“ビアスパイク“という飲み方をご存じだろうか。
これは中世ドイツの鍛冶屋が生んだとされるビールの飲み方で、熱した金属で泡を焦がし風味の変化を楽しむというもの。
愛知発のキャンプブランド「tougu」が2023年秋に発売した「joule Pro」は既存のビアスパイカーをベースにした柄付きの金属球で、焚き火でビアスパイクを作れるという。
さっそくサンプルを取り寄せ、試してみた。
黒ビールでビアスパイクを作ってみた
ビアスパイクの作り方は至って簡単。たっぷりの熾きを作り、「joule Pro」の球を突っ込んでよく熱する。
赤くなるまで熱するのが目安だが、日中はよく見えない。そうそう変形するものでもないので、15分ほど熾きに載せておけば準備完了だ。
touguによると、熱い金属塊を沈めると飲み物の糖分が瞬時にカラメル化し、それにより香りに変化が生まれるのだという。
なじみ深いピルスナーに沈めてもいいが、甘さと香ばしさが際立つ黒ビールなどコクのあるビールほど糖分が多く含まれているので、その分、風味の変化を感じやすそう。
ドイツの鍛冶屋が生んだ飲み方だし、ここは黒ビールで。
金属製のカップに3分の2くらいまでビールを注ぎ、「joule Pro」をそっと突っ込む。
ククサや紙コップでもできるようだが、フチに鉄球が触れないように注意。
カップの半分くらいまで落とすと♪ジューッ♪という音とともに泡がぶくぶく…。
泡がこんもりしたら「joule Pro」を引き抜き、泡の中や表面をそっとなぞって焦がす。その間約3秒。
写真ではわかりづらいが、泡の色がほんのり濃くなり香りも強まった。
泡はあたたかく、ビール自体は少しぬるい感じ。1秒ほどで引き上げるとそうそうビールがぬるくなることはないのだが、写真を撮りながらということもありどうしても長く漬けることになったためだろう。
とはいえ残念なぬるさではなく、泡の温度とのコントラストが新鮮だ。
気になる味の変化だが、甘いような苦いような香りとともにビールの性格が強調されるイメージ。泡がまろやかで、独特の焦げ感というか苦みが加わり評価は二分されそう。
なお、一杯分のビアスパイクを作った後すぐに2杯目を作れるし、一度熱々になっていればその次の1杯の準備は15分もかからない。
燗酒やホットワインにも使ってみた
試しに「joule Pro」でビアスパイク以外に使えないか試してみた。
まずは冬キャンプの定番、ホットワイン。
余っていた安いワインにオレンジ1片とシナモンスティック、クラフトコーラシロップを加え「joule Pro」を10秒ほど投入してみた。
短時間で熱々になり、香りは残っているがアルコール分が少し抜けてグイグイ飲める。
冬にうれしい燗酒は、80℃ほどの湯に酒の入った徳利を沈めて湯煎する。3分ほどして50℃くらいになったものが熱燗だ。
気温や水温によるが「joule Pro」ならコップ1杯の水を飲み頃にするまで10秒もかからず、写真のような縦型クッカーに徳利を沈めるなら水はコップ1.5杯分もない。ぬるま湯に「joule Pro」を沈めて熱くなったところへ徳利を入れてみた。湯の温度は70℃ほど。
気温が低いと湯の温度が落ちやすいし徳利自体も冷たい。そのためだろう、ぬる燗〜人肌燗といった感じなのだが、湯煎なのでアルコール分や風味が飛ぶことなくまろやか。ちょっといいかも。
一方、微妙だったのはホットミルク。
牛乳の量が少なかったこともあり急激に温度があがり独特の臭みが出た。さじ加減が難しい。
また、マシュマロに焼けた球を近づけると黒焦げになることなく表面が黄金色になるかも…と思ったが、そううまくいくものでもなかった。焚き火を囲んでいるのだから、マシュマロは素直に熾であぶるほうがいい。
touguではビアスパイク専用の「joule Pro」のほかに、ビアスパイクだけでなく飲み物の加熱・再加熱もでき汎用性の高い柱状の「joule」がラインナップされている。
「joule」はシンプルな形状なので携行性にすぐれ、焚き火に入れっぱなしにできるなどよりキャンプ向き。熱を蓄える量も大きい。
焚き火を前に、もこもこ泡を焦がすのはエンタメ性が高い。年末年始のキャンプで乾杯を盛り上げてくれそうだ。
【問】tougu by 有限会社柏彌紙店tomoshi事業部 www.tougu-jp.com
フリーランスのライター、編集者。主なテーマはアウトドア、旅行で、ときどきキャンピングカーや料理の記事を書いています。https://twitter.com/utahiro7