2022年に日本市場に再参入を果たした韓国の自動車メーカー「ヒョンデ」。もっとも、2000年代初頭の初上陸の際の印象やラインナップ、モデルそのもののキャラクターを明確に覚えている人はそう多くはないだろう。それよりも再上陸時に発売された2台、電気自動車(EV)“アイオニック5”や燃料電池車“ネッソ”が、そのデザイン性の高さも含めて強いインパクトを残しているはずだ。では、今回これらに続く第三の矢として放たれた新型EV「コナ」はどうだろうか。試乗を通してそのキャラクターを探る。
ヒョンデ・コナってどんなクルマ?
コナは韓国のヒョンデ(現代自動車)が手掛けるコンパクトSUVだ。日本に導入されるのは2代目にあたるモデルで、本国では2022年末に発表、23年から販売が開始され、日本では去る11月に発売となった。韓国では1.6〜2.0ℓの内燃機搭載車も用意されるが、日本に導入されるのはEVのみ。メーカー自体が慎重な姿勢を取っているとも考えられるが、EVに絞ったことは電動化の流れを踏まえたうえでのヒョンデ・モビリティ・ジャパンの明確なブランディングでもあり、潔いと思う。
実際、モデルの造り自体も潔く斬新である。サイズ的にはトヨタ・C-HRやホンダ・ヴェゼルが近しいところにあるが、直接的なライバルとなると先に上陸した中国のBYD製EV、ATTO 3だろうか。いずれにしても扱いやすいサイズの電動モーター駆動SUVを求めている層にはちょっと気になる存在になるはずだ。
先に登場した兄貴分のアイオニック5が“パラメトリックピクセル”と呼ばれるデザインモチーフで仕立てられていたように、コナもピクセルグラフィックをそこかしこに散りばめた、先進性を表現したデザインが特徴だ。車両前後にはロボコップを彷彿とさせる真一文字のシームレスホライゾンランプが用いられ、その下のバンパーにピクセル文様が施される。ボディサイドの水平および斜めに走るキャラクターラインも印象的。それだけでコナと認識できるデザインは個性を大事にする人にとっては魅力的に映るだろう。
実はきまじめ
もっとも、室内はヒョンデの実直さを表現したかのようなオーソドックスなレイアウトが取られる。水平基調のダッシュボードにメータークラスターとナビゲーションディスプレイを一体化したパノラマディスプレイが目を引くいっぽうで、空調をはじめとする快適装備のスイッチやハザードなど、使用頻度の高い機能は物理スイッチとして残しているところに見識が窺える。それに何より運転席からの視界も良好なところがいい。
過ごしやすいのは後席に移っても変わらない。コナはフロントのみにモーターを搭載した前輪駆動のEVであり、床下にバッテリーを収めた結果、センタートンネルのないフラットなフロアを実現。ロングホイールベースのおかげで足元に窮屈さはない。加えて厚みのあるシートクッションや2段階の角度調整が可能なバックレストのおかげでリラックスした姿勢が取れるのもいい。
そのバックレストを前倒ししてみると広大なラゲッジルームが現れる。通常状態でも466ℓと十分な容量が確保されており、最大1300ℓまで拡大可能。フロアボードの高さ調節ができたり、スマートキーを持ったままテールゲートに近づけば自動的にハッチが開く“スマートパワーテールゲート”もほとんどのグレードで標準装備されるなど、使える機能が盛り沢山なことからも、真面目な造りであることがわかるはずだ。
じっくり練られたモデル
そして肝心の走りはといえば、こちらもやはり奇を衒ったところのない、素直なドライブフィールを示していた。最近のEVといえばどれもリニアリティの高さを強調するのではなく、あくまで内燃機搭載車のような自然なフィールを大事にしているモデルが多いように思うが、コナも同様に運転手の感性にあった加減速を行ってくれる。もちろんドライブモード選択や回生ブレーキの強さを切り替えるなどして交通状況にあわせたセッティングと運転が可能だが、どのモードを使っても違和感を覚えることはなかった。
高い速度域では少々足がばたついたりするところもあったが、終始素直な動きに徹してくれていた。聞けばヒョンデ自体、2010年をもって乗用車販売は終了したものの、研究開発機関は日本に留まって市場調査や開発を行っていたという。それがやはりドライブモード等を始めとする運転におけるナチュラルさ、あるいはクルマとしての使い勝手の熟成度につながっているに違いない。
コナはアイオニック5よりもより身近な存在としてのポジショニングであり、日本法人のスタッフ氏もそのフレンドリーさをアピールしていきたいと語っていた。実際、コナは熟考を重ねたうえに生まれたモデルであり、その扱いやすさはもちろん、クオリティや価格面でも、ライバルたちと十分に渡り合える実力を持ち主。そんな選択肢が増えたことを喜ぶアウトドアズマンも多いのではないだろうか。
【ヒョンデ・コナ・ラウンジ】
- ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,355×1,825×1,590mm
- 車両重量:1,790kg
- 最低地上高:151mm
- 最小回転半径:5.4m
- 駆動方式:FWD
- モーター:交流同期電動機
- 最高出力:150kW(204PS)/5,800〜9,000rpm
- 最大トルク:255Nm(26.0kgm)/0〜5,600rpm
- WLTC電費:137Wh/km(一充電走行距離:541km)
- 車両本体価格:¥4,895,000(税込み)
問い合わせ先
ヒョンデ
TEL:0120-600-066