出会った犬とふれあいたいと思ったら…どうすればいい?
災害救助犬として防災イベントに参加したときなど、たくさんの人とふれあうことが多いコア。 この連載を始めるにあたり、どんな記事を書いていこうかと編集部と打ち合わせをした時にリクエストされたテーマのひとつが、「犬とのふれあい方」でした。(これまでの連載はこちらから)
犬連れOKのキャンプ場も増え、フリーサイトなどで犬と接する機会が増えたと感じている人も多いはず。
中には犬との接し方がわからない、という人もいるでしょう。犬連れの人もそうでない人も、心がけたいことがあったらアドバイスして欲しいということでした。
そういえば、お散歩中やアウトドアで会った方から、コアにあいさつしたいけれどどうしたらいいの?と聞かれることがあります。キャンプ場などのアウトドアでは、お散歩の時よりも積極的にコアに声をかけてこられる方が多い気がします。
そこで今回は、ドッグトレーナーの薬師寺 博之さんにご協力いただいて、「犬とのふれあい方」について書いていきます。
1. 飼い主に声をかけましょう
「あいさつしてもいいですか?」と必ず飼い主さんに声をかけましょう。断られたら、その言葉に従ってその場を離れます。
犬によっては人が苦手かもしれませんし、怪我などで安静が必要な時期などの事情があるかもしれないからです。そして飼い主さん側は、少しでも不安があるならきっぱりと断りましょう。犬に無理をさせる必要はありませんし、トラブルを未然に防ぐことにもなります。
中には出会った人や犬に吠えてしまう、興奮して飛びついてしまうといった行動のトレーニング中の犬もいたりします。その場合は、飼い主への声かけすらトレーニングの弊害になってしまう可能性があります。
遠くから飼い主さんとアイコンタクトをしてみて、相手の飼い主さんが避けている様子なら、それ以上近づかずに離れましょう。
犬の行動は繰り返すことで強化されます。近づかずに離れることは、その犬が吠えたり飛びついたりする機会を増やさないことにもなります。そうした配慮は、トレーニングのお手伝いをしていることにもなります。
2. 犬から近づいてくるまで待ちましょう
真正面に立たずに、さりげなく視線を外して犬からあなたに近づいてくるのを待ちましょう。近づいた犬があなたの匂いを嗅ごうとしたら充分に嗅がせてあげましょう。飼い主さんは犬のボディランゲージをよく観察して、不安要素があればあいさつを中断します。
3. そっと撫でてみましょう
犬から近づいていてきて、あなたの匂いを存分に嗅ぎ、あなたから離れて行かなければ、犬の身体の側面などを優しくゆっくりと撫でます。飼い主さんにどこを撫でたら喜ぶのか、どこを触られるのが苦手なのか、聞くとよいでしょう。
数秒間撫でたら、いったんやめてみます。犬が離れていかずまだ撫でてほしそうなら、また撫でます。犬が離れたり迷惑そうなら、そこで撫でるのはやめましょう。
4.おやつをあげるときの行動は?
仲良くなった飼い主さんから「おやつをあげてみますか?」と言われたら、顔を近づけたり、大きな声を出したりせず、おやつを手のひらに載せてあげましょう。もちろん、飼い主さんに無断で食べ物をあげてはいけません。アレルギーのある犬やダイエット中の犬もいるからです。
5.こんな犬とのふれあい方はやめましょう
知らない犬と出会った時に「かわいい!」などと大きな声を出したり、上から覆いかぶさるように触ろうとしたりしていませんか?
犬の目線で見ると、上の写真のようになります。人間の方はかわいがっているつもりでも、犬は脅威を感じているかもしれません。なので…
「じっと見つめない/いきなりさわらない/かわいい!などと大きな声を出さない /大勢で囲まない/いやがる場所にさわらない(耳、脚、尾など) /上から覆いかぶさるように触らない」
これらを心がけてみましょう。
6.犬のボディランゲージを観察しましょう
犬は人間の言葉を使って話すことはできませんが、表情や身体の動きを観察することで犬の気持ちに寄り添うことができます。
「犬とふれあう時は犬のボディランゲージをよく観察しましょう」と言っても、ふだん犬と接する機会が少ない方には難しいことかもしれません。薬師寺さんとのふれあいの様子を写真でみてみましょう。
例、その1
ボディランゲージはいろいろあるのですが、細かくパーツ(例えば尾など)だけを見るより、身体全体を見ると間違いにくいです。「身体が柔らかく動いている/尾をゆったりと、ゆさゆさと振っている/顔の力が抜けていて、穏やかな目つきをしている」
こんな時は、ご機嫌であいさつしたり、遊んだりできるかもしれません。
その2
「身体が硬くなっている/顔をそむける/後ずさりしている/ くじら目(白目が出ている)になっている/ 鼻や唇を舐める/ブルブルっとする/地面の匂いを嗅ぐ/尻尾を股の間にはさんでいる/ まばたき・あくび/毛が逆立っている/耳がハの字に開き、後ろに倒れている /唸ったり吠えたり、犬歯をみせている」
こんな時は近づかずに離れましょう。犬が恐怖やストレスを感じているからです。このふたつの例は一般的なもので、犬によってボディランゲージは異なることがあります。ふれあう時は、まず飼い主さんに確認するようにしましょう。
7. 近づかないことが犬への思いやりになることも
この機会に、日本でもっと浸透してほしい『イエロードッグプロジェクト』を紹介したいと思います。
これは、2016年にスウェーデンで始まった「他の人や犬に近づかないでほしい」という意思表示として、犬のリードに黄色いリボンなどの目印を付ける運動です。
犬たちにも健康上の問題、トレーニング中、元保護犬や元野犬などの人間社会に馴れるための練習中、知らない人や犬が怖いなど、様々な事情があります。
黄色いリボンは、そんな事情のある犬たちが、安心して散歩ができるようにと飼い主が願い、愛犬の身に着けるサイン。もし黄色いリボンを着けている犬がいたら、そっと離れてあげましょう。
また、愛犬の散歩中、そっとしておいて欲しい飼い主さんは、黄色いリボンをつけてアピールしてみましょう。
私の先代犬は知らない犬に対して強く恐怖を感じており、お散歩中などに出会った犬連れの方に、「苦手なので近づけないでください」とお願いしても「うちの子は大丈夫だから」とグイグイ近づけられて困ったことが多々あります。
この運動が浸透し、全ての犬と飼い主さんがゆったりリラックスしてお散歩を楽しめるようになればと願ってやみません。
まとめ。犬とのふれあいでわからないことがあった時は
ここまで、いかがでしたでしょうか? 最後にひとつだけ、飼い主のひとりとして、私の気持ちをお伝えしたいと思います。
出会った犬の接し方に戸惑った時には、「自分の幼い子どもに、見知らぬ人が〇〇してきたら、どう思うか」と考えてみると、イメージしやすいのではないでしょうか。驚かせたり、怖がらせたりしないよう気配りをしましょう。あなたの目の前にいる犬は、おもちゃやぬいぐるみではなく、生きている命であり、一頭一頭に尊重するべき意志があり、飼い主さんの大事な家族です。
飼い主さん側は、犬をよく観察して、時にははっきり断る勇気を持ちましょう。誰にでもフレンドリーな犬が良い犬というわけではありません。愛犬をしっかりフォローしてあげましょう。
「災害救助犬コアとハンドラーの私の活動報告!」
2023年11月26日、川口市の安行小学校の授業の一環として行われたアニマルエデュケーション(動物介在教育)「動物福祉こどもフォーラム」に、ドッグトレーナーの薬師寺 博之さんら彩の国動物愛護推進員のみなさんと共に参加。コアと私は、午後の時間帯に災害救助犬のデモンストレーションを行いました。
デモンストレーションが終わると、コアは、わーっと寄ってきた生徒たちに囲まれておしくらまんじゅう状態に。
「これはこども達のためにもコアのためにも注意しないと。でも動物が大好きなこども達を傷つけずに教えるにはどう言えばいいかな」と考えあぐねていると、生徒の中から「そんな風に犬にさわっちゃいけないんだよ」「大きな声を出しちゃダメなんだよ」という声が。
声を上げたのは、午前中のフォーラムで、犬と仲良くなる方法を教わった生徒たち。指導したのは、彩の国動物愛護推進員でもある薬師寺さんでした。
そう、こどもでも知識があれば、犬を驚かすことなくやさしくあいさつして仲良くなることができるのです。「動物福祉こどもフォーラム」のこうした取り組みは、こどもにとっても、動物にとっても、素晴らしいものだと実感しました。相手を尊重したあいさつやふれあいを通して、人も犬も互いに、なかよく楽しい時間を過ごせるようにしたいですね。
※アニマルエデュケーション「動物福祉こどもフォーラム」/人間と動物が幸せに暮らせる社会を目指して、無料で学校への出張授業を行っています。
https://animal-education.net
モデルとしても登場してくださった薬師寺 博之さんを紹介します
埼玉県志木市を拠点に活動するドッグトレーナー。彩の国動物愛護推進員。小学校教員だった経験を生かし、アニマルエデュケーション(動物介在教育)にも熱心に取り組んでいます。難しいといわれる野犬出身の保護犬とのコミュニケーションも経験豊富です。問い合わせ先 e401ycg@yahoo.co.jp