グランド・キャニオン、ヨセミテ、デス・バレーなど、カリフォルニア州には世界的にも有名な国立公園がたくさんあります。そのどれを選んでも、きっと後悔しないでしょう。スケールの雄大な北米大陸の自然の中に身を置くことができます。
ただ、こうした国立公園は訪問客にとっては立地が難点です。当然のことなのですが、大自然は都会からは遠くにあります。オプショナルツアーでもレンタカーでも、ロサンゼルスやサンフランシスコなど日本からの直行便がある大都市から日帰りで訪ねられる国立公園はいくつかあります。しかし、一日の大半を往復の車中で過ごし、肝心の公園内は見どころスポットを駆け足で巡る、なんてことにもなりかねません。
写真を撮って、土産物も買ったから、もうそれで満足。そういうタイプの旅を好む人もいるでしょう。その一方で、せっかくの大自然なのだから、もっとゆっくりと時間をかけて、できれば自分の足で歩いてみたいと思う人もまたいるのではないでしょうか。
後者のタイプ、つまりアウトドア派の人がロサンゼルスを訪れる機会があれば(そしてあまり日程に余裕がなければ)、ジョシュア・ツリー国立公園をお勧めします。市内から2~3時間ほどのドライブで到着できるにもかかわらず、本格的な砂漠を見ることができる国立公園です。公園名にもなっているジョシュア・ツリーと呼ばれる木と奇岩が織りなす景観が有名です。
観光地化されていない「ジョシュア・ツリー国立公園」
ジョシュア・ツリー国立公園はロサンゼルスからもサンディエゴからも日帰りできる、という言い方は正しくなく、むしろ日帰りでしか行けないと言うべきかもしれません。なぜなら、公園内にはホテルもレストランもガソリンスタンドすらないのです。キャンプ場はいくつかありますが、売店がないので水も食料も持参しなくてはいけません。
そもそも、多くの訪問客を呼び寄せようとする方向を向いていないのでしょう。便利か不便かと言えば、かなり不便です。そのおかげで、ロサンゼルス市が2つすっぽり入るほどの広大な面積を持つこの公園は人口密度が格段に低く、よほどのことでもない限りは混雑とは無縁です。
最も人気のあるアクティビティはロッククライミングです。それにたくさんのハイキングコースがあります。どちらも入り口の駐車場にはトイレと案内板があります。逆に言えば、それくらいしかありませんが、その周辺だけはさすがに車と人が集まってきます。
砂漠をひとりで行ってみないか
それ以外に、Backcountry Roadと呼ばれる未舗装のダート道路が穴場です。園内を縦横に走っていて、そのいくつかは4輪駆動車しか通行できません。こうしたダート道路を車で行ってももちろん良いのですが、歩くかマウンテンバイクで走ると、さらに貴重な経験ができます。なにしろ、車も人もすれ違うことがほとんどありません。砂漠の景色を思うがまま独り占めすることができるのです。
以下は私の体験談です。
見渡す限りの砂漠の、地平線の彼方まで続く1本道。「空とこの道出会う場所」(浜田省吾『家路』より)に辿り着てみせるぜ、でも水筒の水が半分になったら引き返そう。なんて思いつつ自転車を漕ぎだしたのはいいけれど、10キロも走らないうちに道路の砂が深くなってしまい、それ以上自転車では進めなくなりました。仕方なく来た道を引き返し、結局1時間くらいのサイクリングでしたが、その間は人ひとり、自転車1台とも行き会いませんでした。
こんなドタバタを馬鹿馬鹿しいと思うか、楽しそうと思うかは人それぞれでしょう。私としましては後者の人に連帯のメッセージを込めて、ジョシュア・ツリー国立公園へいらっしゃいと言いたいのです。
ジョシュア・ツリー国立公園は1年中開園していますが。夏場はいささか暑過ぎるため、訪問に適した季節は秋から春にかけての半年間です。入園に際して予約は必要ありません。ロサンゼルス市内から多くの旅行会社が日帰りツアーを運営していますので、それを利用する方法もあります。
ジョシュア・ツリー国立公園公式ウェブサイト:https://www.nps.gov/jotr/index.htm