ストーブStoveの歴史
’90年代までは欧米製が全盛。21世紀は日本製が大躍進!
アウトドア用ストーブの歴史を語るうえで欠かせないのは、やはりプリムスのパラフィンストーブ。北極探検家フリチョフ・ナンセン、人類初の南極点到達を果たしたロアルド・アムンゼン、そしてエベレスト初登頂を果たしたエドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイ──。これら冒険家たちの偉業達成に貢献したのは、プリムス製のストーブだった。その完成度の高い構造とデザインは、ホエーブスやマナスルなどにも模倣されるほど優れていた。
時代は飛んで、’73年、米国MSRによる分離型ストーブの登場も、センセーショナルなできごとだった。それは、燃料とバーナーが別体になっていて、低重心で安定性が良く、雪を素早く溶かせるほどの火力を発揮。のちに登場してくるガスの分離型ストーブのヒントにもなった。
そして、日本人として声を大にしてアピールしたいのが、’98年に登場したスノーピークの「ギガパワーストーブ〝地〟」の誕生である。シャツの胸ポケットにも入るコンパクトさで、90gを切る軽さを実現し、翌年からは米国市場にも進出。
さらにはSOTOが、連続使用や低温時に起こるガス缶の内圧低下に影響されにくく、マイナス5度Cでも常温時と同様に高火力で燃焼するマイクロレギュレーターという機構を開発。米国開催のショーで発表したときには、他社の開発担当者が見学のためにブースを訪れたという。それほど画期的だったのだ。
いまや欧米のアウトドアショップにも日本のストーブが売られるようになったことは、とても誇らしいことだ。
1849
世界初のポータブルストーブ誕生!
フランスの料理家、アレクシス・ソイヤーが発明し、長年にわたり英国軍で使われていた。
1880’s後半
パラフィンストーブ開発
スウェーデンの発明家、ヴィルヘルム・リンドクヴィストが開発した煤の出ないストーブ。
1892
プリムス創設
1899
オプティマス創設
1918ごろ
ホエーブス・ストーブ誕生
オーストリア軍の要請で生産開始。かつては日本でも多くの山岳部や登山隊に使われた。
1938
プリムスがLPGストーブの開発に着手
プリムスがLPガス器具の開発を開始。写真は’60年に日本に紹介されたガスストーブ。
1942
コールマン、米軍にG.I.ポケットストーブを納入
第二次世界大戦中、連合軍の北アフリカ侵攻に向けて製造された小型ストーブ。
1953
プリムス製ストーブを携行したヒラリー&テンジンがエベレスト初登頂に成功!
氷点下の高所や極地でも機能することが証明され、世界中の冒険家に愛用された。
1973
MSRが、世界初の分離型ストーブ「Model9」を開発
少しでも早く雪を溶かして飲料水を作り、登山者の安全を守るために開発された。
1994
世界初のチタンバーナー誕生(プリムス)
本体重量わずか95g。たたむと厚さが25㎜! 燃焼器具メーカーの古豪、面目躍如の一作だ。
1996
世界初の触媒燃焼ストーブ発売(キャンピングガス)
強風下でも影響をほとんど受けることなく、安定して燃焼する触媒燃焼構造を採用。
1998
世界初のメタルファイバー採用ストーブ「P-121」登場(プリムス)
多孔性のあるメッシュ状のバーナー孔を持ち、ガスと空気がよくミックスされる構造を採用。
1998
(当時)世界最軽量コンパクトなガスストーブ誕生(スノーピーク)
90gを切る軽さで超コンパクト。翌年には米・バックパッカー誌の賞を授与されたモデル。
2003
パーソナルクッキングシステム「ジェットボイル」誕生!
バーナーの熱を素早くクッカーに伝えることで、超高速ボイルを可能にした画期的システム。
2009
SOTOがマイクロレギュレーターストーブを発表
外気温に左右されにくく、マイナス5度Cでも火力が低下しない機能を独自技術で搭載。
2011
SOTOがプレヒート不要のガソリンストーブを発売
ガソリンストーブのマスト儀式であったプレヒートを必要としない革新的モデル。
※構成/坂本りえ
(BE-PAL 2023年12月号より)