キャンピングカーの換気システム「ベンチレーター」とは
キャンピングカーのルーフに、ぽこんと飛び出た丸い部分。これは車内の空気の入れ換えのために取り付けられた「ルーフベンチレーター」こと換気扇です。
外観をほとんど加工していないバンコンでも、遠目からキャンピングカーであることがわかる、ひとつの目印になっています。
天井の開口部に網戸をつけただけの「ルーフベント」もありますが、一般的にはファン、カバー、動力部が一体化したオールインワン型ベンチレーターがよく知られています。
MAXXAIR社の「マックスファン」や、Dometic社の「ファンタスティックベント」が人気で、日本のキャンピングカーでも多く採用されています。
キャブコンでは標準装備であることが多いものの、バンコンや軽キャンパーではオプション扱いのため、装着していない人のほうが多数派かもしれません。
今日はオールインワン型ベンチレーター、とくに私が装着しているマックスファンについて、メリットや活用法について解説します。
ベンチレーターの基本的な使い方をご紹介
モデルやメーカーによって異なりますが、本体価格は5万円から8万円ほど。
取り付けには天井部分のカットが必要なほか、ソーラーパネルによって配置の制限を受けるため、車両購入時に装着するのがおすすめです。また、装着後は車高が少し(私の場合は約10cm)アップします。
ファンの回転方向はイン/アウトの切替が可能で、吸気・排気の両方に対応します。カバーがあるので雨の日も使用可能。
ただし使用できるのは全開または全閉時のみで、中途半端に開けた状態での運転はNGです。
普段はあまり使わない機能ですが、カバーを閉じた状態で起動するとシーリングファンモードになり、車内の空気を循環します。
モデルによってはサーモスタットを利用して自動でオン/オフするオートモードもあります。温度は華氏表示。室内の温度計が11.7℃のとき、マックスファンの温度計は52°F(11.11111℃)だったので、ほぼ正確ですね。
実際の使用シーンでは、節電のために必要なときだけ電源を入れることが多いですし、温度だけでなく風量や音量も気になるため、私はオートモードを使ったことはありません。
動作音はそれなりに大きく、風量を強めると「ゴーッ」というような「うなり」が聞こえます。体感的には家庭用の換気扇と同じくらい。不快な風切り音はありません。
マックスファンの場合、手動のマニュアルモデルと、手元のリモコンで操作できるリモコンモデルがあります。
私はどちらも使用経験がありますが、手を伸ばせばすぐに操作パネルに届く狭い車内では、リモコンは「必須アイテム」というほど重要ではありません。
リモコンモデルは電動でカバーを自動開閉するため、後述するようなトラブル時の空回りにもつながります。就寝時に子どもを起こさず操作したいなど、特別な事情がない限りはマニュアルモデルでよいと考えます。
マックスファンの場合、開口部から差し込む日光を遮断したり、照明機能をプラスするためのオプションパーツも販売されています。
メンテナンスは大変?
外気の入口になるので、ベンチレーター付近は汚れやすい部分になります。気がつくと虫の死骸や泥など、室内なのにたくさんの汚れが付着していてびっくり。
虫よけスクリーンはノブを回すことで簡単に着脱可能なので、定期的に拭き掃除をしたほうがよいでしょう。
故障という意味で、よく聞くトラブルはコーキング部分の水もれと、カバーを開閉するアームの破損。とくに後者は、強度的に少々もろいところがあるようで、丁寧に扱うことが求められます。
ほかに私の場合、カバーのパッキンが張りついてしまい、リモコンをオンにしても開閉できなくなるというトラブルが定期的にあります。この場合、外側から物理的に力を加え、はがしてあげる必要があります。
どちらにしてもマックスファンは日本でも非常にポピュラーで実績のある商品のため、故障時にも多くのディーラーやビルダーで対応してもらえます。
ベンチレーターはこんなユーザーにおすすめ
ベンチレーターがオプション設定になっているとき、装着した方がよいのはどんなユーザーでしょうか。具体的な使用シーンを見ていきましょう。
用途その1 トイレ使用時や調理時の匂い対策
本領を発揮するのは、やはり本来の目的である換気です。もともと大型の欧州車を想定してデザインされているためパワーは十分。排気モードにすれば、車内の空気を強力に排出してくれます。
肉料理の油分や煙など、ファブリックに染みついた匂いまでは排出できませんが、弁当や惣菜の残り香くらいなら十分に役立ちます。
このほか、ペットがいる場合、車内で喫煙する場合、まだおむつの外れないお子さんがいる場合などにも役に立つはずです。
毎日乗っているオーナーは匂いに慣れて気づかなくなってしまうこともあるので、「たまに自分以外の人を乗せる」などの場合はぜひとも活用したいです。
用途その2 湿気を逃して湿度管理
人の生活にともなって発生する湿気。もし車内でシャワーを使うなら、必須のオプションとなっているはずです。
そうでなくとも結露でカーテンがびしょびしょになったり、入浴後のタオルを車内干ししてもなかなか乾かなかったり、という経験はきっと誰しもあるでしょう。
ベンチレーターで適度に風の流れを作り、空気を入れ換えることでカビが生えにくく、清潔な空間で暮らすことが可能になります。とくに入浴後に車内で過ごしたときや、大人数が寝起きした後などは空気がこもっているため、朝になったら一気に排出したいです。
用途その3 暑さ対策
私がもっとも活用している用途、それが温度管理です。涼しい季節にはカバーを開けるだけでひんやりと外気が入り、車内の風通しがよくなります。
過去の所有車でベッド側にベンチレーターを装着していたときは、吸気設定にすることでまさに扇風機のように使っていました。就寝時には暑さを感じていても、外から強制的に風が入るので、しばらく身体にあてていると寒くなるほど。
現在のクルマではトイレルームに設置しているため扇風機にはなりませんが、その代わり排気設定にして窓と組み合わせ、風の流れを生み出しています。
このとき、クルマ側の窓は全開にするのではなく細く開けることがポイント。風の入口を狭くすることで勢いよく空気が通り抜け、より涼しさが感じられるようになります。
雨天時などクルマ側の窓を開けられないときは、逆に吸気設定にしてハンディファンを併用しています。簡易的な扇風機ですね。
外気より温度を下げることは不可能なため、熱帯夜などには使えない方法ですが、かなりの季節をこの組み合わせで乗り切っています。
ただし、もとから家庭用エアコンや車載クーラーを搭載しているクルマの場合は無用ということになります。あくまで補助的な暑さ対策で、冷房代わりになるものではありません。
サーキュレーターやハンディファンなど、車内で空気の流れを生み出す家電はたくさんあります。そのため、家庭用エアコンなど十分な冷房設備が備わっており、かつ車内で調理などをしない人なら、わざわざベンチレーターを搭載しなくてもほかのもので代用できると言えるでしょう。
しかし、冷房設備がなく、簡易的にでも温度管理をしたいなら、ぜひとも搭載したいオプションだと思います。
とくに防犯上の理由からクルマの窓を開けたまま寝ることに不安のある場所でも、緩やかに外とつながる開口部を生み出せるのは大きな利点です。
個人的には、もしベンチレーターがなければクルマ旅のできる季節が今よりもぐっと狭まっていたと思います。女性ひとり旅などの場合はとくにおすすめです。