ボルボは世界中のアウトドアズパーソンに愛される一方で環境・資源・エネルギー問題に真摯に取り組む先進的なメーカーとしても知られている。そのボルボが次世代に繋がるピュアEVを発表。全天候型アウトドアライターのホーボージュンが、世界に先駆けテストドライブを行なった。
アウトドア界を代表して国際試乗会へ乗り込んだ
「バルセロナに飛んでください」沢木編集長からそう依頼されたのは10月初めのこと。なんでもスペインのバルセロナでボルボの新型EV試乗会があり、『ビーパル』がアウトドア界の代表として招待されたという。
ご存じのようにボルボは地球環境やエネルギー問題への取り組みに熱心な自動車メーカーで、2030年までにはEV専業メーカーにシフトすることを世界に向かって宣言している。
そんなボルボが満を持して発表したのがこの「EX30」だ。コイツはボルボ史上最も小さな電気自動車であり、同時にボルボ史上最速ともウワサされるホットハッチ。「だったらボルボもスポーツドライブも大好きなホーボーさんに試乗してもらおう」と編集長から直々にご指名を受けたのである。
ということでバルセロナに飛んだ僕は空港でテスト車両を受け取るとさっそく運転席に潜り込んだ。電源を入れるとセンターディスプレイに今回の試乗ルートが浮かびあがる。なんだかもう未来である。このナビ画面はスマホで使い慣れた『グーグルマップ』そのもので、ご丁寧にも音声案内は日本語にセットされていた。これなら異国の地であってもまったく心配いらないだろう。
荷室がスクエアで積みやすいぞ!
ちなみにナビ画面だけでなく、走行モードからエアコン操作に至るまですべてをこのディスプレイで集中管理する。まるで「走るスマホ」なのだ。
それにしても内装がシンプルだ。物理的なボタンやスイッチ類がまったく見当たらない。
このインテリアには2つの設計思想が込められている。ひとつは視界に入るものをなるべくすっきりさせ、情報を一元化。それによって運転に集中し、安全性を高めようという試みだ。
ふたつ目はリサイクル。内装をシンプルにし、素材と配線を減らすことでリサイクルしやすいようにしているのだ。
アクセルを踏むとEX30は路面を滑るように走り始めた。まるで横向きに動くエレベーターに乗ってるみたいだ。床下にバッテリーを積むので、重心が低くピッチやロールが少ない。また今回からプラットフォーム(車両の基本骨格)がEV専用のものになったおかげで、コーナーリングも快適だった。
爆発的な加速力はまるでタイムワープ!
さて、今回の試乗では2種類のモデルに乗れることになっていた。後輪駆動のシングルモーター車と前後に2基のモーターを積んだツインモーター車だ。僕はまずツインモーター車を受け取ったのだが、どうしても試したいことがあった。それがフル加速。4輪をフルパワーで駆動するモードにすると428馬力ものパワーが出る。静止状態から時速100km/hまでの到達時間はわずか33.6秒……! いったいそれがどんな世界なのか試してみたかったのだ。
高速道路の合流車線を使って僕はアクセルを全開にした。その瞬間、ガソリン自動車ではありえないような猛烈なGがかかった。それはまるでSF映画に出てくる宇宙船がタイムワープをするときのような感じ。まわりの景色が突然川のように流れ、頭蓋骨がヘッドレストに押しつけられた。一瞬で100km/hに到達したのですぐにアクセルを戻したが、いやあ、ビビったのなんの。レースカーに慣れている僕でも白目を剝くような加速だった。これはもはやクルマではなく、宇宙船ですよ。
そういえばEX30のフェイスデザインはストーム・トルーパー(正確にはクローン・トルーパーのフェイズ1)みたいだと思ってたんだけど、あとで聞いたらじつはデザイナーが『スター・ウォーズ』の熱烈なファンなんだって。やっぱりなあ。やっぱりこれは宇宙船だわ。
「100年後も走るぞ」そんな気概に溢れている
その後2日間・200㎞にわたって試乗を行なったが、そのなかで僕が最も強く感じたのが「Freedom to Move=移動の自由」に対するボルボの熱意と覚悟だった。この先100年もクルマで走るぞという気概がこの小さな車体に溢れているのだ。
アウトドアの世界もそうだけど、いまや環境問題やエネルギー問題を無視したモノ作りはできない時代になっている。とくに大自然の中で遊ばせてもらっている僕らにとって環境性能はとても気になる部分だ。
じつはEX30は製造工程を含め、20万㎞走行時におけるカーボンフットプリントをボルボ史上最小に抑えている。
たとえばインテリアには再生素材やバイオ素材をふんだんに使っているし、構造材のアルミの約25%、鋼鉄の17%は再生素材でまかなっている。
エネルギー効率も最大化されていて、これから輸入が始まる日本仕様モデルは航続距離がなんと560㎞もあり、東京からだと新東名で神戸まで走れる計算だ。これはスゴイ。
でもEX30の魅力は航続距離そのものではなく、ステアリングを握る人間に「どこまでも走りたい」と思わせてくれるところだ。コイツはただの環境カーではなく、走る喜びとその自由に浸れるクルマ、ボルボならではの一台なのであった。
日本で乗れる日が待ち遠しい。
EX30ってどんなクルマ?サイズは?料金は?
❶ボルボSUV史上最小!
❷ボルボ史上最速!
❸航続距離がスゴイ!
❹補助金で安くなる!
日本での販売価格は559万円~とかなり戦略的な設定。EV補助金を使えば400万円台で買える。
この小さな電気自動車はどんな未来を見せてくれるのか?
サステナブルなインテリアデザイン
PCRの再生プラスチック
バイオ素材のノルディコシート
ドアには一切スイッチがない
インフォテイメントと安全性
すべての情報を一元化
運転に集中できる環境
都市部での高い安全性
日本上陸はシングルモーターから
【駆動方式】2WD
【ボディー寸法】
●全長/4,235㎜
●全幅/1,835㎜
●全高/1,550㎜
●最低地上高/175㎜
●最小回転半径/5.4m
●ホイールベース/2,650㎜
●トレッド/前1,590㎜/後1,595㎜
●タイヤサイズ/245/45R19
●車両重量/1,790㎏
●乗車定員/5名
【エンジン】
●駆動用バッテリー/総電力量69kWh
●最高出力/200kW(272ps)/6,500~8,000rpm
●最大トルク/343N・m/5,345rpm
●一充電走行距離(WLTCモード)/560㎞
2024年にはクロスカントリーが出る?
※構成/ホーボージュン
(BE-PAL 2024年1月号より)