200km以上のトレイルを誇る国立公園「ガティノパーク」の魅力
カナダの首都、オタワ。国会議事堂の横を流れるオタワ川を越えると、そこはフランス語圏のケベック州だ。政府関係の建物はケベック側にも広がっているが、そこから車で10分ほど走るだけで広大な敷地と自然を誇るガティノパークにたどり着く。
敷地面積は361平方キロメートルで、熊やオオカミも住む場所だ。183kmに渡るサマートレイルと、100kmほどの非公式のトレイルがあり、冬はダウンヒルスキーやクロスカントリースキー、スノーシューのトレイルが整備されている。
年間260万人が訪れる人気の場所だが、特に賑わうのは美しい紅葉シーズン。カナダの紅葉は鮮やかな赤い楓の葉から、オレンジ、黄色と揃っていて、グラデーションがとても美しい。
1年中いつ訪れても美しい自然を全身で感じられるガティノパークだが、紅葉の季節もやはり行かずにはいられない。今回はガティノパーク内のいくつかのトレイルを巡りながら、その広大さと自然の美しさをお届けしたい。
オタワ側からガティノパークに行くには高速道路を使う。ケベック側に入ってすぐにガティノパークなので、走りながらもすでに紅葉している木々が見える。その景色を見るだけで、その先でどんな景色が見られるのかとワクワクしてくる。
トレイルの難易度は3段階に分けられていて、難易度だけではなくそれぞれの魅力があるので、その時々の気分によって選べるのは贅沢な楽しみだ。また、ガティノパークには50を超える湖がある。水辺の風景や、水面に映る景色が好きで、水のあるトレイルを探していろいろ行ってみたりもした。
そんな中から、オタワから気軽にアクセス出来て、美しい景色が広がるトレイルをいくつか巡ってみたい。
湖の周りを1周できるピンクレイク
まずは、湖の周りを1周できる2,3kmのトレイルがあるピンクレイク。名前の由来は、水がピンクなのかと思いきや、そうではなく、この辺りの土地を所有していた人の苗字が「ピンク」だったからなのだそうだ。ピンクの湖だったら面白いのに…とガッカリすることなかれ。水の色は美しいターコイズブルー。
水深13mのこの湖は水中の酸素が多く、この色に見えるらしい。駐車場がすぐ横にあり、美しい湖面に映る紅葉の景色を求めて人が集まる人気スポットだ。
簡単そうに見えて、3段階で真ん中のレベルに振り分けられているのは、トレイル中に階段などがあって高低差があるからだ。駐車場から湖に降りて行く途中や、トレイル中に設けられている展望スポットから見る湖はとても美しい。
トレイルの幅はそんなに広くないが、みんな気持ちよく笑顔で譲り合うのは、さすが親切な人が多いカナダだ。野生のシマリスに出会えた時もあり!かわいくてついつい足を止めて見とれてしまう。大型のリスはカナダの冬でも冬眠しないが、シマリスは冬眠する。この時期は冬眠の準備で、いつもにも増して忙しそうに走り回っているかわいい姿が見られる。
元総理の別荘もあるウォーターフォール & ローリオトレイル
このトレイルの始まるところには、3期に渡りカナダ最長の総理大臣を務めたウィリアム・ライアン・マッケンジー・キングの別荘がある。今では期間限定で内部見学ができたり、カフェとして営業していたり、イベントが開催されることもある。広い庭園部分は芝生が整備され、ピクニックをしたり、のんびり過ごす人も見られる。
ここからは高低差のある4,5kmのWaterfall and Lauriault トレイルが始まる。このトレイルは私のお気に入りのトレイルだった。
その1番の理由は、ゆっくりできるテーブル付きのベンチが湖畔にあること。カナダにいてもトレイル散歩のお供はやっぱりおにぎりだ。湖畔のベンチは私たちのおにぎりスポットだった。湖の水はとても澄んでいて、たくさんの生き物が住んでいる。
おたまじゃくしにカエル、ザリガニ、魚などがいて、生き物観察…だけではなく、枝でザリガニを突いてみたり…など、子供の頃に戻ったような遊びをしてみたこともあるが、大人になってもやはりそのような自然との触れ合いは楽しい。湖面に映る景色、特に紅葉の時期は本当に美しい。
そのおにぎりスポットからは、結構な登りになり、木々の間を抜けて行くと絶景が広がるポイントもある。
ちょっと広くなっているので、みんなの人気休憩スポットで、ベンチや岩の上などに座って、景色を楽しみながら休憩したり、記念撮影などをし合って過ごす場所だ。でも、ここはまだまだトレイルの中間地点、下ったり、登ったりしながら、トレイルはまだ続く。
次の見どころはトレイルの名前の通り、「滝」だ。水の量は季節によっても変わるが、やはり水のある景色は絵になるので、ここでもやはり景色を見ながら休憩する。
そこからはその滝に流れ込む小川に沿ってトレイルが続く。小川はトレイルの左側から右側に移動するので、その上にかかる橋があったり、小川の上に倒れている木もあり、目の前に広がる景色に飽きることはないトレイルだ。
湖に映る美しい景色が広がるフィリップ湖
湖面に映る美しい景色を求めて行ってみたのが、このトレイル。湖に沿ってある遊歩道のような感じのトレイルで、名前ではなく番号で管理されている区間だ。1,76平方キロメートルの面積の湖には、ビーチやキャンピンググラウンドも整備されているほか、ボートレンタルもある。
ボートはカヤックやカヌーなどモーターのついていないもののみで、静かな環境が保たれ、時間がゆっくり過ぎて行く。写真のカヤックに乗って、この景色の中にいるのを想像しただけでカナダの大自然を感じられることだろう。
湖沿いのトレイルの近くでもテントを張ってキャンプが楽しめる。歩いている時に、テントが張ってあるのを見かけた。ランチの用意をしている途中なのか、クーラーボックスなどが用意されているが、人はいない。
そこへ野生のアライグマがやってきて、クーラーボックスを漁って食べ物を持って行った。手慣れたもので、あっという間だった。湖畔にはビーバーが倒して、枝だけ持ち去られた木もそのまま残されていたりもする。目の前に広がる広大な景色も含め、カナダの自然を色々な意味で感じられる場所だった。
地球の大きさまで感じられるキングマウンテントレイル
そして、最後はオタワ渓谷の断崖の最高地点、300mまで上がれる1,8kmのキングマウンテントレイルだ。3段階中、難易度が最も高いとされている。
だが、挑戦するだけの価値がある絶景が楽しめる。地平線が見える景色を見ると、地球の大きさまで感じられるのは私だけだろうか。紅葉の時期に行くと、全てが輝いて見える景色も広がる。ところどころにベンチもあるが、岩の上で休憩している人たちもいる。
ゴミなどは全く落ちていないし、人々は笑顔で挨拶を交わす。首都にとても近いのに、大自然の中に入り込んだ感覚を味わえる場所があるのはとても素晴らしい環境だ。
日本の桜の時期よりは長いが、カナダ首都圏の紅葉も楽しめる時期はそんなに長くはない。色付きはじめた葉っぱが太陽の光で輝く天気に恵まれる日は、紅葉を楽しみに歩きに行きたくなったものだ。
雨や風で葉が落ち、カサカサという音を楽しみながら歩いたり、大量の落ち葉の中に埋もれたりできる日々もアッという間で、紅葉が終わる前に雪が降ってきて長いオタワの冬が始まる。カナダの紅葉には、そんな儚い美しさが持つ独特の魅力がある気がする。
Gatineau Park – National Capital Commission (ncc-ccn.gc.ca)