冬も元気にアウトドア! といきたいところだが、さすがに暖かい時季ほど行動的にはなれないもの。そんなもどかしい気分を補完するのが、読書。過酷な旅、絶海の孤島での自然調査をつづった良書を2冊紹介!
BOOK 01
1円も持たずに旅をする。愛犬を連れ自らの荒野へ
『北海道 犬旅サバイバル』
服部文祥著 みすず書房
¥2,640
50歳を目前に肉体が下降線をたどり始めて「自分がゆっくり死んでいる」と意識させられた著者。本当にやりたいことは何かと自らに問いかける。漠然とした荒野への憧れ、思い浮かんだのは、鉄砲を肩に犬と共に荒野をどこまでも歩く姿だった。だが、日本に著者が求めた荒野は存在しない。そこで無銭での旅という縛り(閃き?)で擬似的な荒野を作りだすことに。
愛犬を連れて向かったのは北海道。宗谷岬から襟裳岬までの南北約700㎞を、なるべく分水嶺をなぞるように縦断する最大3か月以内の旅だ。事前に米などは立ち寄る予定の山小屋にデポしておき、おかずはシカなどを撃って現地調達する。野を越え山を越え、猟犬として成長した愛犬と共にシカを追いつつ南下する日々。近くに人家がないような場所でも自由に野営したり火を焚いたりするのは容易ではないと著者の旅を通じて感じさせられる。
疑似的荒野ではさまざまな人びとにも出くわす。退去させられたりもしているが、コンパスを借りたり、クズ野菜を貰ったり。時には忘れ物のお菓子を拝借。夫が著者のファンだとサインを求めてきた女性には率直に食べ物を乞う。図太い。明け透けにサバイブする著者の姿は妙に清々しい。
BOOK 02
絶海の孤島の自然調査、専門家たちの奮闘記
『無人島、研究と冒険、半分半分。』
川上和人著 東京書籍
¥1,760
東京の南方1200㎞の位置にある南硫黄島。小笠原諸島に属し、一度も人が住んだことのない絶海の孤島だ。本書は原生の生態系が維持されているこの島に自然環境の調査に入った専門家たちの記録。これまで調査が実施されたのはたった3回(本書を入れて)。冒険的要素を多分に含んでいる調査に挑む理系集団の動向を、ユーモラスに鳥類学者の著者が描く。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2023年12月号より)