「4時間以上たっぷり登りたい」「達成感が気持ちいい!」「穴場の低山にも登ってみたい」……。そんなガッツリ派にぴったりのプチ縦走プランを編集スタッフが実践!
山に温泉に…楽しみいっぱいの縦走旅
登山ガイド 大島わかなさん
新潟県在住。富士登山がきっかけで山が好きになる。山小屋バイトを経てガイドの道へ。テント泊縦走から沢登りや山スキーまで楽しむ。登山ガイドステージⅡ。
ドイターのガイド42+8 SLを愛用。雨具、ライト、防寒着、救急セット、ツエルトなど装備はすべて防水バッグへ。ガイド登山時はロープも持つ。
編集 オガワ
いつもは2〜3時間歩く"のんびり派"のハイキングを楽しむ。今回の山行でガッツリ派ハイカーへの躍進を遂げるべく、意気軒昂!
ロウロウマウンテンワークスのバンビを愛用。小物類はパーゴワークスのバッグに収めて前掛けに。長丁場なので装備の軽量化を心がけた。
登ったのはこちら!
菱ヶ岳(ひしがたけ)&五頭山(ごずさん)
コースタイム:7時間30分
標高:973.5m(菱ヶ岳)、912.5m(五頭山)
総距離:約12㎞
茶屋:なし
温泉:あり
神社:あり(各山麓の周辺)
乗り物:なし
五頭連峰
阿賀野市と阿賀町に跨がり、北から松平山、五頭山、菱ヶ岳、大蛇山、宝珠山と続く標高1,000m以下の山塊。いずれのコースもいわば"ガッツリ"だ。入念な計画と十分な装備で登ろう。
ゆっくりでも、しっかりと足を置いて同じペースで歩いていくことが大切
新潟県阿賀野市と阿賀町に広がる山塊、五頭連峰。その稜線は標高1000mに届かないものの、年間を通じて登山者の姿がある人気の山だ。五頭連峰は、多彩なコース取りが可能だが、いずれの山頂も登山口から目指そうとすると、優に2〜3時間を要する(宝珠山は石間口から約1時間)。ガッツリ派には最適な山域でもある。そして麓には出湯温泉、今坂温泉、村杉温泉という源泉が異なる3つの温泉。山登りと温泉はやはりセットで味わいたいもの。
今回は新潟を拠点に活躍する登山ガイドの大島わかなさんを迎え、編集オガワがガッツリハイカーになるべく五頭連峰にトライすることにした。コースは、村杉温泉の登山口から出発して菱ヶ岳と五頭山の山頂を踏み、出湯温泉へ下山する二座&二湯の欲張りプラン。登山前日は村杉温泉に投宿して全国有数のラジウム温泉で英気を養った。
登山当日。7時間の長丁場を見据えて早めに出発することに。村杉温泉の中心地から県道536号を2kmほど山側へ進んだ菱ヶ岳登山口から入山する。ここには20台は余裕の広い駐車スペースあり。トイレはないので事前に必ず済ませておこう。道中、水場があるのだが汲めないことも想定して飲み水は多めに持った。身支度を整えて、いよいよ出発。行ってきま〜す!
大島さんを先頭にやおら進む。
「こんなにゆっくりでいいんですね。つい早足になりがちで」
と、驚き気味にオガワがいう。
「まだ体が慣れていませんから、登りはゆっくりで大丈夫」
笑顔で応える大島さん。ゆっくりでもしっかり足を置いて同じペースで歩いていくことが大切だ。じつは取材当日はまだ残暑厳しいころ。この日も新潟県内には熱中症警戒アラートが発表されていた。そんなこともあり暑さでペースは終始上がらない。結果的には大島さんが作るゆっくりの一定ペースが、疲労最小限であったと何より実感する。
山中には「三合目」「四合目」「五合目」の看板があり、励みにもなる。四合目あたりからブナの林になり、森が明るくなってきた。急勾配な所もあるが、道は歩きやすい。「六合目」は少し開けて菱ヶ岳の上部も露わに。ここまでで登山口から2時間弱。
「まだあんなにあるのか〜(笑)」山を見上げたオガワがぽつり。早くも五頭連峰の深さを実感している様子。「さ、行きましょ〜」大島さんの声に押されて再び歩き出す。ひとつ目の水場の笹清水は、沢に枯葉が堆積していてわずかに流れる程度だった。暑さもあり清水に期待したが残念。笹清水を後にし、山頂を目指す。徐々に勾配がきつくなり、頂が近いことを感じる。そして、ようやく山頂に到着。着いたぞ〜。
「ああ、やっと着いた」。誰となく声に出し、顔がほころぶ面々。稜線の登山道に出ると福島県境方面に聳える山々を遠くに望むことができ、なかなかの眺めだ。よし、次なる五頭山へ。稜線上は背丈以上の木々に囲まれていて、微風のこの日は暑さが応えた。だが、五頭山山頂の少し手前で龍神清水の看板が!
「は〜生き返る〜。うまい〜」
沢水を全身で味わうオガワ。彼のバテる姿を想定(予定?)していたが、意外にも快調だ。大島さんの導きが良かったのだろう。
五頭山山頂に到着。ここでは腰を据えて休み昼食の時間を取った。他に登山者の姿はなく、音もない。山頂はなんとも静か。
五頭山頂の先は一ノ峰から五ノ峰までを巡り、一路2時間強の道のりを出湯温泉へ。各峰には五頭山を開山した空海が勧請した仏様が見守ってくれていた。
「本当にガッツリの山でしたね」
と大島さんが振り返る。プロも納得のガッツリ低山五頭。空海様、いい修行になりました!
Start!
7:30
村杉温泉にほど近い登山口から出発!
菱ヶ岳登山口からスタート。登山届カードもここで記入して出せる。気合い十分に、いざ出発。
登り始めは樹林が濃く視界が開けないが、1時間ほど歩くと隙間から稜線が見えてきた。
ブナの林を抜けていく。木漏れ日と吹き抜ける風がなんとも心地よく、歩きやすい道が続く。が、この後、少し急な登りが待っていた〜。
アァ~、暑い
待ってよー!
9:10
町を見下ろす六合目(北山)に到着
樹林帯がパッと開け、青空が眩しい六合目。遠くには住宅地と田んぼ。黄金のパッチワーク、さすが米どころ!
六合目を後にさらに進むと、夏道と冬道の分岐に差しかかる。山腹を巻く夏道のほうへ。
「笹清水」という水場がある。この日は微量な流れ。あまり期待しないこと。
10:40
菱ヶ岳登頂、キアゲハがお出迎え
3時間ほどでようやくひとつ目の山頂、菱ヶ岳に到着。山頂には道中見かけなかったキアゲハたちが乱舞していた。出迎えてくれているようでうれしい。
nice item
手作り虫よけスプレー
大島さんのお手製スプレー。ハッカ油や無水エタノール、精製水などで簡単に作れる。「好みの香りや配合で作れるのでおすすめですよ〜」
nice item
吸汗アンダーウェア
当日は残暑厳しい気温。大量の汗は必至。編集オガワが仕込んでいたのはミレーのドライナミックメッシュ。「かなりドライ感がある!」
五頭山に向けて歩を進める
菱ヶ岳での休憩もそこそこに出発。そう、先は長いのだ。稜線に出ると周囲の山々が見えてきた。遠く飯豊連峰も望む。
山並みを見渡す場所にお誂え向きのベンチ。高度感のある景色にしばし見入る一行。
五頭山の手前にある「龍神清水」。冷たい水で喉を潤し、汗を拭う。夏も期待できる水場。
13:00
五頭山山頂でランチタイム
ふたつ目の頂となる五頭山に到着。ここでは十分に休憩をとり、昼食も湯を沸かして作る。ガッツリ派はご飯もガッツリとね。
13:40
一ノ峰からニノ峰〜五ノ峰へ
一ノ峰には観世音菩薩と鐘。ふたりで鐘を鳴らそうとするオガワ。それ結婚式みたいになっちゃうでしょ!
ニノ峰
薬師如来
三ノ峰
不動明王
四ノ峰
毘沙門天
五ノ峰
地蔵菩薩
五ノ峰では越後平野が眼下に広がる。行動時間も6時間を超え疲労の色が見え始めた。下山は気を引き締めて。
Finish!
15:20
五頭山登山口に到着、縦走達成!
最後は沢沿いを歩き五頭山登山口に至った。「やった〜到着」。登山口から300mほどで砂郷沢駐車場着、公衆トイレもある。
nice item
双眼鏡
軽量で持ち運びしやすい小型の双眼鏡。大島さんの愛用はオリンパスのもの。「鳥など見つけたときにサッと出して確認できていいですよ」。
nice item
スマートウォッチ
オガワ愛用のエイスースは、GPSと高度計はもとより距離やペースも記録し心拍数もキャッチ。「自分の状態が視覚的に把握でき便利」。
登る前と登った後にひとっ風呂。天然温泉を味わう
出湯温泉共同浴場
住所:新潟県阿賀野市出湯810-1
営業時間:6:00〜20:00
料金:大人¥250、子供(小学生以下)¥150
定休日:なし
地元民もご用達。弱アルカリ性単純温泉掛け流し。
村杉温泉共同浴場
住所:新潟県阿賀野市村杉3946-6
営業時間:7:00〜20:00(土日祭日7:30〜20:30)
料金:大人¥300、子供(小学生以下)¥200
定休日:なし
全国有数のラドン含有量を誇る。別名「子宝の湯」。
ガッツリ派向け低山の選び方
1手始めは歩行時間5時間以下の山からトライ
2累計高低差は800mくらいを目安にしよう
3距離は7~10㎞でコースを考えよう
※構成/須藤ナオミ 撮影/小倉雄一郎