
「東京国際交流館」横のスペースにはメーカーの最新EVの他、自作EVやEVのレーシングカートなどがズラリと並ぶ。
今年で29回目となる「日本EVフェスティバル」が11月25日、東京のお台場にある東京国際交流館で開催されました。テーマは「つながろう みんなでCO2削減」。会場では、内外の最新EVの展示や試乗会を始め、識者を招いてのEVシンポジウムや今後ますます注目される充電器メーカーによる展示、さらに充電ソリューションサービスの紹介など、様々なプログラムが行われ、多くの来場者で賑わっていました。EVを知り、EVの普及について考える絶好の機会として、すっかり定着した日本で唯一、世界でも例を見ない電気自動車の祭典のレポートです。
日本EVフェスティバルとは
1995年、第1回日本EVフェスティバルは、わずか5台の改造EVと6台のエレクトリック・レーシング・カート(以下、ERK)を集めて開催されました。主催は前年の1994年10月に設立されたばかりの「日本EVクラブ(一般社団法人日本EVクラブの前身)」。その代表を務める自動車評論家の舘内 端(たてうち ただし)氏といえば、早くからEVの認知向上と普及を呼びかけていたキーパーソンのひとり。EVフェスティバルの開催によって、クラブの活動が本格的に動き出したといえます。
当初は茨城県にある「日本自動車研究所(Japan Automobile Research Institute、略称はJARI)」にある走行試験を行うオーバルコースで行われていましたが、2002年からは場所を筑波サーキットに移しての開催となりました。日本EVクラブの会員が製作した改造EVとERKによるデッドヒート、さらには自動車メーカー製のEVとプラグインハイブリッド車の試乗会などが話題となっていました。
そして迎えた2020年の12月、会場を現在の東京国際交流館に移して第26回日本EVフェスティバルを開催。「これからのEVフェスティバルは、モータースポーツから離れ、EV・PHEVの魅力を知り、普及につながるようなイベントに」という趣旨を掲げ、東京都民を中心に多くの市民を迎えて、ともにCO2削減を呼びかけた都市型イベントとなって現在に至ります。
なお2015年6月2日に一般社団法人となった日本EVクラブは、EVを中心にエコカーの普及活動を行う市民の団体です。1998年には、舘内代表がエコカーの普及活動の功績によって環境大臣表彰を受けています。
プロによるドライビングレッスンも

参加費無料の「最新EV&PHEV試乗会」。先着順で当日受付ですが、あまりの人気でフル稼働状態。
入場無料の上に基本は参加自由ということで、EVフェスティバルを目的にした来場者に加え、お台場を訪れた観光客たちも内外の展示車両やERKなどに興味津々で、常に人だかりが。その中で行列ができるほどのコンテンツだったのが、最新EVの試乗会。日産・アリアやフォルクスワーゲン・ID.4、三菱・エクリプスクロスPHEV、日産・サクラ、BMW・i4などなど、いま注目のEVがずらり。そのハンドルを握っての試乗だけでなく、助手席には自動車ジャーナリストが同乗し、クルマの解説と運転のコツなども指導してくれる「eドライブレッスン」付きということで、次々に試乗希望者がスタートしていきます。ディーラーではなかなかできない試乗体験に大満足の様子です。

ジャーナリストによる車両解説とドライビングテクニックのレッスンなど、お得感のある試乗会が大人気。
親子でワイワイ、「Kids 電気カート組立体験」

ERKが並び、子供たちを中心ににぎわっていた。パーツなどの準備の都合もあり、事前申し込み制(小学4年以上、保護者同伴、先着8組)。
モータースポーツ色は薄れたとはいえ、ERKは走りの楽しさを知る上で、やはり重要な存在です。さらにそのシンプルな構造は、電気自動車の仕組みを理解するには格好の題材。モーター、電池、モーターの力を制御するコントローラーといった基本パーツを組んでいく「Kids 電気カート組立体験」も、いつもながらの盛況ぶりを見せていました。

ERKが並び、子供たちを中心ににぎわっていた。パーツなどの準備の都合もあり、事前申し込み制(小学4年以上、保護者同伴、先着8組)。
ソト遊びにもつながるEVとの過ごし方

EVやPHVの大容量バッテリーから電力を取り出し、分電盤を通じて家庭の電力として使用できる仕組み「V2H システム」を世界で初めて開発した「ニチコン」も出展。コーヒーメーカーで実演していました。
常に歩行者が行き来している屋外の展示コーナーに注目すると、ズラリと並んだメーカーの展示車両だけでなく、EVクラブの会員が制作した車両、さらには充電器メーカーや充電ソリューションサービスの紹介コーナーがあります。そんな中で注目度が高かったのは栃木県立鹿沼高等学校サイエンス部の生徒が制作した、「KPCEV-11」という“動くいす”です。なんでも「どこにでもある普通の椅子で自在に走ってみたかった」というのが制作の動機とか。操縦はテレビゲームのコントローラー(のようなもの)を使って行いますが、舘内代表も試乗を楽しむなど、注目度はかなりのモノでした。

「PowerX(パワーエックス)」は大型蓄電池の製造販売などを手掛けるスタートアップ企業。EV用急速充電器の設置サービスや充電ステーションの設置・運営を行っている。
また充電器メーカーのコーナーでは、EVの懸念事項のひとつである充電に関する質問をする人たちも多くいました。
このほか、館内では自動車ジャーナリストによるミニトークショー、さらに別会場ではEVシンポジウムが開催されました。ホンダによるエネルギーマネージメントに関する講演やパネルディスカッションが行われ、現状のEVにまつわる課題、そしてEVの近未来像への提言など、興味深いテーマが議論されていました。EVが普及していくために必要なのは、まずEVを正しく理解すること。今回の催しがその一助になることを願います。

写真のスズキ・ジムニーは、日本EVクラブの会員が25年以上かけてエンジンを電気モーターへ換装したもの。EV界では有名な車両だそう。
お台場の一角をEV一色に染めた「第29回日本EVフェスティバル」。主催の日本EVクラブには、ほかにも「SDGs 氷上電気カート競技会 ERK on ICE」や「ジャパンEVラリー」など、さまざまなイベントを仕掛けています。気になるEVをチェックして電源車としての使い勝手を探るだけでなく、ソト遊びに使えそうなアイデアを探してみるのも楽しいのではないでしょうか。

栃木県立鹿沼高等学校のサイエンス部の生徒が制作した「KPCEV-11」に試乗する、日本EVクラブの代表、舘内端氏(中央)。「若い人の発想は実に頼もしい」。

日本EVクラブ副代表の御堀直嗣氏(左)と自動車ジャーナリストのまるも亜希子氏によるミニトークショーが行われ、足を止める人も多かった。

自動車メーカー、行政、EV関連企業とともに気候変動にストップをかけ、電動モビリティ普及と脱炭素社会の実現に向けたシンポジウムも盛況。
撮影/樋口 涼、佐藤篤司
