力で乗り越えるような歩き方は筋肉に疲労が溜まり疲れやすい。段差を避けられるラインを探して歩こう。
GOOD!
一歩ごとの高低差を小さくすると足の筋肉への負荷を小さくできる。不整地が続く山では小股でテンポよく歩き、荷物の荷重と体重を斜め上方に移動させるイメージで歩く。
Start!
8:50
始発のバスでつつじヶ丘バス停到着
つくば駅からつつじヶ丘まではバスで所要時間およそ50分。東京を早朝に発てば、8時につくば駅を出る始発のバスに間に合う。
9:00
軽いストレッチ&体調確認
「体調に不安があっても自分からは言い出しにくいもの。出発前に必ず確認すると決めておくと言い出しやすくなります」と高橋さん。
9:30
一日の計は序盤にあり。ペースとフォームをチェック!
序盤は歩きながら体の調子をチェック。無理なく行動できるペースで歩き、標準的なコースタイムとの差を確認する。あまりに遅れる場合は行動計画を見直す必要も。
梶:なんだか暗くなってきて、霧がかかってきましたねー。
高:うん。これは登山口から見た雲のなかに入った感じだね。
梶:へえ〜! いま私たち雲のなかなんですね。日差しが遮られて涼しいけど、霧で濡れた岩が滑ってちょっと怖いかも……。
高:そうなればアレの出番! はい、トレッキングポ〜ル〜。
梶:ひみつ道具出てきた!
高:トレッキングポールを使うと支点が2か所増えるから、体が安定するよ。使ってみて。
梶:ああ、これは助かる! ずっと歩きやすくなりました。
高:ここから先は巨岩が多くなるし、どの岩も踏まれて磨かれているから気をつけて。ほら「弁慶七戻り」が見えてきた。
梶:スゴッ! 岩がトンネルになってる! 筑波山って簡単に登れるのに百名山だし景観もダイナミック。侮れないですね。
高:そうなの。関東平野にポツンとあるのに頂上付近にはブナの林が残っていたりもして、自然も面白いんだ。この岩場まで来たらもうひと踏ん張り。頂上直下の坂を登ったら頂上に出るよ。その神社の先がもう頂上!
梶:着いた〜! ギリギリまで木立で視界を遮っておきながら、頂上に出たらスカイツリーまで見える大展望! ここまで登ってきたご褒美ですね。こんな絶景を見せられたら、登山にはまっちゃいます!
10:00
霧に霞む森を歩く
高度を上げるうちに雲のなかへ入った。標高600mより上から森が深くなる。スギやアカガシが茂り、深山幽谷といった趣に。
滑る前に使う! トレッキングポールで四足歩行
筑波山の岩は登山靴に磨かれており、濡れると滑りやすい。とくに気をつけたいのが下る場面。トレッキングポールで支えつつ進む。
10:10
弁慶茶屋跡でひと休み。水とエネルギーを補給
15年ほど前まで茶屋があった弁慶茶屋跡で休憩。「バテないためには水分と糖分のこまめな補給が大事。体が欲する少し前に補給できるといい」と高橋さん。
10:30
樹齢300年の切り株でタイムトリップ
10年ほど前の台風で倒れたスギの切り株。年輪には赤穂浪士の討ち入りや天明の飢饉、明治元年などその年の出来事が記されている。
10:40
ここから先は巨岩エリア!「弁慶七戻り」
くぐり抜けようとした弁慶が怖気付いて7回ためらったといういわれをもつ苔むした石門。このあたりから奇岩が増えてくる。
10:50
生まれ変わって気分一新!?「母の胎内くぐり」
「くぐれるものは通っておく!」ともぐり込んだのは大岩がつくる岩屋。山頂地近くの大岩には、ひとつひとつ名前と由来がある。
11:10
滑る岩にハヒ〜! 頂上直下のプチ急登
頂上まで残すところ200m程度のあたりで、道はいっそう急角度に。「2時間歩いてきて最後にこれですか〜!」
11:20
筑波山登頂!
女体山と男体山のふたつのピークをもつ筑波山。高いのは877mの女体山だ。「百名山の100分の1に登頂。残すは99座!」
12:00
登頂後のお楽しみ。ご当地グルメ「つくばうどん」
女体山と男体山をつなぐ鞍部には数軒の茶屋があり、軽食を食べられる。一番人気は筑波の名を冠したつくばうどん。美味!
13:00
ケーブルカーでラクラク下山
山頂からケーブルカーで下山。「乗り物がある山は駅まで行けばエスケープできるから心強い」
13:30
神社で買い物をしてから立ち寄り湯へ!
ケーブルカーを降りて少し歩いた先が筑波山神社。参道には土産物店が並び、立ち寄り湯を使わせてくれるホテルもある。
筑波山といえばガマ!
「ガマの油売り口上」は筑波山が発祥の地のため、土産物はガマ関係が充実。かわいい。
定番! 百名山ピンバッジ
ご当地調味料で二度楽しむ
茨城県
筑波山(つくばさん)
コースタイム:2時間標高:877m
総距離:約1.8㎞
茶屋:あり
温泉:あり
神社:あり
乗り物:あり
Start! →つつじヶ丘バス停→弁慶茶屋跡→弁慶七戻り→母の胎内くぐり→女体山頂→筑波山頂駅→宮脇駅→筑波山神社→Finish!
つつじヶ丘バス停と女体山の直下をロープウェイが結び、男体山の直下と筑波山神社をケーブルカーが結ぶ。登山道は複数あり、どれも2〜3時間程度で頂上まで登れる。
サクッと派向け低山の選び方
1 乗り物でエスケープできるルートだと安心
2 山頂はもちろん山中も山の色々な顔を知ろう
3 温泉やお土産などのお楽しみも忘れずに!
※構成/藤原祥弘 撮影/矢島慎一
(BE-PAL 2023年11月号より)