誕生から1世紀以上にわたって、フィールドを明るく照らし続けてきた伝説的ランタン。長年、旅人たちの胃袋を満たし、冷えた体を暖めてきた歴史的ストーブ。アウトドアを語るうえで欠かせないギアが、ここにある。今回は、今でもドイツ国内で一台一台手作業で組み立てられているというペトロマックスを紹介。
マントルを利用した液体燃料の白熱灯で世界的に有名なペトロマックス
液体燃料ランタンに欠かせないマントルが発明されたのは、1885年のこと。オーストリアの科学者、カール・アウアー・フォン・ヴェルスバッハによるものだ。その、灰化させた袋状の特殊な布地は、高温に晒されると白熱して光を発した。
19世紀末までには、このマントルを利用した液体燃料(灯油やアルコール)の白熱灯が続々と開発されるようになった。その中でも、世界的に有名なのが「ペトロマックス」だ。
1887年、アドルフとマックス・グレーツ兄弟は、父が経営していた照明器具等の製造会社「エーリッヒ&グレーツ社」を引き継いだ。10年前までわずか100人だった従業員は、ふたりの手腕によって’89年までに1000人も雇用するほどの成長を遂げる。
そんな成功の原動力となっていたのが、発明家でもあった弟マックスの存在だ。1908年には、「ESSO」というブランドで電球を発売。その翌年には、前出のヴェルスバッハが開発したマントルを使ったランプ「グレーツライト」を発明した。
そして’10年、世界初の灯油を燃料とした加圧式ランタンの開発に成功する。それは、適量の空気とともにマントルに送られる気化した燃料が、マントルを白熱点まで加熱させて継続的に明るい光を発した。また、それまでにあった加圧式に大きく差を付けたのが、強力な予熱バーナー(気化器)だった。点火するとゴォーという音を発して勢いよく噴射する炎が、素早い予熱を実現したのだ。
そんなランタンを発明したマックスは、友人から「ペトロール・マックス」というあだ名で呼ばれていたことから「ペトロマックス」と名付けられ、’21年には気化器を搭載したこのランタンに関する特許を申請。こうして、世界的ベストセラーとなったペトロマックス・ランタン「HK500」が誕生した。
その後、’50年代以降は何度かオーナーが代わったものの、品質、性能はもちろん維持され、ドイツ国内の工場で一台一台手作業で組み立てられている。
1910年
サイトを明るく照らし出す頼もしいまでの明るさ!
HK500
¥47,300
●燃料=灯油、スターケロシン
●サイズ=直径170×高さ400㎜
●タンク容量=1ℓ
●燃焼時間=約8時間
●重量=2.4㎏
問い合わせ先:スター商事 TEL:03(3805)2651
※構成/坂本りえ 撮影/中村文隆 協力/木村泰河、Kazumi Sudo
(BE-PAL 2023年12月号より)