ポルトガルの11月11日は焼き栗の日
ポルトガルの秋の風物詩といえば、栗。街のあちこちに現れる焼き栗販売の屋台に、秋の訪れを感じる人も少なくありません。
11月11日「サン・マルティーニョ(São Martinho)の日」には、焼き栗を食べてお祝いする「Magusto(栗祭り)」が開催されます。このサン・マルティーニョ(聖マルティヌス)はキリスト教の聖人で、各地に彼にまつわる伝説が残っているようです。ポルトガルでは次のようなお話があります。
「嵐の中を家路に向かう騎士マルティーニョは道中、施しを求める乞食に出会います。何も持ち合わせていなかった彼は、自分の羽織っていたマントを剣で半分に切り、片側を乞食に与えました。すると嵐がピタリと止んで、太陽が燦々と輝き出したのです……」
そんな伝説を持つサン・マルティーニョの日は、気持ちのいい秋晴れになることが多いんだとか。
せっかくなので、この日に「栗の森(Bosques de Castanheiros do Penedo)を歩き、焼き栗を食べ、新酒を飲む会」に参加してきました!
「栗の森」の爽やかな香りの正体は?
栗の森があるのは、「シントラ=カスカイス自然公園 (Parque Natural de Sintra-Cascais)」内。ポルトガルの首都リスボンから日帰りで行ける世界遺産の街、シントラの近くです。
当日は天気予報を裏切って、とてもきれいな秋晴れになりました。さすが、サン・マルティーニョ!
待ち合わせに「ごめん、栗焼いてたら間に合わなかった〜」と遅れてやってきたガイドさんが、早速みんなに焼きたての栗を配ってくれました。歩きながら食べてね、とのこと。真っ黒になった焼き栗はまだ温かくて、ほっこりした気持ちになりました。
ゆっくり森の中に入っていきます。
今回のハイキングのテーマ通り、地面のあちこちにいがぐりが落ちています。
そして、地面には、栗にまざってどんぐりの帽子のようなものがたくさん落ちています。
ひとつ拾ってみると、とてもいい香りがします。一緒に参加した約1週間のトレッキング旅行帰りの友人は、「旅の間、くつが臭くならないように、寝る前にこれをくつの中に入れてた」と笑っていました。効果は謎だそうですが、確かに試したくなるような清涼感のある香りです。
ガイドさんに「これは、何の帽子?」と聞くと、ユーカリだという返事でした。なるほど!
ちょうど、栗の花は臭いことで知られてるのに、この森はとても爽やかないい香りが充満しているなあ、と不思議に思っていたのです。その謎も溶けました。森がいい香りなのは、月桂樹やユーカリの木が多いからだったのです。
サン・マルティーニョを祝うピクニック
約7kmの道中は、歴史ある建物やカラフルなきのこたち、それに海まで見えるとても充実したものでした。
そしてお楽しみのピクニックでは、最初にいただいた焼き栗とガイドさんお手製の栗のケーキ、それに焼き栗のお供だという伝統酒が出てきました!
右の「ジェロピガ(Jeropiga)」がポルトガルでサン・マルティーニョの日に焼き栗と一緒に楽しまれる習慣のお酒らしく、ラベルには栗の絵が描かれています。
ジェロピガは、ぶどうの搾汁に蒸留酒(アグアデンテ)を加えて発酵を停止させることで、ワインよりも甘く、アルコール度数を高めた若いポートワインのような酒精強化ワイン。アルコール度数は17%。しつこくない甘さで、秋日に外で飲むのにいい感じです。
もう1種類はジェロピガよりも甘い赤いお酒で、ネットで調べたところ、colheita tardia(後期収穫)の遅摘みワインでした。こちらも気候が良い午後のピクニックなんかにしっくりくるデザートワインでした。
真っ黒になっていた栗ですが、皮を剥くときれいな濃い黄色の実がでてきました。天津甘栗のような甘い味を想像したのですが、ほんのり塩味の素朴な美味しさでした。確かにジェロピガとよく合う気がします。
それにしても屋外で分かち合う旬の味はまた格別ですね。みなさんも秋のお出かけ、楽しんでくださいね!