今年に入り直営店を2店舗オープンし、定番ダウンジャケットの新モデルも好評を博すなど、破竹の成長を見せるNANGA。日本が誇るダウンメーカーの知られざるサクセスストーリーに迫った!
大人気「NANGA」のヒストリーとは
ナンガ・パルバット(8126m)──それは、過去に多くの遭難者を出していることから「人喰い山」という異名を持つ、恐ろしくも険しいヒマラヤ山脈に属する山。
いまや高品質ダウンメーカーとして確固たる地位を築いた「NANGA」のブランド名は、そんな険しい山の名前に由来する。そこには、「困難だからこそやってやろう」──という、創業者・横田晃(文中敬称略)の熱い思いが込められていた。
ナンガ社の前身となる横田縫製(晃の父が創業)は、地場産業である近江真綿を使った布団縫製の下請け工場として創業。その品質が認められ、後に寝袋作りを開始。これが現在のNANGAの原点となった。
’95年には社名をナンガに変更。大手アウトドアブランドなどからのOEM(委託者製造)が殺到し、PB(プライベートブランド)で寝袋の製造も始めた。
そんなナンガの強みは、長年にわたるOEM生産で培った“企画力”。これが、同社が持つ既存の縫製技術や素材知識と相まって、優れた品質のダウン製品を生み出し、ブランド力を高めていったのだ。
象徴的なのが、防水透湿性を持つ独自の表地素材「オーロラテックス」の採用。’99年、湿気を帯びると保温性が低下するダウンを濡れから守ることができる、当時としては画期的な寝袋を開発した。
寝袋の生産に加え、2003年には、いまやブランドのアイコン的アイテムとなった「オーロラダウンジャケット」の販売を開始。自社ブランド初のダウンジャケットの登場で、同社は急成長を遂げることとなる。
’17年には海外のアウトドアショーに出展するなど視野を世界に広げていった。また’21年には自社研究機関を立ち上げて最高峰のダウンギア開発をスタートさせた。
今年に入り京都、仙台と店舗を増やし全国に直営店が8店舗と拡大。
布団の下請け縫製に始まり、一躍人気ブランドへ。その原動力こそ、拒まれてもナンガ・パルバットに挑戦し続ける登山家同様、いいモノを作り続けるという〝不屈の決意〟なのだ。
BRAND HISTORY
1941 「横田縫製」創業
近江真綿を使った敷き布団製造の盛んな地、滋賀県米原市で下請け製造業をスタート。
1990 「有限会社コスモス」設立
2代目社長・横田晃が縫製工場を法人化。
1995 「株式会社ナンガ」誕生!
11月1日、社名を変更。
1996 寝袋の製造をスタート
国内ショップからのOEM製造依頼が殺到し、PB(プライベートブランド)として寝袋製造を始める。
2003 初代「オーロラダウンジャケット」が完成!
表地「オーロラテックス」を使用した、軽量コンパクトなダウンジャケットを開発。
2009 新社長就任
2001年に入社し、営業面で優れた実績を残した横田智之(初代社長の孫)が3代目社長に就任。ブランド大躍進の起爆剤となる。
2015 初の直営店「NANGA SHOP TOKYO」がオープン!
東京・目黒区にナンガ初の直営店を設立。翌年には、同ショップで自社展示会を初開催。
2017 海外アウトドアショーに初出展
米国最大のアウトドア見本市「OUTDOOR RETAILER SHOW」
(ユタ州ソルトレイクシティ開催)に出展。
翌年から米国のほか、アジア市場にも参入。
2019 ベトナムでの生産をスタート
量産体制を整えるため、厳しいQC(クオリティーコントロール)のもと、一部製品をベトナムで製造することに。
2021 独自研究機関「NML」設立
素材や構造を見つめ直すために、自社研究機関「NANGA MOUNTAIN LABORATORY」をスタート。同年、NMLが開発したハイエンドな寝袋「LEVEL8」を発表。
羽毛布団「GOOD SLEEPING」デビュー!
ナンガの原点回帰の羽毛布団シリーズ発表。
2022 東京・原宿に、旗艦店「NANGA SHOP HARAJUKU」オープン!
欧州の展示会「WELCOME EDITION」に出展
2023 「MOUNTAIN PEAK SERIES」デビュー!
プロ登山家の監修によるダウンギア開発をスタート。
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