大西洋に浮かぶ「常春」の火山島
ポルトガル本土から1000kmほど、アフリカ大陸から西へ700kmほど離れた大西洋にある「マデイラ島」は、海底4000メートルからそびえる巨大な火山島。
マデイラ島のマデイラとはポルトガル語で「木」のこと。この島は一年を通して温暖で、名前の通りいつも木々の緑や美しい花々に彩られていることから「大西洋の真珠」とも称されます。そんなマデイラ島へはポルトガルの首都リスボンをはじめ、マドリッド、ローマ、フランクフルトなど欧州の複数の都市から直行便があり、たくさんのリゾート客が訪れます。
美しい花々、トロピカルフルーツ、マデイラワイン、シーフード、愛らしい三角屋根のお家、ヨーロッパで一番の高さという崖の上の展望台などなど見どころ満載の島なのですが、特にアウトドア好きならきっと惚れ込んでしまうと思います。現に世界中の自然の中を旅してきた私の友人夫婦もパンデミック中にマデイラ島に移住してしまいました。
今回は、マデイラ島がアウトドア好きを魅了する理由を4つ、挙げてみたいと思います。
1:世界遺産の原生林トレイル
まず1つ目は世界遺産「マデイラ諸島のラウリシルヴァ」の中を歩けること。
「ラウリシルヴァ」とは、照葉樹(月桂樹のような常緑で厚く光沢のある大きな葉を持つ木)の原生林のことです。
4000万年前といったはるか昔、南ヨーロッパはラウリシルヴァで覆われていたそうです。しかし250万年前に始まった氷河期にラウリシルヴァはヨーロッパ大陸から消滅してしまいました。ところがマデイラ島には、その氷河期以前の太古の原生林が現在も残っているのです。同じく大西洋上のアソーレス諸島やカナリア諸島でもこの原生林が見られるものの、マデイラ島はその中でも最大規模で状態も良いことから、270平方kmというマデイラ自然公園のうち150平方kmが世界遺産に登録されているそうです。
この神秘的な森林は、海から流れ込む雲を中央部の山々が防波堤のようにせき止めることで生まれる雲や霧から水分を吸収し生きながらえてきたそうです。
そんな静かなラウリシルヴァでの森林浴は最高です。特に霧に包まれることの早朝は人気です。ただ、夏場でさえもかなり気候が下がるそうなので、森の中で迷わないように注意しましょう!
2:360度の雲海が楽しめる火山島の山頂
2つ目は、火山島の山頂からラウリシルヴァを支えてきた雲海を眺められることです。
「ピコ・ド・アリエイロ(Pico do Areeiro)」は標高1,818メートルのマデイラ島で最も高い山のひとつ。こちらはクルマでもアクセスできるため、だれでも気軽に山頂へ辿り着けます。そしてそこから標高1,851 メートルの「ピコ・ダス・トヘス(Pico das Torres)」、1,862メートルと最も高い「ピコ・フイヴォ(Pico Ruivo)」 へのハイキング(PR1 Vereda do Areeiro)も可能です。
雲海が現れるのは、早朝か夕方。ここからハイクへ出発するなら当然早朝を狙いましょう。
私たちは夕暮れ時に出かけたのですが、360度、見渡す限りの分厚い雲海に圧倒されました。しかも太陽が沈むにつれ、空の色が変わっていく様子は「天国ってこんな?」と思ってしまうような美しさ!
ちなみに雲海はよく晴れた暑い日の夕方にたくさん現れるそうです。
なお山頂は風が強く、太陽が沈み始めるとかなり気温が下がりますので、お出かけの際は防寒着をお忘れなく。カフェやトイレなどの設備も日没前に閉まっていました。また、帰る頃には真っ暗になっていたので、マデイラ島の細い山道の運転にはくれぐれもご注意ください!
3:全長2000km以上の灌漑水路「レヴァダス」を辿るトレッキングコース
3つ目は、島内の斜面や渓谷に張り巡らされた全長2000キロ以上という灌漑水路「レヴァダス」を辿るトレッキングコース。
マデイラ島は小さな島ですが、海流、風、中央の山々などの影響で南北、高低で気候が異なります。ラウリシルヴァのある北側は雨が多くひんやりしているのに対し、人口の大半が暮らす南部は乾燥しています。そこで人々は北部の豊富な水を活かすために長い年月をかけて「レヴァダス」と呼ばれる水路を島全体に張り巡らせたそうです。
島内にはこの水路をたどるトレッキングコースがたくさんあります。
私たちは、「PR-9 Levada do Caldeirao Verde」というレヴァダ沿いのトレイルに挑戦してみました。滝をゴールに往復する約13kmのコースです。4つのトンネルをくぐるのですが、トンネル内は真っ暗なので懐中電灯(携帯電話でも大丈夫です)が必要です。かなり天井の低い場所もあるので、頭をぶつけないように注意してください!また、季節によってはぬかるみや水たまりの中を歩かなければいけないので、防水のハイキングシューズが欲しいところです。
道中の眺めもすばらしいですが、ゴールの「緑の大鍋(Caldeirao Verde)」という名前の滝と湖は美しく、歩いた甲斐があった!と思わせてくれるはずです。湖の水温はかなり低いですが、記念撮影のために滝の下の岩まで泳ごうとする人も少なからずいました。私たちが見ていた間に成功したのは若い男性1人だけでしたが……。
ちなみにトレイルヘッドには、駐車場、トイレ(有料)、それにちいさな美術館やカフェもあります。ハイキング後の生ビールは最高です!
4:岸壁を使った天然プール
最後は海水と岸壁を利用した天然プール(Piscinas Naturais)です。
マデイラ島は火山島らしく岸壁に囲まれているのですが、その地形をうまく利用した天然プールがいくつもあります。
最も有名なのはポルト・モニスの天然プール。設備も整っていますが、その分、夏の週末ともなるとかなりの人手で駐車できない、なんてこともあります。
ポルト・モニスがあまりにも混んでいたので、私たちが訪れたのはセイシャルの天然プール「ポサ・ダス・レズマス(Poças das Lesmas)」。溶岩に囲まれた海水のプールがいくつもあります。こちらは静かで、より自然を身近に感じることができました。
これらの天然プールは、潮の干満によってプールの状態は変わります。また、高波だと危険なため、閉鎖になることもあります。
南部のフンシャルの側にある天然プール(Piscinas Naturais da Doca do Cavacas)にも出かけたのですが、その日は「高波のため、臨時休業」で入れませんでした。ちなみにこのプールの近くにある洞窟を利用したビーチへと続くトンネル(Túnel das Poças do Gomes)は、途中で海を見下ろすこともできて、一見の価値がありますよ。
以上、アウトドア好きにマデイラ島をおすすめする4つの理由でした。