年が明けて、まだ春は先だけれど、アウトドアの楽しみを本で見つけ、学ぶことはできる。様々な視点で書かれた良書4冊から、自然をつかもう。
BOOK 01
味噌汁でわかる雲のでき方。空を眺める時間が増える
『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』
荒木健太郎著 ダイヤモンド社 ¥1,980
「今日はいい天気ですね」と、たいてい空模様で始まる日常会話。手堅い話題? いや、天気は生活に直結する万人の関心事でもあるからだ。野外で遊ぶならばなおさら。その一方で夕陽に癒やされたり、虹に感動したり。誰もが空の様子に一喜一憂し心揺さぶられSNSには空の写真があふれる。
本書は雲研究者である著者が「より空が美しく見えるように」と、まとめた気象大全。気象に関する本は往々にして難しい。さまざまな気象現象を正確に説明するには、物理学的な思考が欠かせないからだ。だが本書では、雲の成り立ちを味噌汁で、エルニーニョ現象をホットコーヒーに例えて解説。大空の科学をテーブルのできごとに置き換えて身近に感じさせてくれる。
雲、虹、太陽、月、雪、雨……あらゆる現象をイラストを交えて理科的に解説しつつも、文化的な視点も織り交ぜて飽きさせない。アニメで描かれた雲や空につい注目してしまう研究者ならではの話、先人たちがどのように空に関心を寄せていたかなども掘り起こす。その引き出しの多さは、日々空を楽しむ著者の人となりをも感じさせてくれる。
気象学の歴史や天気予報のしくみ、気象予報士についてなど気象学の入門書としても十分。タイトル通り、空が一段とよく見えた。
BOOK 02
野生動物が勢力拡大中。私たちがすべきことは
『ヒグマは見ている 道新クマ担記者が追う』
内山岳志著、北海道新聞社編 北海道新聞社 ¥1,430
’23年はかつてないほどクマが世の中の関心を集めた。本州にはツキノワグマ、北海道にはヒグマがおり、いずれも生息数は増加傾向にある。本書は’19年11月〜’23年8月に北海道新聞に掲載されたヒグマ関連記事を集め、考察を加えたもの。
’21年6月、札幌の市街地にヒグマが出没し4人が襲われ負傷した事故は全国に報道され、衝撃だった。一体どこを辿って市街地に? そのルートを著者である記者が追う。自然豊かでクマに近い環境にある北海道。法整備が不可欠なハンター問題や自治体の対応策は急務だ。「怖いと感じるのは相手を知らないから」。生態を知り、共生の道を探る。
BOOK 03
日本一高いところで未来につなぐ研究を
『ようこそ! 富士山測候所へ 日本のてっぺんで科学の最前線に挑む』
長谷川 敦著 旬報社 ¥1,760
富士山のてっぺん、3,776mにある富士山測候所。以前は気象庁職員が滞在し観測を行なっていたが、技術の進歩に伴い2004年に無人化した。しかし、測候所での研究は気象予報のみにあらず。雷、高所医学、大気中の温室効果ガス濃度やマイクロプラスチック、多分野の研究者が“日本一高いところにある研究所”の使用継続を切望した。ここでしかできない研究が、成果を上げているからだ。測候所の成り立ちから数々の人間ドラマ、何より科学者たちの熱意がほとばしる。
BOOK 04
やってみたくなるアイデア満載レシピ
『冒険食堂 子どもの好奇心を刺激するアウトドア料理レシピ』
阪口 克著 ヤマケイ新書 ¥1,320
焚き火を使ったアウトドアでの調理は台所ではできないことに挑戦できる絶好の機会。まさに冒険だ。ダッチオーブンなどの定番調理器具はもちろん、段ボールや牛乳パックを使った調理、太陽光を利用したソーラークッキングにもトライ。親子向けに構成されているが、基本的な火の取り扱い方法や調理器具、薪の話に始まり、カツオのタタキや鯛の塩釜焼きといった大人の好奇心がくすぐられる調理術も並ぶ。ハンドブック仕様で、道具とともに持ち運べる手軽さもいい。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2024年1月号より)