高品質のカギは一貫した「自社完結型」の生産体制にあり!
もの作りの匠が集う本社工場に潜入
羽毛製品が人気のナンガは高いクオリティーを誇る。創業以来培ってきた、繊細なもの作り。その一部始終を見ていこう!
2F
縫製、ダウン封入の生産部
縫製、ダウンの吹き込みなど、主要生産ラインは、2階フロアに集約されている。
1F
生産管理、EC対応、販売部、総務部など
1階には、事務系の部署のほか、生地を裁断する部門と、ボタンなどのパーツ保管庫がある。
日本百名山 伊吹山の麓にあるよ~
従業員は約130人。ナンガは、伊吹山を望む滋賀県米原市内郊外に本社を置く。現在の社屋は2012年に建てられた。1941年に横田縫製として創業した場所からわずかに移転したが、地域密着にこだわり今も米原で生産を続けている。
2階建ての社屋の1階では、事務や生産管理のスタッフ、ECや修理に対応するオペレーターが働く。1、2階にある生産部門では、東京事業所で企画、デザインされた製品の試作のほか、年間約1万3000点の生産を担っている。
生地の裁断は1階で行なわれる。裁断する際に、できる限り端切れが出ないようにコンピュータ上で型紙を配列し、大型の機械でカット。裁断した生地には、ボタンの位置や縫い合わせる場所を手作業で描き記すチャコ入れが行なわれる。
裁断された生地は2階へ。縫製工程は、ジャケットと寝袋にゾーンを区切り、大勢の縫製職人が、丁寧にミシンを操っていた。ここで使われている工業用ミシンは約65台。ほかに特殊加工をするミシンが8台ほどある。
ある程度縫製が進むと、ベテランの職人が、指示どおり縫製されているかをチェック。OKが出た製品にはダウンが吹き込まれる。専用の機械を使い、グラム単位でダウンを計量・封入する高度な作業が行なわれる。
その後、ファスナーやボタンなどが取り付けられ、縫製が完了した製品は、ナンガ長岡ロジスティックセンターに運ばれる。そこには検品部門があり、タグやボタンの取り付け位置のわずかなズレなどをベテランの職人が、細部まで厳しく検品する。異物の混入を防ぐため、金属探知機で2度検査。すべて合格したものだけが、包装され、商品として出荷される。
高性能な機械により量産される製品が主流の今も、ナンガは長年培ってきた、職人の手仕事と熱意でもの作りを続けている。
ナンガ製品ができるまで
#1 生地を裁断する
生地を無駄にしない緻密な作業
この日は、オーロラライトダウンジャケットの生産が行なわれていた。生地を裁断する前に、型紙の配置を調整。
貴重な生地を無駄にしないため、端材が出ないよう狭い間隔でパズルのように型紙を並べてカットする。
棚に積まれたオーロラテックス。自社で一貫生産しているので、別注品にも柔軟に対応できる。
生地を広げスイッチを押すと、オートカッターが動きだす。1回でジャケット2枚分の生地をカットするという。
#2 型紙の情報を転写
型紙に記された縫製のための情報は、職人の手で一点一点、生地に描き写される。
#3 職人がミシンで縫製
ミシンを使いながら、ほぼ手作業のような工程を重ねて、緻密に製品が作られていた。
最高峰モデルは4時間半かけて生産!凝ったデザインにもきっちり対応
大勢の職人が働く生産部門の中枢。ひとつの製品が、人の手から手へ受け渡され、徐々に完成形へと近づいていく。
#4 製品の要となるダウンを封入
自社開発の機械を使いグラム単位で正確に!
青い箱の中に入れられたダウンを専用の機械で吸い上げ、重量を測りながら正確に製品に吹き込む作業。
封入の出番を待つ上質なダウンが入った袋。1袋に10㎏ものダウンが入っている。
#5 パーツの取り付け
ボタンやファスナーなどのパーツは、1階にある棚からピックアップして、生地と一緒に2階に運ばれる。
職人の感覚で最適な位置にボタン付け
ボタン取り付け専用の機械。スナップボタンは、職人の経験による感覚で微調整し、スムーズに開閉できる位置に取り付けられる。
#6 検品作業は別倉庫
ナンガ長岡
ロジスティックセンター
本社から車で10分ほどの場所にある2019年に建てられたナンガ長岡ロジスティックセンター。この倉庫内に検品部門がある。
検品中にも針やハサミを使うため、検品前、検品後の2回、金属探知機に通して異物がないかを確認。徹底した安全対策が施されている。
金属探知機を2回通して安全対策
縫製が完了した製品は、ここで検品される。縫製が悪いものなど、少しでも問題があれば本社に戻して作り直される。
#7 包装、梱包して出荷
寝袋を巻く機械も自社開発
分厚いダウンの寝袋を瞬時に巻きあげる自社開発の巻き取り機。これを使えば、数十秒で寝袋を袋に入れられる。
タグ付け、包装が終わった製品は、箱詰めされて倉庫に保管。ここから各地の物流拠点を経由して店舗に届けられる。
※構成/山本修二 撮影/奥田高文
(BE-PAL 2023年11月号より)