小型車の金字塔、フォルクスワーゲン・ゴルフ。名車タイプ1(ビートル)に代わる実用小型車として1974年に登場し、現在8世代目を数える。そして、初代からシリーズにラインアップされているのが、スポーツモデルのゴルフGTIだ。目が覚めるような気持ちのいい走行フィーリングは、フィールドをめざすアウトドアズパーソンに移動の楽しみを提供する。
世界の自動車メーカーが目標にした「ゴルフ」
2023年は日本にフォルクスワーゲンが輸入されてから70周年というアニバーサリーイヤーだった。初代ゴルフも発売間もない1975年、当時輸入権を所有していたヤナセの手で販売が始まっている。エンジンを横置きにした前輪駆動を採用し、広いキャビンに大人4人が無理なく乗れて荷物もしっかり積める実用的なパッケージングは、スタイリングを含めて名カーデザイナーのジョルジェット・ジウジアーロが担当した。
極めて合理的で、シンプルかつクリーン、そして力強さを感じさせるデザインはそこはかとなくモダン。このデザイン哲学はフォルクスワーゲンというブランドを象徴するものとなった。日本で唯一のタレント性のある自動車評論家として知られた故・徳大寺有恒氏は、名著『間違いだらけのクルマ選び』(1976年刊行)を執筆中にゴルフを手に入れ、その完成度の高さに衝撃を受けたという。改めて原稿を書き直し、ゴルフをお手本として日本車に足りないものを評論した本書は空前のベストセラーとなった。
アウトバーンでも一目置かれる「GTI」の称号
※記事の一番下にゴルフGTIの歴代モデルの画像を掲載しています。
ゴルフを運転したことのある人なら、それが歴代のどの世代だったとしても、芯の通った安定感抜群の足回りと正確無比な操縦性、必要十分プラスアルファのエンジン出力に心を洗われるような思いをしたのではないだろうか。速度無制限区間のあるアウトバーンで高いスピードを保ちながら長時間快適に、安全に運転することを開発の基準点とするドイツ車の品質を、手の届く価格で提供しているのがゴルフであり、その個性をさらに磨き上げたスポーツモデルが、「GTI」だ。
必要十分プラスアルファのエンジン性能はさらに高められ、アクセルペダルの操作に対するレスポンスの良さは胸のすくような気持ちよさ。足回りは引き締められ、それでいて路面の凹凸に対してゴツンという不快な衝撃を感じさせないレベルに仕上げられている。そうした特徴は街乗りでだけでも体感できるし、高速道路を走ればさらなる感動が待っている。
日本のアウトバーンというべき新東名高速道路(速度無制限区間はないけれど)を走れば、性能の差で走行する車線が厳密に区分される本場でも、並みいる高級・高性能車にひけをとらない存在として認められているGTIの洗練極まる走り、長距離を走っても疲労感やストレスを感じないビシっとした安定感を骨の髄まで味わうことができるはずだ。
優れた道具を扱う感動をアウトドアギアと共に
前述の徳大寺氏の名著は日本の自動車作りにも少なからず影響を与え、明らかにゴルフを模範にしたと思われるハッチバック車も生まれた。そしてわれわれ日本のドライバーも成長し、クルマの本質的な魅力に価値を見出し、最も優れた(と個々が思う)1台を求めるようになった。昔と比べてゴルフのアドバンテージは突出したものではなくなりつつあるが、それはクルマ作り全体が底上げされた結果であり、アウトドアギアにパイオニアの価値を認めるのと同じく(ランタンやマグボトルなど多数)、小型車のパイオニアとして敬意を払う理由は微塵も失われていない。
最新世代のゴルフGTIの洗練ぶりは、高速移動でフィールドに向かうアウトドアズパーソンの疲労を抑えるだけでなく、いいモノに囲まれながら自然と近づくことで得られる感動を、さらに高めてくれる。世界のクルマ好き、道具好きが認めたGTIの称号は、フィールドでもさん然と輝くのだ。
【フォルクスワーゲン ゴルフ GTI】
- ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,295×1,790×1,465mm
- 車両重量:1,430kg
- 駆動方式:前輪駆動
- トランスミッション:7速DSG
- エンジン:1,984cc 直列4気筒ターボ
- 最高出力:180kW(245PS)/5,000~6,500rpm
- 最大トルク:370Nm/1,600~4,300rpm
- 車両本体価格:¥5,144,000~
問い合わせ先
TEL:0120-993-199
歴代のゴルフGTIを振り返る
※構成・撮影/櫻井 香 車両提供・資料写真提供/フォルクスワーゲン グループ ジャパン